2017-07-26-inter-yuto-nagatomo(C)Getty Images

名門インテル復活へのキーパーソンに?長友佑都が担う役割とは【海外日本人展望】

チーム内序列:レギュラー候補&チームの潤滑油

ノルマ:チャンピオンズリーグ出場権獲得への貢献

目標:セリエA優勝(スクデット)への貢献

文=手嶋真彦

■変わらない明るさとチームメートとの交流

ヨガ友の輪が広がっている。笑顔も広がっている。SNSにアップされた54秒の映像だ。

長友佑都が先生役となり、模範となるヨガのポーズを取る。場所はどこかの広場だろう。インテル・ミラノの選手たちが大きな輪になって長友を囲み、ゆったりとしたその動作を真似ている。

以下に続く

両手をゆっくり回すポーズを取りながら、マウロ・イカルディが白い歯を覗かせる。ボルハ・バレロも、ガブリエウも、ジョフレー・コンドグビアも、笑顔でヨガに取り組んでいる。

この映像を埋め込んだSNSに、次のように記したのは長友本人だ。タイトルは「ヨガ友教室開催!」。

「インテルのフィジカルコーチから是非やってほしいと言われ。笑」

「その効果なのか、プレミアリーグ王者のチェルシーに勝つことが出来ました」

「ミラノに戻ってもしっかり調節続けます」

その6日後の8月5日には、同じSNSに写真をアップした。食卓を囲み、肩を組んだ笑顔の6人。左から長友、ダニーロ・ダンブロージオ、アントニオ・カンドレーバ、サミール・ハンダノビッチ、ロベルト・ガリアルディーニ、そしてアンドレア・ラノッキア。タイトルは「チームメイトと!」

長友の自宅で一緒に食事をした。ハンダノビッチは「明日も来たい」と言っている。サッカー談義がヒートアップ――。そんなエピソードが、綴られている。

■徐々に変わりゆく指揮官からの評価

長友の今夏の準備は、おおむね順調だったのではないか。7月10日にチームに合流すると、プレシーズンマッチは7月21日のシャルケ戦、24日のリヨン戦、27日のバイエルン・ミュンヘン戦、29日のチェルシー戦、そして8月6日のビジャレアル戦まで5試合連続で先発出場。クリスティアン・アンサルディが鼠径部の手術で出遅れ、ダビデ・サントンはふくらはぎ痛で中国・シンガポール遠征に不参加と、サイドバックの定位置を争うライバルの不在中にしっかりアピールしてみせた。

バイエルンを2-0で破った試合の前半には、傑出したスピードを活かして縦への突破を仕掛けてくる対面のキングスレー・コマンを必死に封じ、インテルの2ゴール目に繋がる絶妙な縦パスをイヴァン・ペリシッチに供給した。後半は好インターセプトに加え、再三のオーバーラップで敵陣深くに攻め込んでいる。長友が先発した5試合は4勝1分け無敗だった。

新監督のコメントにも、明らかな変化が読み取れる。

「ナガトモのポジションには複数の選手がいる。しっかり検討していきたい」

6月14日の就任会見では慎重に言葉を選んでいたルチアーノ・スパレッティが、8月6日にはこんな賛辞を贈っているのだ。

「ダウベルト(エンリケ)が加入するとはいえ、ナガトモも素晴らしい。何をなすべきかよく心得ているし、ある局面では申し分がない」

■ライバルと、求められる役割とは?

本稿を執筆している8月中旬時点で、インテルのサイドバックは計5人。唯一の左利きは、8月9日にニース(フランス)からの入団が正式決定したダウベルトだ。これまでのコーチングキャリアで、左サイドバックはレフティーを重用してきたスパレッティが、この新戦力を優先的に起用するのは容易に予想できる。2000万ユーロ(約26億円)と言われる、安くはない移籍金を投じた手前もあるだろう。

右サイドバックのレギュラーは、昨シーズンを通して一皮剥けたダンブロージオが最有力だ。臨機応変な対応力が高く、危機察知の感覚もかなり鋭い。

左サイドバックはウイングばりの攻撃力を持ち、鋭く、よく曲がる左足のクロスには精度も伴うブラジル人のニューフェイス。そんなダウベルトが躓(つまず)くとすれば、ディフェンスからだろう。守備戦術の緻密さはセリエA特有で、周囲との連動もより求められる。

ダウベルト以外の4人は両方のサイドバックが務まり、マルチロールという点に長友のアドバンテージはさほどない。8月末日の移籍期限までには、さらなる補強もありえるだろう。それでもプレシーズンの手応えはおそらく強い。長友自身の臨戦態勢が十分に整っていれば、必ず出番は回ってくるはずだ。

いわゆる潤滑油としての役割も小さくない。

就任会見でスパレッティが何よりも必要だと訴えたのは「ロッカールームの団結」だった。監督就任に際して長引く低迷の原因を探り、こう判断したのだろう。ピッチ外の不調和が、ピッチ内のパフォーマンスに悪影響を及ぼしてきた。この問題から目を逸らしているかぎり、ノルマや目標の達成は難しい――。そうした分析に基づき、結束を求めるメッセージをあえて発信したに違いない。
 
2011年1月末に入団した長友は、インテル8シーズン目の最古参。コミュニケーション能力の高さは周知の通りで、チーム内での分け隔てのない交流の様子は前述したSNSの他のエピソードからも確認できる。スパレッティが持ち出したロッカールームの課題を解決していく上で、長友にしか果たせない団結のための潤滑油という役割があるはずだ。

新シーズンのインテルのノルマは、チャンピオンズリーグの出場権獲得になる。そのためには、セリエAで4位以内に入らなければならない。(※2018−19シーズンからセリエAのCL出場枠は4つに増加予定。)6連覇中のユヴェントスをはじめ、昨シーズン2位のローマ、3位のナポリ、さらには今夏の大型補強で不気味な存在となったミラン、8月13日のスーペルコッパ・イタリアーナでユヴェントスを破ったラツィオなど、倒さなければならないライバルは多い。

インテルが一枚岩となって高みに到達するには、ヨガ友教室でも、自宅での食事会でも、笑顔の輪を広げたムードメーカー、長友の貢献が絶対不可欠にも映る。

文=手嶋真彦

▶セリエAのライブを観るならDAZNで!1ヶ月間無料のトライアルを今すぐ始めよう
広告