kato daisuke⒞Getty Images

地域リーグ時代からの教えを胸に。はい上がった磐田DF加藤大育「この道が一番の近道だった」

DF加藤大育(だいすけ)は右サイドバックで先発すると、後半は左サイドバックでもプレーした。今季途中よりSC相模原から磐田に加入した背番号20は、移籍後2試合目にしてこれまでの経験を遺憾なく発揮していた。

■浦安、相模原での出会いと経験

一番の近道は遠回りだった。27歳の加藤は自分のキャリアに誇りを持っている。

「『遅咲き』といわれるかもしれないけど、自分は目の前のことを一生懸命にやってきました」

加藤は日本大高から神奈川大に進学するも、卒業時にJリーグクラブからのオファーはかからず。それでもプロへの道を諦め切れなかった男は、当時関東1部リーグのブリオベッカ浦安に加入した。

浦安での2年間は仕事をしながらの選手生活だった。職場と練習場を行き来する大変さは想像に難くない。それでも自分を信じ続けられたのは、元日本代表のサイドバックとして、歴戦をくぐり抜けて来た都並敏史監督の存在が大きかった。

「浦安時代から都並さんに『1試合で人生を変えろ』と言われてきました。その言葉は、いまも常に意識しています」

浦安は2022年に全国地域サッカーチャンピオンズリーグの決勝ラウンドで優勝し、JFL参入を決めた。決勝ラウンドの全試合で先発フル出場した加藤のもとには、J3で戦うSC相模原からのオファーが待っていた。

ついに始まった相模原でのプロ生活を機に、加藤の成長は加速していく。ここでも“人生を変える”出会いが待っていた。元日本代表MF戸田和幸元監督と、シュタルフ悠紀リヒャルト監督だ。

「戸田さんとシュタルは二人とも戦術家なので、『こういうときは、こうしたほうがいい』と、いろいろなアドバイスをもらっていましたし、その教えを常に胸にしてやっています」

相模原では3バックと4バックの両フォーメーションで、全ポジションを経験した。「相模原でいろいろなポジションをやって試合の経験を積めたことが、どのポジションでもある程度のプレーをできるという自信にもなっています」と、サッカー界でも稀有なユーティリティ性を持つプレーヤーとなった加藤は、相模原で3シーズン連続30試合以上に出場した。

一歩ずつ、階段を上がって来た。その活躍は、J1復帰を目指す磐田の目にとまった。

■27歳「これがラストチャンス」

相模原の一員として百年構想リーグでも9試合に先発出場していた加藤だったが、シーズン途中の4月9日に磐田への移籍が発表された。

もちろん、愛する相模原を去ることに葛藤したが、より高みを目指したかった。

「相模原には感謝しかありません。愛着があるクラブで、クラブとともにJ2に上がりたい思いも強かったです。だけど年齢も考えると、これがラストチャンス。いままでずっとチャレンジしながら上を目指してやってきたなかで、こういうチャンスをいただけたことは何かの縁だと思いました。今後のキャリアをどうしていきたいかを考えて、この決断をしました」

加藤は12日に行われた前節AC長野パルセイロで早速先発フル出場を果たすと、体を張った守備と攻撃参加で存在感を発揮。コーチングなどでもチームを引っ張り、PK戦での勝利に貢献した。

この日の大宮戦でもスタメンに名を連ねた背番号20は右サイドバックの位置から奮闘。前半は大宮に押し込まれる時間が続いたものの、0-1の最少失点で耐えしのいだ。

61分からはベンチに下がったMF松原后に代わって、左サイドバックにポジションを移して、安定したプレーを披露した。「ポジションごとに『このプレーが必要だな』というイメージを常に持ってやっています」と相模原での経験が、新天地でも生かされた。

大宮のストロングであるサイド攻撃を抑えた磐田は、73分に途中出場のMFグスタボ・シルバが同点弾。一気に流れをつかむと、98分にFW佐藤凌我が劇的な逆転弾を決めた。

佐藤は「後半はオープンな展開になっていましたが、そのなかでも自分は運動量を出すのが得意。あの展開になったなかで、前の選手が時間を作ってくれたから特徴が出せました」と、サックスブルーのゴール裏と喜びを爆発させた。

百年構想リーグの前半戦を苦しんだ磐田だが、これで3連勝となった。J1復帰を目指す名門に加わった加藤は、チームとともに自身初のトップディヴィジョンを目指す。

「他の人は遠回りと思うかもしれませんが、自分にとってはこの道が一番の近道だった。やるべきことをやってきて、それがこうしてすばらしいクラブでできることにつながった。幸せなことです」

地域リーグからはい上がって来た男の、新たな挑戦が始まった。

取材・文=浅野凜太郎

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