このページにはアフィリエイトリンクが含まれています。提供されたリンクから加入を申し込むと、料金が発生する場合があります。
Carlo Ancelotti Real Madrid GFXGOAL

分析不可能?なぜレアル・マドリーは「最後には勝っている」のか…チャビも「最高に不当」と嘆く“強さ”の真髄

独占配信

WOWOWオンデマンド

チャンピオンズリーグ&ヨーロッパリーグ2023-24
決勝トーナメントもWOWOWが独占中継・配信!

WOWOWオンデマンドなら登録後すぐに視聴可能!

月額

2,530円(税込)

公式サイトから登録

■スペイン大手紙副編集長が挑む

現地時間8日にチャンピオンズリーグ(CL)準決勝セカンドレグ、バイエルンとの大一番に挑むレアル・マドリー。そんな彼らは、今季も理不尽とも言える強さを発揮してきた。

彼らがここ1カ月で戦ったビッグマッチ、マンチェスター・シティとのCL準々決勝セカンドレグ(1-1:PK戦4-3)、バルセロナとのクラシコ(3-2)、バイエルンとのCL準決勝ファーストレグ(2-2)は、公平な目で見て「得た結果に完全に値した」とは言い難い。特にシティとのアウェイ戦はカウンターも発動できないほど自陣に押し込まれたが、最後に笑ったのはレアル・マドリーだった。宿敵バルセロナのチャビ監督が「最高に不当だ」と漏らすのも無理はないかもしれない。

以下に続く

そんな内容は劣勢でも「最後には勝ってしまう」レアル・マドリーだが、なぜそうしたことが可能なのだろうか? 今回はスペイン大手紙『as』で副編集長を務めるハビ・シジェス氏に、歴代最多14回の欧州制覇を成し遂げた彼らの“強さ”を分析してもらった。スペインメディア屈指の分析担当がたどり着いた答えとは……。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長

翻訳=江間慎一郎

■説明なんてできない?

real madrid1(C)Getty Images

レアル・マドリーのことなんて、誰も知らない。誰にも分からない。彼らのことをどこまで分析しても、結局は“神秘の存在”であるだけなのだ。

マドリーはごまかしなどきかぬはずの欧州最高峰の舞台で、これまでの神話に力強く背中を押されるようにして、最後には勝ってしまう。勝利の理由が解き明かされないのは、そんなことをする必要がないからだ。そのほかのあらゆるフットボールチームとは正反対に、彼らは勝利にたどり着くための道を正当化しなくていいのである。

なぜならば単純に、レアル・マドリーはレアル・マドリーであり、レアル・マドリーだから勝つのだ。

マドリーの歴史や獲得タイトルの質と数は、地球上で対戦するどんなチームをも凌駕しており、そして今現在もトップ・オブ・トップの選手たちが彼らを不滅の存在たらしめている。今季のマンチェスター・シティ戦でマドリーがつかんだ成功は、フットボールのセオリーからはかけ離れていた。とりわけセカンドレグはカウンターすら仕掛けられないほどシティに押し込まれ続けたが、それでも彼らは負けることを絶対に認めず(許せず)、抗い、抗い、抗い抜いた末に、またもや英雄的な勝利を手にしたのだった。

バイエルン・ミュンヘンとのファーストレグだってそうだ。マドリーはミュンヘンの地で、シティ戦同様セオリーから言えば間違いなく敗戦すべきだったが、なぜか2-2という歓迎すべき結果を手にして、現在は本拠地サンティアゴ・ベルナベウで“魔法の夜”を過ごす計画を練っている……。

レアル・マドリーは決して死なない。そして、そこには何かがあるのだ。

■究極の効率主義?

ancelotti(C)Getty Images

マドリーがその歴史と伝統に裏打ちされた超自然的の力を備えていることは間違いない。そして現在の彼らは、その力を淀みなく発揮させられるカルロ・アンチェロッティに率いられている。このイタリア人は監督として余計なエゴを出さずに、擁している陣容と選手たちが声なき声で求めてくる最適解のプレーを引き出すことができる。

アンチェロッティが率いる今のマドリーには、ピッチを支配する必然性がない。相手に主導権を譲っても構わないと思っている。なぜならば、彼らはトランジションから仕掛ける攻撃こそが自分たちの最強の武器であると、はっきり自覚しているからだ。

「アナリストたちとレアル・マドリーのプレーを何度か確認した。彼らが生み出すゴールについて、10秒前まで巻き戻すと決まる兆候が見られない」

バイエルン指揮官トーマス・トゥヘルが語った言葉は、まったくもって正しい。では、マドリーはどのようにして兆候の見えないゴールを生み出しているのだろうか。

「ゴールに直結するパスこそが最高の選択だ。それだけでGKと1対1になれるのならば素晴らしいじゃないか」

「私はポゼッションの超ファンではない。ゴールの超ファンなんだよ。自分はイタリア人だ。3本のパスで価値が持てるし、30本も必要ないさ」

アンチェロッティは、まるでジョゼップ・グアルデイオラやチャビ・エルナンデスらヨハン・クライフ派へのアンチテーゼのように、できるだけ手数をかけずゴールまでたどり着く有効性・効果性を説いている。だからこそ彼のマドリーは、手数をかけないための工夫を凝らす。工夫を凝らしてから、選ばれし選手たちの経験や天才性、たった一回で針の穴に糸を通すようなプレー精度を生かすのである。

