「人生が変わる戦い」から8カ月…酒井宏樹がPSG戦で得た称賛と手応えとは?【現地発】

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リーグ・アン第10節のパリ・サンジェルマン戦でピッチに立った酒井宏樹。日本代表DFが“世界最高の3トップ”と対峙して、掴んだ手応えとは?

「この1試合で人生が変わるくらいの価値がある」

そのくらいの覚悟をもって臨んだ、人生初のフランス版クラシコから8ヶ月。マルセイユDF酒井宏樹は22日のリーグ・アン第10節で、再びパリ・サンジェルマン(PSG)戦の舞台に立った。

酒井が昨年、リーグ王者モナコより「ケタ違いに強い」と感じたPSGは今季、世界最高のプレーヤーの1人であるネイマールと、フランスの超新星キリアン・ムバッペが加わり、攻撃力はさらにパワーアップ。そして右サイドバックの酒井がマッチアップしたのは、まさにそのネイマールだった。

酒井にとってネイマールとの対戦はこれが3度目。最初の対戦は酒井が柏レイソルにいた時代、2011年のクラブワールドカップ準決勝のサントス戦。3-1でブラジル勢が勝利したこの試合で先制点を挙げたのはネイマール。そして柏レイソル唯一の得点を決めたのは酒井だった。

2度目は代表戦。2012年10月の親善試合で日本がブラジルと対戦し、内田篤人に代わって後半から出場した。試合はネイマールに2点をとられて4-0で日本が完敗と、いずれもこのスーパースターに強さを見せつけられている。

■“世界最高の3トップ”との対戦で掴んだ自信

それから5年。 熱血軍団マルセイユの一員としてこの対戦に挑んだ酒井は、序盤からガツンとPSGの攻撃陣にインパクトを与えてみせた。開始10分、左サイドを攻め上がったムバッペとゴールライン手前で一対一になると、酒井は、ムバッペのトラップを的確に見抜いて巧みにボールを奪取。その瞬間、観客からは大声援が巻き起こった。

 

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この日PSGでは右SBのダニ・アウヴェスが欠場。アウヴェスがいるときは、彼との相性が良いネイマールがより右側へ入り込んでプレーするため、ムバッペと合わせてPSGの攻撃展開は右に偏りがちだが、この試合ではスピードのある左SBレイヴァン・クルザワがいる左寄りになり、アドリアン・ラビオとネイマールがホットラインを形成して、対峙する酒井とフロリアン・トーバンにはチャレンジングな場面が続いた。トーバンはフランス仕込みのタイトな寄せでネイマールに真っ向から対面し、酒井は事前の周到な準備を想像させる相手の動きや状況を包括的に判断した動きで、絶妙にPSG攻撃陣のリズムを狂わせた。

ゴールライン手前まで上がってクロスを入れた場面も2度ほどあったが、カウンターが脅威の相手だけに、この日はより守備に専念。後半53分には、ネイマールとの絡みで今シーズン初のイエローカードを受けたが、そのネイマールも終盤には2枚のイエローカードで退場に。PSGに貴重な1点目をもたらしたブラジル代表FWは「今日は自分たちの実力が出し切れなかった」と、満足いかないパフォーマンスだったことを打ち明けている。

酒井も「僕のキャリアで初めて、メガクラブに勝てる5秒前だったので、今日は寝られないです…」と消沈していたが、ネイマールを筆頭にPSGの強力アタッカー軍団を苦しめた試合内容には手応えを感じていた。

「僕自身入り方も良かったですし、一対一に対して向こうが嫌なイメージが植えつけられたと思うので、最初の一対一が非常に大事だったと思います。守備の読みはけっこううまくいきました。クルザワとネイマールを止めれば僕らのサイドは制圧できると思ったので、フロー(トーバン)も今日は守備的にがんばってくれた。個々にプレッシャーをかけたことで、嫌な状態でネイマールまでボールが来ることが多かったので、彼もそれほど自由にやることはできなかったんじゃないかな」

5年ぶりに対戦したネイマールについては、「彼は常に強いです。見ていて、モチベーションがすごくわかる。(ファウルのシーンは)ボールにしか触ってないんですけど、うまかったですよね。あの時間帯にイエローカードをもらうとアグレッシブにいけないので。やっぱり経験だったり、レベルは高いです」とあらためて世界最高級プレーヤーの実力を実感したようだ。

ネイマールとは来月10日の代表戦で再び顔をあわせるが、「ブラジル代表での彼はまったく違う。またレベルが違うので、どれだけ止められるかはまったく保証はないです」と慢心はない。

■飽くなき成長への意欲

昨季は酒井に並ぶレベルでプレーできる選手がいなかったため、軽い負傷であれば痛み止めを飲んででも強行出場していたが、今季はウィンガーのブナ・サールが右SBのバックアッパーを務め、ヨーロッパリーグでは主に彼が先発で起用されている。しかしポジションを争う強力ライバル出現、というよりも、酒井はむしろタイプの違う同僚から良い刺激を受けられることを歓迎している。

「2人でサイドバックを盛り上げていければいいと思います。彼は攻撃面がすごい良くて、止められないから、チームにとってのオプションになる。ライバル関係というのはまったくないですね。本当にタイプの違うプレーヤーだし、ブナもよくサイドバックの僕らの動きを見て学んでいると言っている。僕もかなり学んでいる、というか、実際にはまだできない境地にいますけど、ああいう間で抜きに来るんだな、などすごく参考になるので」

リュディ・ガルシア監督も昨シーズン終了後、酒井の今後の課題として「最終ラインでよりクリエイティブになること。自らゴールを決めに行くこと」を挙げていた。酒井自身もそれについては意識しているといい、EL第1節のコニャスポール戦では果敢にゴールを狙いに行っている。

地元紙『ラ・プロヴァンス』は、試合翌日の紙面で日本代表DFのプレーを「この試合で彼はプレーのレベルを上げ、戦士らしい戦いぶりを見せた。文句のつけようがない彼の精神力、そして自己犠牲を厭わない姿勢はチームにとって貴重だ」と称賛。リーグ首位のPSG戦での好パフォーマンスで、酒井の評価はまた上がった。

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本人は「勝たないといけなかった。『勝てそうだった』と『勝つ』のとは全然違う」と厳しいが、昨季から徐々に培われてきた自信はプレーに表れている。

今季の課題は最終ラインでのクリエイティブな働き、そして待たれるはマルセイユでの初ゴールだ。その目標達成についても、「(クラブと)一緒にやっていければいい」と仲間や指揮官に絶対的な信頼を寄せる酒井の前には、向上への道しかない。

取材/文=小川由紀子

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