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Bundesliga in America 1-1GOAL

「ハリー・ケインは一体どこでプレーしているんだ?」プレミアリーグやMLSと視聴者を奪い合うブンデスリーガ、米国でいかに独自の地位を築いているのか

Thomas Hindle
翻訳者:
  • クリスティン・シュルンプフは、戦術について話すなと言われた。ロンドンのパブで、アメリカ人の彼女がバイエルン・ミュンヘンの試合について意見を述べていたときのことだ。近くには女性が数人と、腹を立てた男性たちの大きな集団がいた。シュルンプフはサッカーファンなら誰もがするように、バイエルンのシステムにおける戦術上の欠点を指摘した。すると、男性の一人が怒って言い返した。

    「ある男性に『男のことでもググっていろ。戦術は男たちに任せておけ』と言われたんです」とシュルンプフは語った。

    その言葉が、彼女自身の居場所をつくるきっかけになった。シュルンプフは以前から、もっと誰もが参加しやすいサッカーの場をつくれないかと考えていた。ポーランドにルーツを持ち、ロベルト・レヴァンドフスキをきっかけにバイエルンのファンになった彼女は、長年クラブを応援してきた。女性には、見下すような男性に口を挟まれたり、黙れと言われたりせず、自分たちのやり方でサッカーについて話せる場所が必要だと考えた。

    こうして、バイエルン・レッド・レディースの歩みが始まった。彼女たちは、女性だけで構成されるバイエルン唯一の国際サポーターズクラブだと、誇りを持って、そしてもっともな理由で掲げている。当初、シュルムフは会員集めに奔走した。公式ファンクラブに必要な11人に達するため、母親にも入会してもらわなければならなかった。現在は40カ国に300人以上の会員がおり、アメリカでも確かな存在感を示している。

    さまざまな意味で、レッド・レディースはブンデスリーガがアメリカで存在感を高めようとする取り組みを象徴している。

    世界のサッカーにおいて、国内リーグとして最も大きな財力を持つプレミアリーグは圧倒的な存在だ。MLSもこの地域で独自の、拡大を続ける大きなファン層を持つ。ドイツのリーグは注目を集めようと奮闘しているが、新たなテレビ放映契約とバイエルンのスター選手たちの力だけでは限界がある。ファンに、繰り返し足を運びたいと思ってもらう必要がある。そこで役割を果たすのが、レッド・レディースのような草の根のグループだ。既存のファンには居場所を、新たなファンには参加するきっかけを提供する。ブンデスリーガにとって、こうしたコミュニティーを育てることは、アメリカで築いた足がかりを長く続くものにするために欠かせない。

  • 「この勢いを生かしたい」

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    Eibner

    ワールドカップによって、アメリカでのサッカーへの関心が高まったことは間違いない。

    ワールドカップは、米国のサッカーにとって転換点になると見られていた。これを機に誰もがサッカーの魅力に気づくはずだ、というわけだ。しかし実際には、単純すぎる見方だった。リーグによって状況は異なる。ラ・リーガのようにスター選手の力が追い風になるリーグもあれば、MLSのように身近さが強みになるリーグもある。

    ブンデスリーガには、その両方の要素がある。確かに、バイエルン・ミュンヘンは非常に強く、主力の一人であるハリー・ケインはバロンドールを受賞する可能性もある。また、ドイツサッカーの仕組みそのものに対する米国の関心もある。だが何より、タイミングに恵まれた。

    「ワールドカップ後、私たちはその勢いを生かしたいと考えています。夏の間にサッカーへの熱狂が高まるのを見てきました。今、私たちが取り組み、実際に手応えを感じているのは、ワールドカップを見ていたファンを引き込み、その関心をシーズンを通じて続くものに変えることです。理想を言えば、ブンデスリーガを通じてです」。ブンデスリーガの米州担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ロビン・アウスターマンはGOALに語った。

