FWオウイエ・ウイリアムは先発出場を果たしたが、ノーゴールのままハーフタイムで交代した。トライアウトを経て、今季よりいわきに加入しながらもいまだ無得点となっているストライカーは、チームとともに正念場を迎えている。
■どん底を味わった
いわきのオウイエは絶望の淵からはい上がって来た。
昨年12月に大阪府内で行われた日本プロサッカー選手会(JPFA)トライアウトに、同選手は参加していた。
トライアウトには、各クラブから契約満了を告げられた選手たちが、次シーズンの所属先を求めて集まる。当時21歳だったオウイエもキャリアを続けるために、Jリーグのスカウトたちに向けて懸命にアピールしていた。
「どこのチームに行っても絶対に1年で活躍したいです。こんなところで終われない」
川崎フロンターレU-15から千葉県の日本体育大柏高校へと進学し、2023年に柏レイソルに加入して夢だったプロサッカー選手としてのキャリアを始めた。
しかし柏ではリーグ戦の出場機会を得られず、昨季はJ3のFC岐阜へ育成型期限付き移籍。岐阜で結果を残そうと奮闘したが、リーグ戦14試合無得点に終わり、柏との契約満了が発表されていた。
「どん底に落ちた」と若くしてキャリアの岐路に立たされたが、決死の覚悟でトライアウトへの参加を決めた。海外挑戦の夢もあるオウイエは190cmの恵まれた体格を生かしたポストプレーと、ゴールへの推進力を生かして、紅白戦でも2得点を奪った。
その活躍に目をとめたのが、いわきだった。
ストライカーはトライアウト終了後に 代理人を通じていわきへの練習参加が決定。シーズン開幕前の鹿児島キャンプでもアピールを続け、契約を勝ち取った。
だが、いわきとの契約は2026年6月30日までとなっており、オウイエの頭に安心の2文字はない。
■柏時代の戦友と再会
いわきではここまで12試合に出場している。チームはEAST-Bグループ2位で、優勝争いの真っただ中だ。オウイエは前線からのプレッシャーやハードワーク、高さを生かした競り合いなどでチームの勝利に貢献してきた一方で、自身の得点はいまだゼロとなっている。
「(いわきに)入ってからまだ結果を残せていないので、もう一皮、二皮むけてやっていかないといけないなと、責任を感じています」
2位・いわきにとってこの日の試合は、3位・大宮との直接対決だったこともあり重要な一戦だった。
オウイエは先発出場を果たすも、狭いスペースのなかで持ち味を発揮できなかった。先制点を許したいわきはセットプレーから1得点を返すも、流れのなかからチャンスを作れない。すると42分に再び勝ち越された。
「自分がキープして時間を与えたかった。相手はそういうタメの時間を作れる選手が多かったので、自分がその役割をできていればチームも楽になったのかなと思います」
いわきは、オウイエを含めた3選手をハーフタイムで交代。この采配を田村雄三監督は「戦術どうこうというより、3枚を一気に替えて、フレッシュな選手を入れて戦ったほうがゲームになると思いました」と振り返る。
後半の立ち上がりに失点したいわきだったが、その後はカウンターなどから迫力を持った攻撃を披露した。80分に得点して2-3にしたが、試合はそのまま終了し、大宮との勝ち点差を1にされた。
指揮官が「今年一番内容が良くなかった」と指摘したように、苦戦を強いられたゲームだった。オウイエも途中交代の悔しさを口にしつつ、「相手のうまさもあって、ちょっと焦ってしまった。前半は落ち着く時間もなかった」と肩を落とした。いわきは次節で首位ヴァンフォーレ甲府と対戦する。優勝争いに向けて、勝利は必須だ。
シーズンも佳境に入り緊迫した状況が続く一方で、この日はうれしい再会もあった。
大宮には、柏時代のチームメイトで同い年のFW山本桜大が在籍している。山本は70分に交代出場。同時にピッチに立つことはなかったが、試合前にも連絡を取り合うほどの仲である二人はプロの舞台で切磋琢磨を続けている。
試合を終えたストライカーは敗戦を受け止めつつも、戦友との再会に笑顔を見せた。そして決意を新たにした。
「自分はリスタートしていると思います。それこそきょうは、桜大とまた対戦できる喜びを感じられました。だからこそ、まだまだ足りないところがあるけど、もっと上を目指したい。レイソルとも対戦して、活躍したいです」
百年構想リーグも残り3試合となった。オウイエに下を向いている暇はない。残り試合でチームを優勝に導く初ゴールを決められるか。22歳は再び正念場に立っている。
取材・文=浅野凜太郎



