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アジアカップ戴冠へ…日本代表記者が討論。2019年の森保ジャパンに期待することは?

ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の解任からロシア・ワールドカップ(W杯)での奮闘、そして森保ジャパンでの新たなスタート――。2018年も多くのサッカーファンが日本代表の戦いに一喜一憂した。

『Goal』では、日本代表を長年取材する北條聡氏、飯尾篤史氏、川端暁彦氏という3名のサッカーライターに、2018年のサムライブルーを総括してもらった。「ロシアW杯」「森保ジャパン」「アジアカップ2019」という大テーマをもとにした鼎談(ていだん)の模様を前編・中編・後編としてお届けする。

後編では、2019年1月5日に開幕するアジアカップ2019での森保ジャパンを展望する。

以下に続く

【前編】2018年の日本代表総括…現場記者が裏話を交えながらハリル解任、西野ジャパン、ロシアW杯を回顧

【中編】2018年のサムライブルー、漢字一文字で表すなら? 日本代表の現場記者が森保ジャパンを本音で語る

■サプライズはなかったメンバー選考

飯尾:12月12日にアジアカップのメンバーが発表されました。改めて、この23人について率直な感想をお願いします。

北條:ある程度予想どおりで、“堅い”選考でしたね。9月の森保ジャパン初陣からまだ3カ月ぐらいしか経っていないなかで、これだけ堅いというのはすごいと思います。それぐらい強烈な印象を残してるってことの裏付けでもあるなと。

飯尾:僕もメンバーについてはほとんど予想通りでした。最初に考えていたメンバーで、守田英正のところはもともと三竿健斗にしていたけど、メンバー発表直前に負傷してしまった。それ以外は順当な選考かなという印象です。

川端:サプライズはゼロでしたね。普通なら本田圭佑を呼び戻すべきだ、香川真司はどうした? というロシアW杯組の復帰待望論が出てもおかしくないですけど、今の代表を観ているとそんな声が出る余地がない。

飯尾:じゃあ、逆に選ばれなかった選手をどこに配置するのかというのも、なかなか難しいんですよね。シント=トロイデンで絶好調の鎌田大地とかも良いなと思いましたけど、じゃあ誰に代えて鎌田なのかというのも難しい。本当に堅いメンバーになったと思います。

川端:今回からアジアカップはグループリーグが24チームに増えて、正直そこまでリスキーではないから、グループリーグはある意味遊べる、いろんな選手使えるんですよね。多分、森保監督はいろんな選手を使うつもりだと思います。たとえばGKのシュミットは使うんじゃないでしょうか。

北條:決勝まで戦うことを想定すると7試合あります。そう考えると、森保監督はメンバーを固定しないのかなとは思っています。

飯尾:ターンオーバーはしたほうがいいですよね。

北條:そうするとやっぱり競争が生まれますからね。競争が常にあったほうがいいですよね。今のアンダー世代の代表チームは、スケジュール的に厳しいなかで戦っている。どうしてもターンオーバーをしないといけない大会が多い。でも、それはチームの強化にとってもすごくいいことだし、それはA代表にも繋がると思う。すごく意味があることです。

川端:アジアカップはもちろん勝つことを目指すわけですが、3年半後にむけた種まきという要素もあります。今回は特にそういう部分にフォーカスしていい大会なのかなと思います。ここでピークを迎えても仕方ないですからね。

■アジアカップを戦う上で求められること

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飯尾:北條さんの仰るように決勝まで戦うことを想定した場合に、メンバーを固定しないというプランもあると思います。森保監督は11月に「チームとして2つ分、それ以上の選手層を持って今後戦えるように」と理想を口にしていましたね。