例えば、ダニ・カルバハル&フェルラン・メンディの両サイドバックは、中央にポジションを変えたり相手を引きつけたりする動きで、迅速かつ効果的な攻撃を仕掛けるためのスペースを供給。そこからトニ・クロースやルカ・モドリッチが、その豊富な知識と経験によって完璧なタイミングと精度のボールを前線に送る。トニと、彼の代わりに出場することが多いルカは、相手選手をただ見つめるだけで萎縮させ、プレスを無効化し、そうやって相手を引きつけている間に前線の選手たちが走り込むべきスペースを見つけ出せる。

そして前線ではヴィニシウス・ジュニオール&ロドリゴがスピードと技術あふれる突破を見せ、加えてジュード・ベリンガムも彼らのサポートや、抜け目ない2列目からの飛び出しによってゴールの確率を引き上げる……。マドリーはこのようにして、別次元の速攻を成立させているのだ。

■相手はお手上げ状態に?

xavi(C)Getty Images

ここ最近のシティ、バルセロナ、バイエルン戦で顕著だったが、アンチェロッティはその強力無比な速攻からゴールを決めるべく、ピッチ中央からやや下がり目のゾーンで1-4-4-2(スペインのフォーメーションはGKから表記)のブロックを敷いている。

たとえそこからさらに押し込まれ、ペナルティーエリアの近くで8人で守ることになっても、マドリーが慌てふためくことはない。どれだけジャブを打たれても、そこから前にパスを出すことで、前に走り出すことで、相手を一撃でダウンさせるストレートを炸裂させられると分かっているからだ。もし相手チームが前線に残るヴィニシウスを最大限警戒していたとしても、無傷で済む保証などどこにもないのである。

マドリーは選手たちの柔軟なポジションチェンジ、正確無比のスルーパス、スピードあふれる走り込み、そしてシュートを決め切る力によって、トゥヘルの言うように10秒も経たない内にゴールをかっさらってしまう。賢人グアルディオラもその攻撃を恐るべきものと称賛し、チャビに至っては「最高に不当だ」と語るなど、もうお手上げの様子である。

加えてマドリーは、圧倒的威力を誇るトランジションからの攻撃ほか、ポジショナルな攻撃も仕掛けることができる。ピッチ中央の限られたスペースで三角形をつくってパスを回し、深みを取る両サイドバックが相手の守備ブロックを横に間延びさせ、ペナルティーエリア手前で中盤と前線の選手たちが数をかけて違いを生み出す……。アンチェロッティは「マドリーに明確なスタイルはない」とも語っていたが、その言葉通り彼らは縦に走らなくてもゴールを生み出す手段を有しているのだ。

■「最後には自分たちが勝つ」

real madrid2(C)Getty Images

さて、今季のマドリーはティボー・クルトワ、エデル・ミリトン、ダヴィド・アラバが長期離脱を強いられながらも守備の改善がみられた(ラ・リーガの失点数は2位アトレティック・クルブの33失点を大きく下回る22失点)。ただトランジションを生かすべくしっかり守らなければならないビッグマッチでは、まだ不安な場面が多々見受けられる。例えばバイエルンとのファーストレグでは、アンカーのオーレリアン・チュアメニの両脇を突かれていたし、加えてゴール前まで引いた守備でも脆さが目立った。

カルバハル(バイエルン戦はルーカス・バスケスだったが)とメンディが相手ウィングとのデュエルに勝てなければ、マドリーのDFラインは必要以上に下がってしまい、相手の決定機を許すことになる。実際的にバイエルンは、レロイ・ザネとジャマル・ムシアラがマドリーのサイドを切り裂き、前者がゴールを決めて後者がPKを奪取している。アンチェロッティはセカンドレグに向けて、前線の選手たちをサポートに入れるなど、守備の修正を施す必要があるだろう。今季のマドリーは得点力を放棄したフェデ・バルベルデの献身的な守りに支えられているが、彼に頼りっきりでもいけないはずだ。

ただマドリーはシティとのセカンドレグで、今季を象徴するような守備の執念や熱さを感じさせもした。あれほどまでに攻め込まれた彼らはほとんど記憶にないが、それでも各ラインをしっかりと狭めて、あらゆる意味で圧倒的なアントニオ・リュディガーとともに自陣ペナルティーエリアを支配している。マドリーならではの運の要素も加わり、彼らは120分間を通して、最後までシティのリードを許すことがなかったのだ。

マドリーは戦術的要素のほか、試合中の感情のコントロールも極めて優れている。ここ10シーズンで5回のチャンピオンズ制覇を成し遂げた彼らは、「最後には自分たちが勝つ」という揺るがぬ自信を持っているために決して動じることがない。シティにあれだけ攻め込まれて、守る以外の選択肢がなかったにもかかわらず(速攻も仕掛けられずにペナルティーエリア内に引きこもるなど、決してゲームプランになってはいけないのだが……)、選手たちの表情に動揺が一切見えなかったというのは驚くべきことである。

■結局「レアル・マドリーだから」

 real madrid3(C)Getty Images

マドリーの強さは、フットボールのセオリーやロジックだけに当てはめて測ることができない。彼らはあきらめを知らず、自分たちの才能と実力を絶対的に信じ、相手が一瞬でも気を抜こうものならば無慈悲に、理不尽にゴールを叩き込む。勝利を奪い取る。そうやって彼らのDNAはさらに豊かなものとなり、自分たち以外のフットボールクラブとそのサポーターをただただ驚嘆させるのである。この白いチームは「最高に不当だ」。

マドリーの強さの理由について、理論だけで説明してほしい? ここまでいくつか記してきた通り理論で説明できることもあるが、しかし彼らの強大さには超自然的なものが多分に含まれており、そんなことをしても結果論でしかなくなってしまう。

やはりレアル・マドリーが勝つのは、彼らがレアル・マドリーだからなのだ。

広告