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スタイルを確立できなかった今季の大宮に訪れた2度目の悲劇。10人でも東京Vの勝利は必然だった

大宮アルディージャはまたもや10人の相手に屈した。その内容は「力負け」であり、東京ヴェルディだけでなく、上位で終えたチームと、揺るがないスタイルがあるかどうかが露呈した一戦でもあった。

■前半から一方的な展開に

明治安田生命J2リーグ戦でのシーズンを5位で終えた大宮は25日、J1参入プレーオフで東京ヴェルディをホーム・NACK5スタジアム大宮へと迎えた。引き分けでも2回戦へと進むことのできる、大きなアドバンテージを持っていた大宮だが、石井正忠監督は前日に「アグレッシブに戦う」と明言。満員のサポーターの前で、ホーム最終戦を勝利で飾ることが期待された。

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しかし、前半の展開はそんな予想とはまったく異なるものとなった。ゴールが必要な東京Vが終始ボールを支配し、ボールポゼッションは7割超え。必然的にペナルティアーク付近まで持ち込まれることも増え、逆に大宮はほとんど相手のゴールを脅かすことはできなかった。今季のJ2得点王であり、エースとしてチームをけん引してきた大前元紀は「自分たちが保持する時間が少なくなるのは分かっていましたが、前半からボールを握られ過ぎたし、自分たちの持つ時間も短過ぎました」と振り返る。

ボランチで先発した三門雄大は「アグレッシブに行きたかった」と準備していたプランを明かしつつ、ピッチ内では難しさがあったことを認める。

「引いて守ったら、やはり今の自分たちのディフェンスのことを考えると、やられるかなと思っていました。なので、できるだけアグレッシブに前からプレスをかけていきたかった。ヴェルディの選手たちは基本的にすごくうまいですけど、少しかければ蹴ってくれたりミスが少し出てカットできる場面もありました。ただ、ウチのボールを追う前線の選手と相手のボールを回す選手たちの攻防を見たとき、やはり相手のほうが一枚上手だったと思います」

とはいえ自分たちのプランを実行できなくとも、前半を失点ゼロで耐え抜いたことも事実ではある。実際、45分間のうちの大半の時間でボールを持たれながら、決定的なピンチはなく、ハイライトもミドルレンジからのシュートがほとんどだった。

■試合の潮目を変えた内田の退場

2018-11-26-red-uchida-omiya(C)J.LEAGUE

後半開始を知らせる笛が鳴っても試合の趨勢は変わらず。前半と同じ光景が広がり続けていた。

そんな中、突如ターニングポイントが訪れる。59分に東京Vの内田達也が2枚目のイエローカードを受けて退場。大宮サポーターは拍手を送り、ややシビアだった判定を歓迎した。ホームチームが一気に2回戦進出へと近づいた、かと思われた。実際、東京Vのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も「退場で難しくなった」と試合後に認めている。

しかし、数的優位に立った一方でピッチ上では戸惑いが見えた。大前は「リーグ最終節(ファジアーノ岡山戦)で僕らは10人で勝っていたし、(数的優位に立つことに)油断はなかった」と語ったが、試合を難しくしたのは事実かもしれない。このままスコアレスで試合を終えるのか、10人の相手の息の根を止めるためゴールを奪いに行くのか――三門はこう振り返る。

「0-0でOKだからボールを動かしていくのか、積極的に前にパスを当てながら1点を取りに行くのか。その判断が非常に難しかったと思います。僕らはもう一個選択肢(数的不利の相手にゴールを奪いに行く)が増えたという感じだったので、そこを意思統一してやれればよかった。統一されていなかったとは言わないですけど、(残り30分以上という)時間的にも難しさはあったと思います」

この段階でどの方向に舵を切るかハッキリさせることによって、結果は変わっていかもしれない。逆に東京Vはしゃにむにゴールに迫るという選択肢のみとなり、目指すものがより明確になった。セットプレーから決勝点を挙げた平智広は「10人になって自分たちはもう点を取るしかなくなった」と数的不利がポジティブな効果を発揮したことも示唆している。

71分、平に決められ東京Vに先行された大宮は立場が逆転し、点を取らなくてはいけなくなった。ドリブラーの奥抜侃志が入り、攻撃のバリエーションを増やすと、81分にはロビン・シモヴィッチを前線に投入、ロングボールも使い始める。しかし、前線の連係はままならず、シュートシーンまで至らない。アディショナルタイムに訪れた絶好の決定機、シモヴィッチのシュートもポストに嫌われた。そしてタイムアップ。「運にも恵まれた」(ロティーナ監督)東京Vが敵地で歓喜の輪を作り上げた。

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■対照的だった大宮と東京V

大宮が数的優位で敗れたのは、今年に入って2度目、第25節松本山雅FC戦以来だった。展開やスコアこそ異なるが、そこに見えたものは同じ。「自分たちのカラー」が存在しないことから来る、プランのブレだ。

松本戦は追加点を奪いに行って2失点を食らい、東京V戦はどっちつかずのままゴールを許した。

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加入1年目で、リーグ戦全42試合に出場した三門はJ2を上位で終えたライバルたちについて「みんながそれぞれのサッカーを信じて、統一されてやっているからこそ、今の順位にいると思います」と話しつつ、大宮に足りないものを指摘する。

「試合を思い返したり、見返してみると、非常に甘いなというところが多々あります。そこはもうチーム内でもっと指摘していかなきゃいけない。大宮は選手同士の仲がよくて、僕はそういうのもすごくいいと思うんですけど、逆に言えばそういうところがちょっと欠けているのかなとも思います。やはりもう一回見つめ直して、ピッチの中で厳しい声がどんどん飛んでいかないと、勝てるチームにはなっていかないのかなと思います」

さらには最後の最後まで大宮独自のカラーが出てこなかったと話す。

「『大宮のサッカーってどうなの?』って言われたときに、なかなか出てこない。もう少し自分たちでカラーを出せたらいいと思います」

逆に東京Vの選手たちから聞こえたのは「変わらないこと」だった。その言葉どおり、この試合ではロティーナ監督の戦術を信じ、抜い抜く姿が体現されていた。平は「10人になっても、自分たちの戦い方は変えないようにというのがあった」と明かす。

「傍から見たら一人退場して難しい展開になると思われたかもしれませんが、ピッチ内ではまだまだできるぞと思っていました。前半からボールは持てていましたし、自分たちのやりたいサッカーができていました。人数は少なくなりましたけど、その後もボール動かせましたし、自信を持ってできたと思います」と語ったのは林陵平だ。

■大宮は再スタート、東京Vは勝負の2試合へ

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1年でのJ1復帰という目標を果たすことができなかった大宮の石井監督は試合後、「申し訳ない」という言葉を繰り返した。

90分間は声援を送り続けた大宮サポーターだが、試合後の挨拶の際には大ブーイング。チームは自分たちのスタイルを構築し、ここから変わっていくことが求められる。

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他方、東京Vの今季は続いていく。プレーオフの残りの2試合では、再び敵地で勝利を挙げることが求められる。変わらないこと、そしてロティーナ監督への信頼を胸に、まずは12月2日、横浜FCとの一戦に臨む。

取材・文=平松凌(Goal編集部)

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