Getty/GOAL【現地発】今年のバロンドール受賞はないだろう。しかし、クヴァラツヘリアは現「世界最高の選手」だ
パリ・サンジェルマン(PSG)は12日、シュタディオン・ザルツブルクでアストン・ヴィラを2-1で撃破。2年連続チャンピオンズリーグ王者として挑んだUEFAスーパーカップで、連覇を達成した。ウナイ・エメリ率いるヴィラの健闘も見事だったが、最後に試合を決めたのは、やはり「止められない男」の存在だった。
開始20分、フヴィチャ・クヴァラツヘリアはあまりに突然に、かつあまりに美しくネットを揺らした。デシレ・ドゥエのパスをペナルティエリア右で受けると、素早い2タッチでマティ・キャッシュをかわし、右足を一閃。短いステップから繰り出された強烈なシュートに、GKは反応することができなかった。まさに完璧な一撃であり、そう何度も見られるようなレベルのゴールではない。
だがしかし、クヴァラツヘリアはいつだってそれを可能にする。両足を自在に使い、抜群のスピードと切れ味で相手DFを抜き去るだけでなく、いとも簡単に決定的なシュートを叩き込んでしまうのだ。この試合でもヴィラは彼に対応できず、88分の交代までにドリブル突破3回、デュエル勝利5回、ボックス内タッチ数9回を記録している。
おそらく、FIFAワールドカップ2026でプレーしていないことから、2026年のバロンドール受賞は難しいだろう。だが、彼の実力や実績は申し分ない。ピッチ上のパフォーマンスだけを評価すれば、現在「世界最高の選手」と言っても過言ではないのだ。
「クヴァラドーナ」
Getty Images見る者すべてを魅了するスーパースター
クヴァラツヘリアは、4年間もの間こうしたパフォーマンスを続けてきた。
2022年夏、ディナモ・バトゥミからわずか1200万ユーロでナポリに加わったこのウインガーは、当時は全くの無名であり、大きな話題にもならなかった。だが、加入初年度でいきなりセリエA34試合で12ゴール13アシストを記録。ナポリに33年ぶりのスクデットをもたらし、セリエA年間最優秀選手にも輝いている。
「正規の掘り出し物」と称される彼の活躍はチャンピオンズリーグの舞台でもとどまることを知らず、初挑戦でチームをベスト8に導くと、最優秀若手選手も受賞。翌シーズンも混迷の時期にあったナポリを支え、爆発的なプレーと短いソックス姿から、ファンも「クヴァラドーナ」との愛称でありったけの愛を注いでいる。ナポリの選手として、これ以上の称賛はないだろう。見る者すべてを魅了する彼のプレーは、元指揮官ルチアーノ・スパレッティが「絶品」と称したように、まさに「絶品」なのだ。
最後のピース

PSGに悲願のチャンピオンズリーグ初制覇をもたらす
2024年夏にアントニオ・コンテが指揮官に就任した後も、クヴァラツヘリアはナポリでハイパフォーマンスを続けていた。しかし、より大きな舞台へ旅立つのは時間の問題だった。そして翌年1月、7000万ユーロでPSGへと移籍。ルイス・エンリケ体制で悲願のビッグイヤーを狙う彼らにとって、まさに「最後のピース」となったのだ。
当時のPSGは国内で無類の強さを誇っていたが、チャンピオンズリーグでは最後の決め手を欠き、優勝にあと一歩届かない時期を何年も過ごしていた。だからこそ、彼らにはシーズン中でも起爆剤が必要だったのだ。エンリケはクヴァラツヘリアの加入に伴い、ウスマン・デンベレ、デシレ・ドゥエ、ブラッドリー・バルコラと前線に4人のウインガーを手にすることに成功。ピッチ上で絶えずポジションをローテーションさせて相手を混乱に陥れ、またスピード感溢れる強烈なハイプレスで窒息させるシステムを完成させている。
それが2024-25シーズン、チャンピオンズリーグ初制覇という形で表れている。史上初のビッグイヤーを手にした際、その称賛の多くはデンベレに集まった。彼の残した驚異的な活躍や成績からバロンドールは当然だったが、影響力を見ればクヴァラツヘリアも同等だったことは間違いない。圧倒的な個人技と戦術的規律の理想的なバランスを持つ彼は、エンリケにとって理想の存在だろう。
