GOAL【NXGN】鈴木彩艶ら加入で“新時代”迎えるヴィラ、牽引するのは17歳の超逸材?衝撃デビューのFWが照らす未来
アストン・ヴィラ加入から7カ月、ブライアン・マジョがついに公式戦デビューを果たした。1月にメスから加入したものの、FIFAルールによって昨季は出場できず。それでもこの夏にゴーサインが出ると、デビュー戦はあまりにも衝撃的だった。
チャンピオンズリーグ王者とヨーロッパリーグ王者による本格的なシーズン開幕前に行われる大一番、UEFAスーパーカップ。今年もパリ・サンジェルマン(PSG)が優勝を飾る結果となったが、間違いなく、この舞台で最も輝いたのは17歳の若きストライカーだ。
試合開始直後から強靭なフィジカルで欧州最強のディフェンス陣を圧倒。何度も決定機を創り出すと、前半終了間際にはウィリアン・パチョを完全に圧倒し、クロスに合わせてゴールを決めてみせたのだ。一夜にして「世界屈指の若手ストライカー」と称されるようになったマジョのこれまで、そしてこれからに迫っていく。
文=Peter McVitie
キャリアの始まり
AFPロンドンのエンフィールドで生を受けたマジョだが、幼少期に家族とともにルクセンブルクへ移住。世界で唯一の大公国で育つことになったが、幼い頃からその才能は圧倒的だった。
10代前半の時点で同年代の選手たちよりも頭一つ抜けた体格を誇り、その噂は国中を駆け回ることに。あまりにも圧倒的だったため“フィジカル頼り”のプレーとならないように、ルクセンブルクサッカー連盟のマヌエル・カルドニTDがわざわざ介入し、中盤で起用するよう提案したほどだ。そしてこの提案がその後の彼のプレーに大きな影響を及ぼし、両足でのボールコントロールやパスの技術向上につながっている。
こうして圧倒的なフィジカルと繊細な技術を磨いた彼は大きな注目を集め、2023年に15歳でフランスのメスへ加入。フランスU-19リーグで、4歳年上の選手たち相手に26試合13得点と抜群の結果をいきなり残している。ステファン・ル・ミニャン監督は、「U-19では別格だった。年齢の割に体ができ上がっているので、フィジカル面の要求にも対応できるよ」と語っていた。
さらに、この活躍を受けてルクセンブルク連盟は早々に動く。リーグ・アンデビューを飾る前の2025年3月、16歳の誕生日からわずか2カ月後、マジョをスウェーデンとの親善試合でデビューさせたのだ。国内で彼にかかる期待の大きさがうかがえるだろう。
逸材の現在地
AFPそんなマジョは昨年8月にリーグ・アンデビューを果たし、ストラスブール戦とリヨン戦で先発出場。メスは彼を丁寧かつ確実に成長させるため、トップチームとリザーブチーム(フランス5部相当)の両方で出場機会を与え続けた。11月のヌイイ=シュル=マルヌ戦では2ゴールも奪っている。
リーグ・アンではその後3試合に出場しただけだったが、ユースチームでの活躍は当然、欧州中のスカウトの注目を集め続けた。メスとしてはもう少し自クラブで育成する考えであっただろうが、引き留めることはできないほど彼の存在は大きくなっていたのだ。そして2026年1月、アストン・ヴィラが1200万ユーロの移籍金を支払ってマジョを獲得している。
しかし、マジョに思わぬ障害が立ちはだかる。彼はイングランド生まれであるものの、すでにルクセンブルク代表デビューを飾っていたため、FIFAはこれが「国際移籍」にあたると判断。18歳未満の国際移籍を禁じる規定により、ヴィラはマジョを登録することができず、当初は2027年1月に18歳の誕生日を迎えるまでプレーすることを禁じられたのだった。
当然、選手もクラブも黙っていない。マジョはインスタグラムに「free my dawg」と切実なメッセージを投稿数と、ヴィラ側もスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えを起こす。今年7月に不服申立てを行うと、CASは翌月にヴィラを支持する判断を下している。これは、あのUEFAスーパーカップの数日前の出来事である。
