(C)Getty Images久保建英は「ただの一選手」に終わるのか…25歳で迫る“ワールドクラスへの期限”【現地発】
“ただの一選手”
(C)Getty Images久保建英にとって2026-27シーズンは単なる1シーズンになり得ない。ケガや調子の波に苦しんだ昨季を経て、彼はそのキャリアの成否を決める分岐点に立っている。“将来を約束された選手”と呼ばれた日本人MFも、もう25歳だ。その約束が守られるのか、または裏切りに終わるのか……その答えは今季、明らかになるだろう。
久保が抱える問題は「いくつシーズンを重ねても変化がないように映る」ことだ。彼は選手としての格をもう一段引き上げるような、決定的な成長を期待されているのだが、どうしてもその地点まで到達できずにいる。むしろ、ここ最近は後退している感さえある。先のレアル・マドリーとの一戦は、その印象をさらに強めるものだった。序盤に出したスルーパス以外は何もうまくいかず、まるでクラック(スペイン語で名手の意)から、“ただの一選手”になってしまったかのようだった。
久保は昨季からラ・レアルで存在感を失い、市場価値も落としている。それは彼の責任だけにほかならない。日本を中心にして、彼の評価には一種の甘さが付きまとっている。不運にもケガしてしまったとか、ラ・レアルでは周りの選手が久保に付いていけないとか、監督の不可解な采配が悪いとか……。ケガに関しては確かに運の要素もあるかもしれないが、そのほかは彼の責任の範疇だろう。ラ・レアルが久保のレベルに見合わない? しかしチームは昨季、彼がほぼ参加できなかったコパ・デル・レイで優勝し、ミケル・オヤルサバルらは代表レベルで活躍している。そして監督は、あくまで監督の役割をまっとうしているだけだ。戦術やチームメートとの相性はあるとはいえ、それらはすべて久保が負うべき責任だろう。
失われた自信
(C)Getty Images久保は鏡の中の自分と向き合い、現状を理解して、どう状況を覆すのかを自問しなければならない。そして理解すべき現状が“継続性の欠如”であることは明白だ。今の彼は単発的に見せ場をつくるだけの選手であり、継続的な成果を見込むことができない。
一つ気がかりなのは、久保が自信を失っているように見えるところだ。現在の彼はある種の悲壮感すら漂わせており、見ていて痛々しさすら感じてしまう。以前のように試合を楽しんでいる様子はなく、何か憂いを帯びた表情を浮かべて、プレーへの参加意識や積極性も低いように思える。その観点から言えば、久保は自尊心や自信を取り戻す必要がある。そうできなければ約束された将来にたどり着き、真のワールドクラスの選手になることは難しい。
少なくとも、進むべき道はある。というより、今の彼には言い訳のできない土台が用意されている。ペッレグリーノ・マタラッツォが志向するプレースタイルは、間違いなく久保の長所に合致するのだから。アメリカ人指揮官の敷く戦術では両サイドバックが前へと押し上げられるため、久保は右サイドからピッチ中央にスライドして、自由にプレーすることができる。相手のライン間でオヤルサバルとポジションを交換したり、逆サイドに流れることも可能だ。マタラッツォが与えるこの自由は、久保が久保らしさを取り戻すきっかけにもなり得るだろう。
傑出したテクニックを有する久保は、1対1で強さを発揮するサイドアタッカーとしてだけでなく、攻撃の繰り手たるトップ下としても機能する。中央に位置すればオヤルサバル、ルカ・スチッチ、カルロス・ソレールら同じフットボール言語を共有する仲間と連係を取りつつ、パスワークやワン・ツー、ドリブル、スルーパスで相手を切り崩せる。加えてその加速力に鑑みれば、サイドバック&センターバックの間を突いて裏へ抜け出す動きも効果的だ。今季の久保はサイドアタッカー、トップ下の二面性を持ち、その能力を存分に発揮することができるだろう。
期限
Getty Images久保については「ハイペースかつフィジカル重視の現代フットボールにおいて、彼のような選手が活躍するのは難しい」という声も聞く。しかし、そんな指摘はまったくのデタラメだと断言させてもらう。久保のような選手は現代フットボールの中でも輝ける。むしろ、逆に大きな価値を持てる。それは近年のスペイン代表の成功を見たって明らかだろう。久保はスペイン代表のクラックたちのように狭いスペースでも機敏に動き、ドリブル、フェイントを仕掛けることができる。ハイペースだのフィジカルだのと言っても、結局はほかの選手より早く思考することが肝要なのだ。バルセロナの下部組織で育った久保にそれができることは、すでに証明されている。
だからこそ、なのだ。久保は今季こそ、その類い稀なポテンシャルを爆発させなくてはならない。彼はラ・リーガでまだ本格的なブレイクを果たしておらず、「永遠の未完成」というレッテルを貼られてしまっている。実際、彼のゴール、アシスト数は明らかに物足りないし、アタッキングサードに入ったときのプレー判断にはまだ改善の余地がある。今季の彼はそうした課題を克服して、コンスタントに成果を収めなくてはならない。
少し前の私たちは、バルセロナとレアル・マドリーの両方に在籍した久保が、紆余曲折あってたどり着いたレアル・ソシエダから再びビッグクラブへ羽ばたいていく姿を思い描いていた。そんな未来予想の期限は、もうすぐ切れることになる。25歳と若手とは言えなくなった今こそが、真のワールドクラスになれるのか、“期待に届かなかった選手”に終わるのかの分かれ目となるだろう。
いずれにしろ、久保がまずすべきことは、やはり自信を取り戻すことにほかならない。彼が自分自身を信じないことには何も成し遂げられない。そしてそこから、どこまで行けるのか……。誰もが一度は魅了され、思わず「うまい」と口にした彼の力・才能を考えれば何も不可能はないはず。約束にも、十分間に合うだろう。
文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長
翻訳=江間慎一郎