北條:森保監督が言っている「2チーム分」というのも、まるっきり「Bチームを11人並べます」という考え方と、「今いる11人のベースを一つのパーツとして、それが変わっても、戦力は大きく落ちません」という二つの意味合いがあると思う。そのパーツを交換した時に、上手く回るかどうかというところが重要。コンビネーションの部分で、合う合わないも当然あると思いますし。その中で当然、選手たちは微調整しないといけない。選手が変われば個性も変わるから、この選手をどうやって生かそうかというのを考えなければいけないかと。

飯尾:今回のメンバーで見ると、選手層はそこまで厚くないと思うんです。森保監督はああいう言い方をしていたけど、キルギス戦のチームでアジアカップをそのまま戦うとは思えないですし。選手層に関して言えば、やっぱり前回の2015年大会が一番厚かったかな。前年のブラジルW杯のメンバーがそのまま主軸を張っていましたからね。皮肉にもベスト8で負けてしまいましたが…。

それこそ優勝した2011年なんかは、最初は松井大輔がスタメンで出ていて岡崎慎司がサブだった。それを松井が負傷してから、岡崎が入るようになった。あのときの細貝萌だったり、伊野波雅彦、岩政大樹もだけど、戦うなかで本当に層が厚くなったのは感じましたよね。それによって結束が高まったかなと。

それに比べたら今回もレギュラーメンバーはある程度想像は付くんですけど、今言ったようにターンオーバーをしながら、上手い感じでラッキーボーイが出てきて、終わってみたら森保監督が言う「2チーム分」とは言わないですけど、逞しくなったなというのは感じられるかもしれませんね。

北條:現状、やっぱり代表チームは戦い方を変えることもそうだけど、やっぱり代表に関しては、人が変わることによって戦い方も変わることのほうが圧倒的に多い。だから、人をどう生かしていくかを考えられるような大会になればいいかな。

川端:例えば堂安律が出るのと、伊東純也が出るのではまるで変わってきますからね。タイプの問題というのが前提にありますが、それぞれの武器をどう生かすかということもポイントになってくると思います。

北條:それで上手くいかなくて、やっぱり「この選手ダメじゃん」って言うよりも、どう起用するのか、周りがどれくらい考えて使うのかが大事になってくる。どうやってそれぞれの選手の武器を生かすかというのを周りが考えないといけない。これまではチームメイトの武器をどうやって生かすかという部分が、あまり上手じゃない印象があった。とくに空中戦の強い選手の生かし方が。

川端:ハーフナー・マイクや豊田陽平が出ているのに、足元へのボールばかり出していたりとかですよね。

北條:そうそう。あとは、川端さんが例えに出したように、伊東をどう使うのか、スタートから使うのか、ジョーカーとしてオプションの一つにするのか。森保監督もずっと同じ戦い方をしていても勝っていけないというのは理解しているはずなので、いつも監督が言っている「臨機応変さ」を求めてほしいですね。

■韓国やイランと当たらなければ面白くない

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飯尾:アジアカップで日本が決勝トーナメントに行った場合、強豪国と対戦する可能性があります。ワールドカップ予選であれば避けたい国はあるとは思いますが、アジアカップに関してはどうでしょうか?

川端:いや、せっかくのアジアカップなんですから、韓国やイランと当たらなければ面白くないでしょう。ぜひとも対戦したい。

飯尾:確かに、むしろ韓国、イランと対戦してほしい。それで優勝してほしいと思います。

北條:どんな相手でも倒してやるくらいの気持ちでいないとね。ワールドカップでの目標がベスト8なら、アジアでどうこう言ってるようではダメだと思うし。

川端:むしろグループリーグの組み合わせ(ウズベキスタン、オマーン、トルクメニスタン)でガッカリした部分もありましたから。「もっと強いとこ来ていいのに」と。逆に当たりたくない国は、強豪国じゃない、たまたま勝ち残ったような国と当たるのは嫌ですね。それでそういうチームにうっかり負けたりしたら、もう立ち直れないですよ(笑)。

北條:当たりたい国、ありますか?