最大の武器
AFPそんなマジョだが、これまで何度もベルギー代表FWロメル・ルカクと比較され続けてきた。しかし、カルドニTDはこう語っている。
「体格やプレースタイルは似ているね。だが、ブライアンはより完成されたプロフィールを持っている。狭いスペースでのプレーに優れ、ポジショナルプレーの面でも本当に優秀だ。背後を取る動きも良く、両足でボールを供給することもできる。まだ大きな成長の余地があるしね」
彼が洗練された技術を身に着けたのは、間違いなくカルドニの提案も大きいだろう。U-14チームで中盤起用されていた際のことを問われたマジョは、笑いながら振り返る。
「いや、あんまりね(笑)。でも、とにかく……自分と同じ体格の大人の選手たちと戦うための準備をする必要があったんだ。そのレベルでは、生まれ持ったフィジカルの強さだけに頼ることはできない。ほかの武器が必要なんだよ」
この客観的な視点が彼の大きな武器の1つだ。圧倒的なフィジカルを活かしてただゴールに進むのではなく、足元の技術と周りを活かす視野、オフ・ザ・ボールにプレッシングも身につけ、より総合力の高いFWに成長した。
「まず、ゴールに背を向けた状態では、こぼれ球への反応に意識を向けるけど、同時に前へプレーすることも重視しているんだ。視野とゲームインテリジェンスを持つようにしている。たとえゴールを決めたとしても、何度もボールを失うくらいなら点は取らなくてもいい。チームが第一だ。チームに貢献するプレーをする方がいいんだよ」
そんなマジョは勉強熱心な性格でも知られており、試合前にルカクの映像をよく見るなどその比較を前向きに受け止めている一方で、ロベルト・レヴァンドフスキやカリム・ベンゼマ、さらにブライアン・ブロビーなど様々なストライカーの動きを分析。自らのプレーに新たな要素を加えようと、日々学び続けている。
改善点は?
Getty Images Sport一方で、もちろんまだまだ改善すべき点はある。それは本人も認めるところだ。プレミアリーグは才能だけで生き残れる世界ではないと、しっかりと理解している。
「(弱点は)特に技術面だね。左足もそうだ。改善しないとね。もっとシャープに走るために、動きの質の部分もまだ足りないよ」
そう語る彼だが、前述のUEFAスーパーカップでPSG守護神マトヴェイ・サフォノフを破ったのは左足である。彼が「弱点」と認めた逆足だ。さらに、彼の言うアジリティの部分を向上させるためにフィジカルトレーナーと個別練習も増やしている。やはり、その客観的な視点こそが彼を特別な存在にしているのかもしれない。
大ブレイクの予感
Getty Images SportあのUEFAスーパーカップで、ヴィラファンは完全に彼の虜になったはずだ。しかし、プレミアリーグデビューはもう少しお預けとなりそうだ。足首の負傷によって離脱を強いられており、復帰早くても9月になる。
それでも、焦る必要はないだろう。17歳212日でUEFAスーパーカップ史上最年少得点者となった彼のプレーを見られる時間は、まだまだ十分にあるからだ。今夏オリー・ワトキンスやユーリ・ティーレマンスなど長年主力を務めた選手が相次いで退団、鈴木彩艶やヨハン・マンザンビなど新たな才能を獲得するなど、ヴィラは新時代を迎えている。そうした中で、若手選手を積極的に抜擢し成長させてきたウナイ・エメリも、マジョには大きな期待をかけている。ケガが完全に癒えた後、エースとして彼がチームを牽引する姿も十分に想像できるだろう。
そして、マジョの成長を楽しみにしているのはヴィラファンだけではないはずだ。彼は昨年9月、生まれ故郷であるイングランドのU-17チームでデビュー。すでに9試合を戦い、4ゴールを奪っている。今季の活躍次第では、トーマス・トゥヘルのチームに呼ばれても不思議ではないはずだ。33歳となったハリー・ケインの後継者問題に揺れるスリー・ライオンズにとって、本格派ストライカーの台頭は大きな希望となるだろう。
