■海外初挑戦の若き才能・堂安律の現在地
チーム内序列:レギュラー
ノルマ:ゴール+アシスト=10くらいの数字を残し、コンスタントな出場機会を確保
目標:二桁得点
文=堀秀年
■期待の若手スター
フローニンゲンがこの夏に獲得した選手の中でも最も注目度の高い選手のひとりが堂安律だ。クラブのフロントからも、メディアからも、そしてサポーターからも関心度が非常に高い。
フローニンゲンは、他のオランダのクラブと同様、基本的に攻撃的なパスサッカーを標榜する。ベースにあるのは、4-2-3-1。ボランチに守備的MFと攻守のバランスをコントロールできるMFを並べて、その前に3人のアタッカー、最前線にセンターフォワードという形だ。
堂安はアタッカー3枚のうちの一枚として考えられている。シーズン前の準備期間を通して、トップ下、右、そして左とすべてのポジションで試された。そして、迎えた開幕戦で堂安はスタメン出場を飾っている。
ただし、まだ19歳と若いこともあって、負荷が掛かりすぎないようにという配慮が最初からあることは理解しておく必要がある。開幕戦で後半に交代したように、しばらくは交代があったり、スタメンを外れたりといったこともあるだろう。
■フローニンゲンの現実
とはいえ、チームの状況は刻々と変わっていく。開幕戦も蓋を開けてみれば、フォーメーションは4-4-2だった。堂安は左MF。昨季のチーム内得点王(17得点)であるミモウン・マヒがいる上に、新加入に背番号9ラルス・フェルドワイクが加わった。フェルドワイクは196cmの大柄なストライカー。マヒとフェルドワイクを併用するために2トップに変更し、結果として4-2-3-1ではなく4-4-2にフォーメーションが変わったのだ。こうなると、堂安は左右のMFが担当ポジションになってくる。
ライバルは、開幕戦で右MFを務めたイェスパー・ドロストだろう。ドロストはパスにしろ、ボールテクニックにしろ、センスが光るものの、強烈な売りはないオールラウンダーなアタッカー。その他にはウインガータイプのオサマ・イドリシがいる。さらにマンチェスター・シティから19歳のメキシコ人ウインガー、ウリエル・アントゥナを2年間のレンタルで獲得することが決まっており、手強いライバルになる可能性がある。
4-2-3-1にしろ、4-4-2にしろ、エルネスト・ファバー監督はサイドのMFが自由に動くことを許している。 サイドから中に入っていく堂安の持ち味を発揮しやすいプレーができるだけに、ピッチに立ちさえすれば戦術的な縛りに苦しむ不安はない。
ただし、フローニンゲンはあくまでリーグ内では中堅チームだ。理想とするパスサッカーができない、ビルドアップが繋げない、押し込まれる展開になってしまうと、フェルドワイクとマヒの強力2トップ目掛けてロングフィードを送り込むことになってしまう。そういった展開になった際にどんな動きをすればいいのか、堂安は模索しておく必要はある。
■野心あふれる若者は課題と向き合う
開幕戦の後、今季の目標を聞かれて堂安が口にしたのが「二桁得点」だった。その野心は頼もしい。これがひとつの目標になってくる。自信に満ちている一方で、自らに足りないところも十分に自覚しているところが、堂安の良さだ。
準備期間中のグラナダとの練習試合の後には「課題を克服できるポジションでいえば、サイドだと思う」と話していた。
「トップ下という好きなところだけやってても駄目で、トップ下がやりやすいけど、それしかできない選手にはなりたくない。サイドでの起用は運動量や守備といった自分が苦手な部分を伸ばしていける」
現時点で堂安は十分に通用している。それだけに、ワンランク上の選手へと成長していけるか、その成長度合いが見どころになる。
■トータルフットボールの国オランダで小林祐希が目指すものとは?
チーム内序列:中心選手
ノルマ:シーズン通して安定感のあるプレーを続ける
目標:チームをヨーロッパリーグに導き、絶対的な存在に
■絶対的な信頼を寄せられる中心選手
小林祐希はヘーレンフェーンのユルゲン・ストレッペル監督から絶大な信頼を寄せられている。今季リーグ開幕戦でも当然のようにスタメン出場し、当然のように90分フル出場した。
試合中にも、小林は自ら何度もベンチの方に歩み寄って監督と話をする。指示待ち人間でないため、自ら監督に意見具申するのだ。監督と対等に意見を交わす。もちろん最後は監督の意向に従う。開幕戦でも、試合終盤に3-2でリードしていた時に監督のところへ相談をしに行っていた。
「俺はもう下がりたい。全員下げて守備したいって(言いに行った)。でも、監督は今まで通り前からプレスを掛けると。それで結局そのままだったけど……」
結果、3-3に追いつかれて引き分けに終わったが、こういった小林の行動を監督は歓迎しており、信頼を寄せている理由のひとつでもあるのだ。ヘーレンフェーンではもはや小林にライバルは居ないと言っていい。
■上のレベルのチームへ行くために…
そんな小林が務めたポジションは、4-3-3でダブルボランチの左。守備の穴を開けないようにカバーリングしつつ、ボランチの相方であるベテランのスタイン・スハールスと共にゲームメイクし、さらにサイドのウインガーやサイドバックをサポートするなど、中盤でのあらゆる仕事が求められる。
2シーズン目を迎えた小林は、オフでしっかり休養を取って体がフレッシュになったこともあるだろう。キレのある動きを見せていた。2年目の今季は明確なビジョンを持っている。開幕戦後に語った言葉にすべてが詰まっていた。
「俺はちゃんとペナルティエリアの中まで、ボールが溢れてきたら、というところまでいるとか。ボックス、16メートルより中でプレーすることが増えるのは、自分にとっては良いことかなと思っています。チームとしては(前に)行かないでくれって言われているんですけどね。それは試合になったら関係ない。俺が一個上のレベルのチームに行くとか代表でプレーするとかってことを考えるんだったら、そこの中でプレーできないと」
「ボランチだから後ろでずっといるっていうような選手なのであれば、ただ足が速かったり、ただ体が強かったり、守備が上手い選手がそこにいればいい。攻撃で違いが生み出せて、しかもそこで(試合が)作れるから、(自分が)ここにいるっていう風に思われたい。ただ後ろでバランス取るだけじゃ駄目だなというのは今年凄い感じています」
守備を軽んじるつもりはない。守備もやった上で、ビルドアップからゲームも作り、ここぞの場面ではボックスに入っていって直接点に絡む。そのための判断力を磨き、精度を上げるというのが今季の目標となる。
オランダはトータルフットボールの国だ。小林がイメージする、すべてをこなす選手になるための土壌は揃っている。
文=堀秀年
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