GOAL“放っておけない男”中村敬斗:ワールドカップのブレイクスターに高まるプレミアリーグ挑戦への期待【Hidden Gems】
今大会のワールドカップでも、日本代表は再び世界中のサッカーファンを掴んだ。その挑戦は期待していたよりも遥かに早く、ブラジル代表相手にラウンド32で終わってしまったが、選手たちが涙を流しながらサポーターに感謝を伝える姿や、森保一監督の感情のこもったスピーチも確実に人々の心を打つものだった。
だが、彼らが残したインパクトはその礼儀正しく周囲へのリスペクトを忘れない姿だけではない。特にグループステージ開幕戦のオランダ戦、ピッチ上で強烈な印象を残した選手がいる。それこそ、中村敬斗だ。今大会屈指の名勝負となったこの一戦、彼は日本代表の中でも傑出したパフォーマンスを見せ、突き刺したシュートも見事であった。彼のゴールもあり、日本代表は劇的ドローに持ち込んでいる。
ブラジルで学んだ“ジョガ・ボニート”
Getty Imagesあのオランダ戦のゴールは、彼のプレースタイルをよく表している。左サイドでドリブルし、中へ切れ込み、右足に持ち替え、最後は強烈にボールを叩き込む。彼の技術は確かであり、それは日本の番組『NHK NEWS おはよう日本』で放送された映像からも分かるように、幼少期からのたゆまぬ練習によって磨かれてきたものだ。
その番組では、中村の心温まるホームビデオが紹介されている。母親が彼に向かって何度も卓球のボールを投げ、それを幼い彼が巧みに空中でつかみ取る、というものだ。「あれはボールを芯で捉えるためで。ものすごくいい練習になりました」と振り返っている。「本当に、あれでボレーがものすごく良くなったと感じました」
彼の両親は、プロサッカー選手という夢を育てるためにできることは何でもした。7歳くらいの頃には、中村はブラジルに連れて行ってもらえるまで駄々をこねたという。『テレビ朝日』のインタビューでは「『とにかく行きたい』『ブラジルにどうしても行きたい』と、親にお願いして連れていってもらいました」」とも告白している。なぜ、ブラジルなのか? 答えは明白だ。
「ロナウジーニョの大ファンでしたし、ブラジルのサッカーに魅了されていました。現地でそれを体感して、地元の子どもたちと一緒にプレーしたかったんです」
そして彼は、ブラジルのストリートで“ジョガ・ボニート”を経験する。
「『一緒にサッカーやろうよ』と声をかけてくれて。あの子たちだけじゃなくて、空港でもリフティングしていたら、働いている人が『入れてくれよ』と来て。一緒に5、6人でリフティングしました。ブラジル人は全員サッカーが好きなんです」
「今振り返ると、あれはすごく特別なことだったとわかります。彼らは本能的に動いて、その瞬間に自然だと感じることをする。子どもの頃、ああいうプレースタイルから多くを学びました」
そのブラジルに、よりによってワールドカップで敗退に追い込まれた時、中村は感情を抑えきれなかった。それでも今大会では1ゴール1アシストを記録し、全体的なパフォーマンスも秀逸だった。その実力を、世界最高の舞台で証明したことは間違いない。
日本屈指の逸材からスターへ
Getty Imagesそんな中村は現在26歳。所属クラブのスタッド・ランスは、リーグ・ドゥ(フランス2部)に留まっている。彼ほどのレベルの選手としては、かなり奇妙な状況だ。
クラブ4シーズン目、そしてリーグ・ドゥ2シーズン目に向けた準備をすでに始めているが、当然のように、彼は今後1カ月以内に新天地を求める可能性が高いという。逆にそうならない姿を想像する方が難しい。
中村は三菱養和SCでキャリアをスタートさせ、その後17歳でガンバ大阪に加入。すぐにトップチームデビューを果たした。日本屈指の若手有望株の評判にふさわしく、その評判は2017年のU-17ワールドカップで4ゴールを挙げたことでさらに高まった。
その後は必然的にヨーロッパへの挑戦を決意したが、FCトゥウェンテ(オランダ)とシント=トロイデン(ベルギー)では短期間の所属に終わり、まったく異なる世界にまだ順応する必要があることを示していた。それでも、2021年に加入したヨーロッパ3クラブ目、LASKリンツで本領を発揮。オーストリア・ブンデスリーガとカンファレンスリーグでのわずか59試合で、23ゴール5アシストを記録している。
その活躍により、当時はリーグ・アンを戦っていたスタッド・ランスへの移籍を勝ち取ることに。新天地でも同僚の伊東純也と共にチームを牽引、特に残留争いを強いられた2024-25シーズンは11ゴール2アシスト、ランスのリーグ戦33得点の3分の1以上に関与した。彼が唯一の希望となっていたのだ。
しかし彼の奮闘も実らず、ランスは残留プレーオフでメスに敗れ、2024-25シーズン終了時にリーグ・ドゥへ降格。それでも中村は2部でも再び決定的な存在となり、クラブの総得点「53」のうち14ゴール3アシストを記録した。
プレミアリーグ挑戦への期待
(C)Getty Imagesそして、前述のワールドカップへとつながっている。当然ながら、彼のパフォーマンスはより大きなリーグ・クラブから注目を集め続けている。噂に上がっているのは、フランスの名門マルセイユ、そしてエヴァートン、ボーンマス、フラムといったプレミアリーグ勢も状況を注視している。
おそらく、イングランドのファンは「日本人選手」と聞けば真っ先に三笘薫の名前を挙げるだろう。ブライトンのウインガーはプレミアリーグでも確かなインパクトを残し、そのドリブルに魅了されている人も多い。彼のワールドカップ欠場を残念がっている人もいたはずだ。
しかしその代わりに、中村が輝きを放った。三笘薫のように左サイドを滑らかなドリブルで支配し、切り込んでゴールに絡んだ。そしてもちろん、その甘いマスクも人々の心をつかんでいる。今では「世界で最もハンサムなサッカー選手の1人」に数えられても不思議ではないはずだ。
いよいよプレミアリーグは新シーズンの開幕が迫っている。今夏には前田大然、守田英正、冨安健洋など多くの日本人選手が加入したが、中村もこの流れに続くかもしれない。“放っておけない”選手となった彼は、イングランドは彼らを歓迎するだろう。