飯尾:たくさんありますね。サウジアラビアとも戦いたいし。そして、アジアのトップは間違いなくイランだと思うから、イランともやりたいですね。

北條:最近、アジアのチームとやると、昔みたいに日本相手に怖がってなくて。ドン引きしないチームとかも最近増えてきているから。そこでしっかりと力の差を見せつけてほしいな。

■2019年は兼任監督のメリットをもっと追求してほしい

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飯尾:最後に、2019年の日本代表に期待するところを教えてください。

北條:僕は大迫の位置とボランチにもっと選手が台頭してきてほしいと思っています。特に大迫のところ。これは僕の持論なんですけど、日本のサッカーが上手くいくときって、一番前にポストプレーの上手い選手がいるときなんですよ。優勝した2000年のアジアカップもそうだったけれど、西澤明訓や高原直泰のポストワークがコンビネーションで崩す攻撃の基点となっていましたからね。

川端:2010年の南アフリカW杯でも、本田圭佑がその役目を担っていましたよね。

北條:そうなんです。やはり日本の強みは二列目だから。一番前の選手が、ちゃんと落としてくれないと展開できない。だから、強くて上手い選手が育ってほしい。別にいなければ、いないなりの戦い方をすればいいけど、日本の良さを活かすためにもポストプレーができる選手がいてほしいなと思います。

飯尾:そうですよね。現状、大迫の存在を脅かすファーストストライカーがいないのは事実。その中で僕はちょっと趣向を変えてベルギーで結果を残している鎌田には期待しています。ファーストストライカーではないけれど、柔らかいから落ちてきて起点にはなると思うんですよ、往年のデニス・ベルカンプのように。

北條:それで言うと昔、「小笠原満男を1トップで使え!」みたいなことを書いたこともあったな…。要するにゼロトップ風で。

川端:かつてローマがトッティをゼロトップで起用したようなものですよね。僕は梶山陽平ゼロトップ説を主張してましたが(笑)。

北條:今でもそういう選手が一人だけいるんだよね。今年のJリーガーMVP、家長昭博。どう見ても一番キープ力があるし。彼は一番倒れない選手だからね。あとは、ボランチのところですかね。ロシアW杯限りで代表を引退した長谷部誠の後を継ぐ選手の台頭に期待しています。

川端:2019年への期待を挙げるならば、『中島、南野、堂安すごい』みたいな話が今ありますけど、このチームの完成形だとは思っていません。もっともっと新しい選手が出てきてほしいなと思います。そういう意味でまた新しい変化が起きて、いろんな衝突があって進化があって…というのが見られる年になるだろうと思います。新しい代表にはそこに期待したいですね。

飯尾:2019年に関しては、6月に開催するコパ・アメリカを始めとして、いよいよ東京五輪世代とA代表をもう少し絡めていく部分で、兼任監督のメリットをもっと追求してほしいなと。そのきっかけのファーストステップにコパ・アメリカがあるんですね。メンバーは東京五輪候補の選手と、A代表が入った混合チームで行ってほしい。今はまだ完全に分かれているので、そこで東京五輪のベースを見たいですね。期待しています。

【記者プロフィール】
北條聡
1968年生まれ。栃木県出身。1993年、ベースボールマガジン社に入社し『週刊サッカーマガジン』編集部に配属。日本代表や五輪代表などの担当を歴任。2009年~2013年まで編集長。1996年アトランタ五輪、2002年日韓ワールドカップなど取材実績多数。2013年以降はフリーランスとして活動。古巣の『サッカーマガジン』や『Number』(文芸春秋)などに寄稿。著書に『サッカーは5で考える』(プレジデント社)など。

飯尾篤史
1975年生まれ。東京都出身。『週刊サッカーダイジェスト』編集部から2012年に独立して、フリーランスのスポーツライターに。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)『残心 中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)など。

川端暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画し、後に編集長を務めた。2013年8月にフリーランスとしての活動を再開。各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。

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