7日に行われた大一番、ラ・リーガ第26節アトレティコ・マドリー対レアル・マドリーは、1-1で終了した。
逆転優勝のために勝利が欲しかったレアル・マドリーだが、15分に失点すると、長く苦しい展開を強いられることに。それでも終盤にペースを上げ、88分にはカリム・ベンゼマがカセミロとの見事なワンツーから同点弾をゲット。1-1の引き分けに持ち込んでいる。
今回のダービーについて、スペイン大手紙『as』の試合分析担当ハビ・シジェス氏は「マドリーのあらゆる欠点を曝け出すものだった」と評した。それでいて、同時に「不条理な勝者」とも表現する。アトレテイコ戦で露呈したレアル・マドリーの欠点と問題点、そして彼らの今後を紐解く。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■あきらめないということ
フットボールの歴史には解答を得られない出来事が存在する。そもそも、その歴史で最たる栄光に包まれてきたレアル・マドリーが、堂々とした王者であると同時に奇跡のサバイバーでもあるのだから、当然のことなのかもしれない。
彼らは土壇場での逆転劇を中心として、まったく道理にかなっていない勝利をつかむことを常としており、今季については少なくとも敗戦を回避しつつ時間を稼いでいる。今季のマドリーのフットボールは貧相そのものだが、そのDNAにより最悪の事態だけは免れているというわけだ。今回のアトレティコとのダービーも例外でなく、そうやってラ・リーガの優勝争いで生き残り、今は「きっと勝ち抜けるさ」とチャンピオンズに目を向けている。ダービーでアトレティコの優勢は揺るぎないものだった。が、あきらめないマドリーは、あきらめることを知らないというだけで勝ち点を0から1にしてしまった。
■露呈し続けた欠点
Getty今回のダービーは、マドリーのあらゆる欠点を曝け出すものだった。昨季にラ・リーガ優勝をもたらした強固な守備は失われ、攻撃の低調ぶりは相変わらずどころか、さらに悪化しているように見受けられる。赤面ものの前半はそうした彼らの悪い部分が集約されており、とにかく、すべてが悪かった。
マドリーは恐れ知らずでハイプレッシングを仕掛けたが、それはアトレティコの攻撃を容易にするものだった。ルカ・モドリッチとトニ・クロースがボール保持者を追い回そうと前へ走っても、後方の選手たちが上がらないために彼らの背後にはスペースが空き、守備ブロックが二つに分かれることに。かてて加えて、下がってパスを受けるルイス・スアレス(ボールタッチ数は55回)をナチョとラファエル・ヴァランは先んじて捕まようとせず、対応が常に遅れていた。ウルグアイ人FWがかつてのスピードを失っていることも考慮して、こうした場面が試合を通じて見られたというのは、あまりにいただけない。またフェルラン・メンディがキーラン・トリッピアーに対応したことで、マルコス・ジョレンテはダイアゴナルランによって彼が空けるスペースを突けていた。マドリーが前線でボールを奪うことはなく、アトレティコはフィードが巧みなマリオ・エルモーソ、中盤でタクトを振るうコケを起点に、彼らの戦術的欠陥を罰するかの如くトランジションから有効な攻撃を実現している。
マドリーは攻撃面も機能していない。シメオネはラ・リーガ前半戦のダービーでモドリッチとクロースを自由にさせ過ぎたことを反省して、今回はシステムを変更。基本的には1-4-5-1で、マドリーが自陣に押し入ってくる場合にはウィングとして振る舞うルーカス・バスケスに対応するためにも1-5-4-1となってパスコースを潰し、モドリッチとクロースにボールが入らないように努めている。マドリーはアトレティコのこの守備を突破すること、またプレーサイドを変えることにも苦労を強いられていた。良いプレーを見せられるのは、やはりモドリッチとクロースを介することができたときだけ。彼らが創造性におけるリーダーシップを発揮できるときにはサイドを中心に優位な状況を生み出せ、断続的だが中央でもベンゼマとの連係から崩せていた。
モドリッチとクロースはかつてないほどに必要不可欠となっている。マルコ・アセンシオもそうなるべき選手だったはずが、試合をこなすに連れて期待はどんどん失われており(ダービーでのボールタッチ数は30回)、目まぐるさばかりが目立つヴィニシウスも同様だ(こちらはジダン好みの選手ではないように見受けられる)。
しかし、それでもマドリーは足掻いてみせる。試合終盤、バルベルデとヴィニシウスの投入、カセミロの飛び出し、ベンゼマのペナルティーエリア外でのプレーで猛攻を実現(アトレティコはシメオネの交代策によって後方へ下がったが、彼らのエリア内の守備は日に日に悪くなっている)。ステファン・サビッチもフェリペもエルモーソも、ベンゼマを追わず、アトレティコはリードを守り切ることができなかった。マドリーはこれで首位アトレティコ(1試合未消化)との勝ち点5差を維持し、チャンピオンズのアタランタ戦へと向かうことになる。しかし、彼らは今後も希望を持ち続けられるのだろうか。
■不条理な勝者
Gettyマドリーがタイトル獲得候補であり続けるためには、間違いなくパフォーマンスを向上させなければならない。守備面では再びコンパクトさを取り戻す必要があり、前節レアル・ソシエダ戦(1-1)でもそうであったように、センターバックたちがラインを引き上げないようなことがあってはならない。また攻撃面について、ポジショナルな攻めでこれだけ問題を抱えているならば、いつもメンディを偽トップ下にして、左サイドのスペースを空けてどうするのだろうか。メンディの中央レーンでのプレーは相手の意表を突くから効果があるもので、恒常的なものにすれば弱みの方が目立ってしまう。それならばイスコやバルベルデとより深みが取れる選手がそのレーンを使用し、左サイドバックは開いたままにしていた方がいいだろう。すでに議論の余地なくレギュラーとなっている、右のルーカス・バスケスがそうしているように。
現在のマドリーが何とか踏ん張っていられる理由、それがエヴァーグリーンたる中盤の選手たちのおかげであるのは明白だ。カセミロはプレーに秩序を与えるほか、今季にはベンゼマに次ぐ2番目の攻撃の担い手となった。後方からスペースを突き、フィニッシュを請け負うことに関して、彼以上に理解力がある選手はいない。そしてタイミング良く精度抜群のサイドチェンジを実行するクロース、相手のセンターバック&サイドバックの間を突破するモドリッチも、昏睡状態に陥る攻撃を何とか実のあるものにしている。その3人、さらにはゴールのほかゲームメイクにも関わるベンゼマが、マドリーのかすかに思える成功の可能性を握る。
ただ、マドリーについては何も断言することができない。ラ・リーガで優勝とは程遠い状況にいてもチャンピオンズで優勝し、敗戦しか考えられない試合でも終了間際に逆転する……。彼らの歴史はそのような矛盾にあふれており、絶体絶命の暗闇の中でも光を探り当ててしまう、不条理な勝者なのだから。フットボール的に充実はしていなくても、決して死んだとみなしてはならない。それが、レアル・マドリーだ。
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