■発表された代表チームは3つ
イレギュラーのみ。5月28日のミャンマー戦は、通常通りなことを探すほうが難しい代表戦となった。
まず20日の代表発表がイレギュラーだった。発表された代表チームは何と3つ。1つ目は5月28日に行われるW杯予選・ミャンマー戦に向けたメンバー。2つ目は6月3日、11日のキリンチャレンジカップ2021、7日、15日に行われるW杯予選へ向けたメンバー。そして最後は東京五輪を控えて初めてオーバーエイジ(OA)選手を加えて編成されたチームで、5日、12日に行われる2つの国際親善試合に臨むメンバーだ。
こう書くと何のことだか分かりにくいが、要するにまずミャンマー戦があり、その後、この試合に臨んだメンバーは二手に分かれ、ひとつはA代表としてW杯予選とキリンチャレンジカップをこなし、もうひとつは五輪代表(U-24代表)として本番に備えた準備として2つの親善試合を行うということだ。
この最初のミャンマー戦、正式には「FIFAワールドカップ カタール2022アジア2次予選 兼AFCアジアカップ中国2023予選」なのだが、当初は3月に行われる予定であった。これが国際Aマッチデーではないこの5月28日にずれ込んで開催されているため、Jリーグはまだ開催中というイレギュラーなタイミングでの試合となった。
当然公式戦を控える選手たちをリーグ戦無視で強制的に招集するわけにはいかず、ミャンマー戦に向けたチームは欧州組のみで編成される形となっている。これが次の段階で二手に分かれた際、それぞれにJリーグから新たな選手も加わることになる。
■ミャンマーは政情不安の最中
(C)Kenichi Araiコロナ禍によってやむを得ぬ日程設定を強いられたというのが第一の理由だが、6月以降の強化試合の数を削るようなことは避けたかったというのも本音だろう。Jリーグ組不在の戦力減は受け入れたうえで、W杯予選をこのタイミングに設定したことによって早めの来日が実現した欧州組の練習機会も担保しつつ、W杯2次予選も突破する。そんな位置付けの試合だ。
幸い、3月の同予選でモンゴルに大勝したことで勝ち点計算上の余力は十分にある。五輪に向けた強化も欠かせない状況にあって、リアリストの反町康治技術委員長らしい判断と言えそうだ。
また、このミャンマー戦は相手の状況もイレギュラーだ。2月1日に軍によるクーデターが起きた同国は政情不安の最中にあり、今季のリーグ戦は開幕しておらず、アントワーヌ・ジョン・パウル・ヘイ監督が「長い間、まったく練習をしていなかった選手もいた」と語ったように、4月20日に代表選手たちが久々に集まった時点ではかなり厳しいコンディションだったようだ。
さらに同監督が「何人か招集できなかった選手がいる」と認めたように、軍事政権下での代表チームとしてのプレーを拒否した選手もいる。日本に来てからは充実したトレーニングができていたとのことだが、万全の状態とは言いがたいだろう。
■日本もベストメンバーは組めそうにない
(C)Goal対する日本も森保監督が欠場を明言したDF冨安健洋を含め、コンディションが万端でない選手が複数いる模様で、単にJリーグ組が不在というだけでなく、ベストオーダーは組めそうにない。
特に五輪組の選手たちについては、ここで燃え尽きてもらっては困るという考えもあるだろう。森保一監督は会見で「交代が5人できる」ことを複数回にわたって言及していたが、無理をさせない起用をしつつ、しっかり勝ちにもいくという何とも言いがたい狙いを持った試合になりそうだ。
欧州の厳しいシーズンを戦い終えたばかりの選手たちは、疲労も故障も抱えているという状況で、試合の位置付けも難しい。ただ、だからこそ、2次予選突破はここで決めてしまって、2次予選の残り試合はトレーニング含めて有効に使いたい。
もちろん、2015年にU-20W杯出場を果たして以降、若い世代が着実に力を付けて存在感を増していたミャンマーだけに決して油断はできない。日本代表が万全の状況でこの試合に臨むわけでもない。ただそれでも、「勝って決めたい」(森保監督)試合である。
取材・文=川端暁彦
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