barcelona bayern pique(C)Getty Images

【特別寄稿】「勝利を重ねる行為は、ワンナイトラブの成功とは訳が違う」ELを戦うバルセロナの哀愁

生じるべくして生じたELという現実

木曜日(17日)、バルセロナがカンプ・ノウにナポリを迎えるとき、絢爛豪華なパリ・サンジェルマン対レアル・マドリーの一戦から、まだ48時間も経っていないのだ。少なくとも48時間ジャストにはできたはずだが、UEFAはアスルグラナのヨーロッパリーグデビューが取るに足らない出来事と言わんばかりに、そのキックオフ時間を18時45分に設定してしまった(PSG対レアル・マドリーが行われたのは火曜21時からだった)。バルサのサポーターは、程度の差こそあれど屈辱を感じているはずだが、彼らだって頭では分かっているはずだろう。バルサが欧州2番目の大会に参加して、木曜の夕方に試合を戦う……それも来季チャンピオンズリーグのアンセムを聞けるかどうかも分からずに……。そのすべては、身から出た錆でしかない。

以下に続く

そう、今ある現実は生じるべくして生じたことなのだ。チャンピオンズでの軌跡を振り返ってみてほしい。アンフィールド(2019年準決勝セカンドレグ、リヴァプールに0-4)、次にリスボン(2020年準々決勝、バイエルンに2-8)で醜態を晒し、昨季にはカンプ・ノウでキリアン・エンバペにコテンパンにされ(2021年ラウンド16ファーストレグ、PSGに1-4)、そして今季にはベンフィカ(0-3、0-0)、再びバイエルン(0-3、0-3)に失望を味わせられた。最初に決勝進出のチャンスをくずかごに入れ、次にベスト8で蹂躙され、続いてベスト16も突破できなくなり、挙げ句の果てにグループリーグで敗退する……。このロジックに従うのであれば、バルサは来季チャンピオンズのグループリーグすら戦えないことになる。そんなのは絶対にあってはならない。

謳い文句

クラブはここまでに、ありとあらゆる謳い文句を掲げてきた。ジョゼップ・マリア・バルトメウが去り、ジョアン・ラポルタが戻ってきて「時がきた!」。リオネル・メッシとの契約を延長できず、彼の10番をアンス・ファティが受け継いで「若者の力を信じよう!」。ロナルド・クーマンを解任し、チャビ・エルナンデスが帰還を果たして「原点に戻ろうじゃないか!」。それでも、結局はどうにもならず、冬の移籍市場でピエール=エメリク・オーバメヤン、ダニエウ・アウベス、フェラン・トーレス、アダマ・トラオレを獲得……まあ、借金まみれのクラブにとっては悪くない補強ではある。

この冬の市場で連日にわたって話題を振り撒いたバルセロナは、「死に至る傷を負っているクラブでも魅力がないわけではない」ということを示した。しかし最も難しいのはここからだ。結局、彼らは試合に勝っていかなくてはいけないのだから。勝利を重ねるという行為は、口をついて出た決め台詞によってワンナイトラブを成功させるのとは訳が違う。誠実な考えと言葉でもって長続きする関係を構築し、結婚までたどりつかなくてはならない。継続性がなければ、チャンピオンズ出場権を獲得することはできないだろう。

改善はした、だが…

traore aubameyang(C)Getty Images

実際的に、チャビと選手たちは行き当たりばったりなどではなく、誠実に自分たちのプレーと向き合っている。ぞっこんにさせるほどではないとしても、クーマンの頃より規律立ったパフォーマンスを見せており、攻守両面が改善された。だが両ペナルティーエリア内での決定的なプレーは、やはりまだ足りない(それは練習だけでどうにかできるものでもない)。自陣のエリアでは(マルク=アンドレ)テア・シュテーゲンが以前のテア・シュテーゲンではなくなり、そして敵陣のエリアでは誰もレオ・メッシになれないのだ。ポジティブな要素があるとすれば、中盤か。そこでは全員が同一のフットボール言語で話をしている。セルヒオ・ブスケツとフレンキー・デ・ヨングはためらいがあったような今季序盤とは打って変わって積極的になり、ガビ、ニコ、ペドリら若手がインテリジェンスとエネルギーの増幅に寄与している。チャビは彼自身があまりに偉大だったエリアについて、それほど悩まないでいい。

