■JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第1戦
セレッソ大阪 2-2 ガンバ大阪
水曜日は「TAG Heuer YOUNG GUNS TALK」の取材で平塚へ足を運んだ。インタビュー相手は湘南ベルマーレの躍進を担っている19歳の杉岡大暉選手と、彼を推薦したベテランの坪井慶介選手。坪井選手が相変わらず若々しい。一方で杉岡選手はとても高卒19歳には見えない落ち着きがある。左利きでセンターバックと左ウイングバックが主な主戦場。大きくて身体が強い。坪井選手のような経験豊富なベテランと一緒にプレーできるのは幸せなことだ。坪井選手が浦和に加入した時、「井原(正巳)選手と一緒にプレーをすることで多くのことを学んだ」と話してくれた。

その前日は水戸で同じくTAG Heuer YOUNG GUNS TALKの取材。本間幸司選手と前田大然選手の対談も良かった。本間選手が浦和レッズへ加入した時、自分はコーチを務め、当時はGKコーチも担当していた。手前味噌だが、それが返って良かったのかもしれない。(あえて敬称略で)本間は身体能力は高かったが、やんちゃなキャラクターで尖っていた。良くぞここまで成長したものだ。
そして前田大然はやはり面白い。言葉は少ないが、芯の強さを感じる。何よりあのスピードは魅力的。荒削りだが、まだまだ伸びしろばかりの存在なので、皆さんも彼の名前を憶えておいてほしい。

平塚での取材後、JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第1戦を視察するため大阪へ移動した。新大阪駅から地下鉄御堂筋線に乗車すると、セレッソ大阪、ガンバ大阪両クラブのサポーターが乗ってくる。期せずして大阪ダービーが実現したセミファイナル。良い組み合わせになった。
長居駅に降り立つと、いつもより長居公園が明るい。ラーメン女子博が開催されていた。何だか美味しそうな雰囲気に思わず足を運びそうになったものの、キックオフ間近のため、泣く泣くその場を立ち去ることにした。

注目のスタメン。セレッソはGK丹野研太、DFは右から酒本憲幸、藤本康太、茂庭照幸、丸橋祐介。MFは右から関口訓充、秋山大地、木本恭生、斧澤隼輝。FWはリカルド・サントス、福満隆貴の2トップ。
一方のガンバはGK藤ヶ谷陽介。DF右から初瀬亮、三浦弦太、今野泰幸、藤春廣輝。MFは右から市丸瑞希、中原彰吾、遠藤保仁、泉澤仁。FWは赤﨑秀平、長沢駿とこちらも2トップの布陣。
最近は両チームともリーグ戦で一時の勢いを失っている。さらに日韓の代表選手がそれぞれ不在となったこの試合、準々決勝の戦い方を振り返れば、セレッソは第1戦と第2戦でターンオーバーを敷いてくるだろう。事実、この日のベンチには田中裕介、ソウザ、水沼宏太、山村和也、清武弘嗣、澤上竜二が控える。リーグ戦のレギュラー組をどこで投入してくるか、第2戦も見据えたメンバー構成となっていた。
ガンバの控えは米倉恒貴、呉屋大翔、昨シーズンまでジェフユナイテッド千葉で活躍していた井出遥也といった出場機会に恵まれていない選手たちが虎視眈々と出場機会を狙っている。

試合は立ち上がりから激しいスタート。普段出場機会の乏しい選手たちのモチベーションが高いことを強く感じる。ガンバの赤﨑が右サイドを突破してチャンスを作る。16分、その赤﨑が魂のこもったブレ球シュートでゴールネットを揺らした。
すかさずセレッソが追いつく。23分、ペナルティエリア外で受けたリカルド・サントスが見事なループシュートを決めた。
両選手ともリーグ戦では出場機会が少ないが、「俺もやれるぞ」という気持ちが伝わってくる。

面白い展開になってきた。普段チャンスの少ない選手たちが積極的に自分をアピールしている。もちろん大阪ダービーであるし、決勝進出が懸かっていることもある。試合を隣で見ていた大阪府サッカー協会の赤須会長も、「今日はおもろい試合やな」とうれしそうにつぶやいていた。
後半も激しい攻防。両チームとも切り替えが早いから見ていて楽しい。先にセレッソが動く。斧澤に交代してケガから復帰してきた清武を投入。「よし、清武来たか」と思ったその時、ちょうど時計は20時半を回っていた。残念だが、ここで地下鉄に乗らないと新幹線の終電に間に合わない。明日朝イチの会議に出席するためには、どうしても日帰りをしなければならないのだ。泣く泣くスタジアムを離れることにする。
明日はとりわけ重要な会議で遅れるわけにはいかない。長居駅まで走る。その間にもスタジアムの歓声が聞こえてきた。何とか乗車予定の地下鉄に間に合う。
後ろ髪を引かれる思いでスマホの速報画面を見る。ガンバも動いた。中原に交代して井出を投入。しかし、追加点を挙げたのはセレッソだった。
見たいと思っていた清武が左サイドからのFKで木本の勝ち越し点をアシスト。生で見られなかったのが本当に悔しい。
しかし、ガンバもゴールを返す。
井出は昨シーズンまで千葉で主力として活躍していたが、移籍したガンバではここまで天皇杯1試合の出場のみ。だからこそ期するところがあったはずだ。これで初戦は2-2のドロー。さすがはダービーマッチ、面白い試合になった。

地下鉄の車内、乗り換えの新大阪まで集中してこのレポートを書き始める。長居から新大阪まで30分はある。TAG Heuerの取材の件も触れよう。ラーメン女子博も入れたい。今日のスタメンや尹晶煥監督、長谷川健太監督の戦略にも触れたい。出場している選手のモチベーションの高さも伝えたい。30分あればそのあたりまでは書ききれるだろうと思いを巡らせてスマホのメモに原稿を書き連ねていった。
「そろそろ新大阪かな?」と思ってホームの駅名を見ると、そこには「緑地公園」の文字が。緑地公園……? そこは終点、千里中央駅の2つ手前の駅だ。原稿執筆に集中しすぎて、とっくに新大阪駅を過ぎてしまっていた。ショックが大きすぎる。これから折り返しても、最終の新幹線には間に合わない。この日は結局、名古屋までしかたどり着けず、翌朝の会議にも間に合わない。参加するJリーグの皆さんすみません。10分ほど遅れます。スマホでこのコラムをご覧の皆さんも乗り越しにはくれぐれも気をつけて。
ルヴァンカップ準決勝のもう1試合はベガルタ仙台が3-2で川崎フロンターレに先勝した。大阪ダービーも含めて、10月8日の第2戦は果たしてどんな試合展開になるのか、今から楽しみでならない。決勝進出を目指す熱き戦い、皆さんもぜひスタジアムでご覧ください。
文=原 博実




