森保一監督の下、今夏に北中米で開催されるFIFAワールドカップ2026に挑むサムライブルーは25日に、千葉県千葉市内の高円宮記念JFA夢フィールドで国内合宿をスタートさせた。
■代表復帰を即決できなかった理由
頼れる男の姿があった。これまで過去3大会にわたって日の丸を背負って戦ってきた吉田だ。元キャプテンは、今月31日に東京都の国立競技場で開催されるキリンチャレンジカップ2026のアイスランド代表戦まで帯同予定となっている。
「自分自身がここでしっかりと全力を出し切らなきゃいけないと思います。お客さんとして来ているわけじゃないですし、ワールドカップ前の貴重な準備の時間を使って呼んでもらっている。だから日本代表がワールドカップで勝つ可能性を1ミリでも、1パーセントでも上げられるように、自分持っているものを一つでも多くチームに伝えていきたい」
代表復帰の知らせは今月15日に行われた日本代表メンバー発表の「二日後くらい」だった。はじめは代表スタッフから連絡があり、その後に森保監督と話をした。はじめは半信半疑だったが、指揮官からはこれまでの「功績と経験に敬意を表して」招集したいと伝えられたという。
だが、即決はできなかった。吉田がそのワケを語る。
「やっぱり一番迷ったのは、ワールドカップの準備の邪魔になるんじゃないかということ」
「選ばれた選手のなかでも、なかなか試合に出ていない選手がいる。だからこそ、僕が本当に行っていいのかという懸念があった」
今回のメンバーには、CBの相方として共闘してきたDF冨安健洋(アヤックス)をはじめ、ケガなどからの復帰直後でコンディション面に不安要素が残る選手も招集されている。
W杯と日本代表の重みを人一倍理解しているからこそ葛藤した37歳の吉田は、ある人物に電話をかけた。
「すぐ長谷部(誠)コーチに電話をして、『大丈夫なのか』と聞きました。そこだけが懸念点だったなかで、長谷部さんは『大丈夫だ』と言ってくれて、(森保)監督にも確認しました。そのなかで一晩考えて、自分はいままでずっと日本代表を強くしたいという気持ちでプレーしてきたので、自分にできることはまだあるんじゃないかなと思ったのが、一番の決め手でしたね」
また、この日は盟友・長友佑都とも再会を果たした。長友が「時の人だ!」と報道陣に囲まれた吉田をイジれば、「僕よりも僕が来たことを喜んでいました」とイジり返して笑いが起きた。
■吉田が伝えられるもの
活動初日となったこの日は、吉田をはじめ13選手が集まった。吉田にとっては久しぶりの代表活動ということもあり、練習着を受け取る場所などを忘れてしまっていたという。
また、前回のカタールW杯後も日本代表の試合を欠かさずに見ていたというが、実際に同じグラウンドで汗を流すなかで、「うまくて速い選手が多いですね。むかしよりおとなしいぶん、速い(笑)。うるさい選手があまりない」と気づきもあった。
37歳のディフェンダーは新時代の風を確かに感じていた。一方で、歴戦を潜り抜けてきた男にしか伝えられないこともある。
「ここに来たからには、全力でバシバシいきたいと思っているし、僕は明日ケガをして引退してもいいという気持ち。それくらいの覚悟をワールドカップでもみんなに見せてほしいと思うので、そういうのを伝えていきたい」
「ほとんどの選手が(W杯)2回目か1回目なので、いい感覚のワールドカップしか知らないなかで、佑都も難しかったときのワールドカップをしっかりと理解している。そういうのをちゃんと伝えていくのは大事なこと」
また、吉田はW杯が開催されるアメリカでプレー中。日本と異なる気候はもちろん、キャンプ地での過ごし方や長距離移動など、W杯で優勝するためには、ピッチ外での戦いも制する必要がある。
吉田は「MLSも移動が鍵になる。(伝えたいことは)いっぱいあるし、一つじゃない。いろいろなことをやらないといけない」と説明。あらゆる経験を持つベテランの存在は、サムライブルーにとって想像以上に大きいかもしれない。
取材・文=浅野凜太郎