中盤のほか、この冬の加入選手たちについても期待が持てそうだ。アウベスはロッカールームに活気とリーダーシップをもたらすだけでなく、偽インサイドハーフとしてチャビ・バルサの戦術及びビルドアップの要になりそうな気配がある。アダマはクラシックなウィングとしてチームとサポーターの興奮を呼び起こしており、ボールが遠くにあってもサイドで開きながらパスを待ち、それが届くとためらうことなく相手に勝負を仕掛け、突破して、クロスを送ることができる。フェラン・トーレスはグアルディオラとルイス・エンリケの指導を受けたことでバルサのシステム(4-3-3)と自身のプレーポジション(偽9番)に精通し、自らゴールを狙うだけでなくチームメートのチャンスも創出する。不透明なのはオーバメヤンだが、チーム内にある規律を破ることなくゴールを決めてくれるのを期待するだけだ。そう、バルサに何より足りないのは、ゴールなのだから。

哀愁

xavi barcelona(C)Getty Images

アガサ・クリスティーならば、バルサの攻撃陣の悲劇を題材にしてベストセラーを生み出していたことだろう。昨夏からここまでに起きた悲劇を、振り返ってみようか。

バルサはメッシとの関係を破壊し(彼と私たちファンの心も壊れてしまった)、アントワーヌ・グリーズマンを放出し(夏の移籍市場の最終日の最後の1分で)、ルーク・デ・ヨングを獲得し(冬の市場で放出する予定だったが頭を物理的に使ってチームに勝ち点5をもたらす)、セルヒオ・アグエロも獲得し(心臓の問題で2試合出場した後に引退を余儀なくされた。残念この上ない)、アンス・ファティと契約延長し(4回の手術と3回の再負傷に苦しむ)、マルティン・ブライトバイテを放出できず(髪の密度だけ濃くなった)、メンフィス・デパイを格下げし(クーマンの要求でスター格として獲得したがチャビのプランには入っていない様子)、ユスフ・デミルに夢を見させた(あと1試合の起用で獲得義務が発生したために、痛ましい形でのレンタル打ち切り)。

そんなこんなの間にはエズ・アブデ、イリアス・アコマック、フェラン・ジュグラと、リーガ2部Bでプレーしていた3選手がトップチームデビューを果たしたが……彼らのPKなしの今季得点数は5ゴール以下にとどまる。かてて加えて、バルサは今季スペインで最もヘディングでのゴール(10得点、全体の26%)が多いという、プレースタイルに逆行する数字も記録している。コンビネーションフットボールの結末がヘディングシュートというのは、彼らに適した“キラー”が存在しない証拠でしかない。高さを生かしたキラーは、本来は主力武器ではなくオプションとして持っているもののはずだ。

だからこそ、バルサは今夏にセンターフォワードを獲得しなくてはならない。彼らの下部組織では育てられない本物の点取り屋を獲得できるかどうかが、チームが完全復活を果たすまでの時間を左右するだろう。ラポルタは第一次政権で獲得したロナウジーニョの姿をアーリング・ハーランドに重ねているようだが、このノルウェー代表FWを本当に引き入れるとなれば、選手放出やスポンサー収入、そして来季チャンピオンズ出場が絶対に欠かせない。欧州最高峰の大会に戻る道は、今季リーガで4位以内に入るか、一度もトロフィーを手にしたことがないヨーロッパリーグで優勝を果たすかの二択。ときには1歩前に進むために、2歩下がってみるのも悪くはないのかもしれない。

最後に、もうチャンピオンズを懐かしむサポーターがいるならば、一つアドバイスを。あのアンセム、『Spotify』に入っているので、まず無料版から試してみてはどうだろうか。

文=ルジェー・シュリアク/Roger Xuriach(スペイン『パネンカ』誌)

翻訳=江間慎一郎

▶欧州CL・ELはWOWOWが独占ライブ配信!初回無料トライアル加入はここから

欧州CL・EL|関連情報

広告