歴史に名を刻んだ男
Getty Images Sportノックアウトステージ史上初の7試合連続ゴール関与を達成
そして昨シーズン、PSGは1992年に「チャンピオンズリーグ」へと名前が変わってから史上2チーム目となる連覇を達成した。
クヴァラツヘリアの成績は、出場16試合で10ゴール7アシスト。特にノックアウトステージに突入してからは圧倒的であり、7試合連続ゴール関与を達成した史上初の選手となっている。
さらに「世紀の一戦」と称されたバイエルンとの準決勝ファーストレグの圧巻のパフォーマンス、アーセナルとの決勝戦におけるPKの獲得など、目に見える成績だけでなく、PSGにもたらしたものはあまりにも大きい。少なくとも、このシーズンのチャンピオンズリーグで、彼以上の選手はいなかったはずだ。
世界最高の選手
AFP2025-26シーズンのチャンピオンズリーグ最優秀選手に
キャリアで4度ビッグイヤーを掲げたクラレンス・セードルフ氏は、昨季の決勝戦を『Amazon Prime Video』で解説した。そして、クヴァラツヘリアのプレーに圧倒されている。
「彼は今、世界最高の選手だ。そして、まだまだ伸びるはずだよ。今後も彼が左サイドの選手として輝いていくのかはわからない。どんな状況でも何をすべきか本能的に理解している選手だからね。特定の局面ではチーム全体を引っ張ることもできる。その知性が気に入っているよ。彼は中盤の“プラス1”になれるだけでなく、ファイナルサードを個人で破壊し、試合の流れを変えることもできる。信じられないような選手だ」
セードルフ氏は、クヴァラツヘリアの決定力だけでなく、多様なポジションから試合を掌握し、常に敵陣への突破口を探す姿勢を高く評価している。事実として、彼をマンマークするのは不可能だろう。圧倒的な技術と戦術理解度、フィジカルを有しながら、常に捉えどころがなく、予測不能だからだ。
「世界最高の選手」という評価は決して誇張ではない。クロード・マケレレ、オーレ・グンナー・スールシャール、ガレス・サウスゲート、ラファ・ベニテスらで構成されるUEFAテクニカル・オブザーバー・グループは、クヴァラツヘリアを2025-26シーズンのチャンピオンズリーグ最優秀選手に選んだ。これが何よりの証拠だ。2022年のカリム・ベンゼマ、昨年のウスマン・デンベレも、バロンドールの前に同賞を手にしている。この賞は大きな意味を持つはずだ。
バロンドールの夢
Getty Images Sport2026年バロンドール受賞は難しいが…
しかし残念ながら、クヴァラツヘリアが今年のバロンドールを受賞することはないだろう。
主な理由はFIFAワールドカップ2026にジョージア代表が出場しなかったこと、そして国内リーグでの成績だ。チャンピオンズリーグを優先するエンリケは、クヴァラツヘリアをリーグ・アンで20試合しか起用しなかった。それもあって、ゴールとアシストの合計は「12」。この成績ではバロンドール受賞は難しいだろう。そしてやはり、ワールドカップの舞台に立てなかったことは大きな痛手だ。ワールドカップ開催年はこの大会での活躍が大きく影響するため、クヴァラツヘリアの受賞は難しいだろう。
今年の本命は、レアル・マドリーでゴールを量産したキリアン・エンバペ、ノルウェーを躍進に導いたアーリング・ハーランド、アルゼンチン代表で変わらぬ輝きを放ったリオネル・メッシ、スペイン代表を優勝に導いたロドリ、そして年間73ゴールを挙げたハリー・ケイン。この5人で争われる可能性が高い。
現在のバロンドールの投票システムでは、クヴァラツヘリアは表彰台にすら上がれないだろう。だがしかし、本物のフットボールファンであれば、彼の価値は十分すぎるほどわかっているはずだ。この活躍を何年も続け、PSGにタイトルをもたらし続けたその日には、ようやくバロンドールも彼を無視できなくなるはずだ。純粋なプレー面だけを見れば、今の彼に勝る選手などいないのだから。
