運の要素で語られることのほうが多いPK戦だが、この日は90分で決着をつけられなかった時点で、FC東京の“敗北”はある意味決まっていたのかもしれない。
■ダービーという試合の重さ
遠藤渓太が口にした「ダービー感はあまりなかった」という言葉が、この試合を物語っていた。
この日の東京ダービー自体、首都クラブの意地と意地をかけた戦いにふさわしいものだったかどうかについては難しいところだ。遠藤は続ける。
「去年、長倉(幹樹)のゴールで勝ったときも内容は特に良くなかったけど、気持ちはこもっていた。ゴールに向かっていく、何がなんでもやらせない気持ちをすごく強く感じました。だけどきょうはそういう雰囲気をあまり感じなかったし、もったいないところでコケたと思います。優勝を争っていくのであれば…」
前節のジェフユナイテッド千葉戦で見事なビルドアップからゴールに迫っていただけに、先発メンバー6名を変更したことが、まず驚きだった。もちろん中3日のコンディションなどを考慮した采配だったが、シュート数は前節の24本から大きく減少して5本にとどまった。
東京Vのコンパクトで統率の取れた守備は素晴らしかったが、それにしても自分たちの形で攻めさせてもらえなかった。
そして何より球際で勝ち切れなかった。セカンドボールの回収は後手に回り、東京Vの素早い攻守の切り替えにも手を焼いた。ダービーにしては肉弾戦も少なく、FC東京でイエローカードをもらったのは、途中出場した遠藤のみだった。
「サポーターも悔しいと思うし、非常にもったいない。もっとバチバチとしてゴールに向かっていくべきだし、ああいうプレーをしているようじゃダービーではキツイと思う。相手のほうが戦っていた」
ハーフタイムで松橋力蔵監督から「覇気がないぞ」とゲキも飛んでいた。それでもピッチ上のダービー熱は上がり切らない。ベンチから試合を見守った東慶悟も「出ていないから偉そうなことは言えないけど、相手に負けられないという気持ちをもっと、もっと出してほしかった」と素直な想いを明かした。
試合はそのまま0-0で終わり、PK戦に突入した。ここまでの7試合で行われた3回のPK戦をすべて勝利し、首位の鹿島アントラーズを2位で追っていたFC東京。その結果を踏まえれば『勝利に近づいた』と思ってもいい瞬間だったはずだが、ダービーという性質がそれを許さなかった。
青赤のサポーターはホイッスルが鳴った瞬間に、特大のブーイングを浴びせた。まるで敗戦したかのように。
「ブーイングは当然。内容も乏しかったわけだし、勝負強さもなかった。『何を観にきたんだ』という話だと思います」と険しい顔で背番号22は語る。
ダービーは負けてはいけないのではなく、勝利が必須の試合。だからこそ、百年構想リーグで導入されたPK戦で必ず決着の着く方式はダービーにもってこいだと思っていたが、サポーターの感情はそう単純ではなかった。
■この敗戦を糧にできるか
ここまで難しい試合でも何とかしてPK戦の末に勝利を収めてきたFC東京だったが、90分で相手を圧倒して勝利することの重要性を、大一番で改めて認識させられた。東も「90分で勝てるようなチームを作っていけるようにしないと。来シーズンは引き分けだと上位を狙えない」と警鐘を鳴らす。
そしてFC東京は、今季の“強み”だと思っていたPK戦でも2-4で敗北を喫する。
試合後、2本のストップを見せた東京VのGK長沢祐弥が「キッカーの情報は事前にもらっていた」と入念な準備を明かした一方で、松橋監督は「われわれができる準備はしなくてはいけないというのもありますが、これまではずっと勝ってきた部分もありますし、こういうこともある」とコメント。
決してこの試合を軽んじていたわけではなかったが、ダービーにかける想いで上回られたといっていい試合だった。
FC東京は2008年以来18年ぶりとなるダービー敗戦の屈辱を味わった。「全員が責任を感じるべきだし、これが自分たちの実力」(遠藤)。
直視しなければいけない現実がある。とはいえ、百年構想リーグはまだ半分も終わっていないことも事実だ。
鹿島との差は6ポイント差であり、直接対決で叩けば一気に差を縮められる。そして東京Vへのリベンジチャンスも残されており、目前にはFC町田ゼルビアとの2連戦が控えている。下を向くには早すぎるし、そんな暇もない。
この敗戦を糧にできるか。FC東京は岐路に立たされている。
取材・文=浅野凜太郎