    クラブもその動きを感じ取っていた。

    「私たちは、ワールドカップが大きな出来事となり、関心を確実に加速させると考えていました」と、バイエルン・ミュンヘンの米国戦略担当マネージングディレクター、ディー・クンドラは付け加えた。

    そのため、各クラブは以前から準備を進めていた。バイエルンが初めて米国にオフィスを開設したのは2014年。全くの偶然だが、ドイツがワールドカップで優勝した直後だった。ボルシア・ドルトムントは2024年に米国での常設拠点を設け、その後は全米でプロモーション活動を展開し、ニューヨーク市ではクリエイター文化にも接点を広げてきた。RBライプツィヒはユースサッカー団体「トップ・ボーラー」と提携し、2025年11月には1対1の大会の優勝者をアカデミーの入団テストに招いた。

  • 「それによって、私たちのリーチは格段に広がる」

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    Jan Huebner

    新たなテレビ放映契約により、ブンデスリーガを視聴しやすくなった。

    実現可能な放映契約がなければ、こうしたことはどれも実現しない。プレミアリーグがアメリカに教えたことが一つあるとすれば、サッカーを見られる環境が何よりも重要だということだ。試合を見られなければ、その魅力を知ることもできない。

    その点、ブンデスリーガのアメリカでのテレビ放映契約がワールドカップ直前に満了したのは好都合だった。ESPNとの契約は年間約3000万ドルの価値があったが、全試合が有料視聴の対象で、地上波テレビで見られたのは主にバイエルン・ミュンヘンの試合など、ごく一部に限られていた。これは英語とスペイン語の両方の放送に当てはまる。

    今回、ブンデスリーガはアメリカでの放映権を分けて売ることを選んだ。USAネットワークと映画プラットフォームのファンダンゴは、5シーズンで総額1億ドルを支払い、英語放送の権利を獲得した。両サービスは同じ親会社ヴァーサントの傘下にあり、同社はNBAとNFLの双方で強い存在感を持つ。全試合を何らかの形で視聴できる。30試合以上は通常のケーブルテレビ契約が必要なUSAネットワークで放送され、残りの270試合はファンダンゴで無料視聴できる。

    スペイン語放送の権利は別に売却され、NBCユニバーサル傘下のテレムンドが、今後3年間の全スペイン語放送の権利を年間1000万ドルで獲得した。要するに、ブンデスリーガは2つの契約に分けることで、同じ額を得ている。

    複雑に聞こえるだろうか。だが、これには狙いがある。

    「放送体制が新たな時代に入る中、以前よりはるかに視聴しやすい環境を整えています」とアウスターマンは語った。「実際、アメリカでこれまでにないほど多くの人に届けられるようになります」

    数字も有望だ。ブンデスリーガのスペイン語放送は1試合あたり約30万人に届いている。プレミアリーグをわずかに下回るものの、セリエAを大きく上回る。

    「うれしい驚きです。私たちの取り組みによって、この国でのブンデスリーガに対する見方が変わりつつあると思います」と、テレムンドのスポーツ担当エグゼクティブ・バイスプレジデント兼ストリーミング責任者のホアキン・ドゥロはGOALに語った。

    ワールドカップも、その後押しになったのは確かだ。大会期間中、テレムンドの視聴者数は急増し、スペイン語でのサッカー視聴は英語での視聴にほぼ並んだ。

    「ワールドカップでは、初めて視聴シェアがほぼ50対50になりました。しかも、FOXがリーチできる視聴者数を実際に考えれば、公平な比較ですらありません。FOXは約1億5000万人ですが、私たちは約4500万~5000万人です。ですから、ワールドカップで視聴シェアと視聴率が50%になったことは、私たちにとってなおさら大きな意味があります」とドゥロは付け加えた。

  • 「うわっ、ハリー・ケインだ!」

    Harry Kane 2026/27
    getty

    バイエルンの世界的な存在感が、米国でのブンデスリーガの成長を大きく後押しした

    もちろん、これは今もスターが牽引するビジネスだ。そしてバイエルンには、世界的なスターが数多くそろっている。もともとワールドクラスの選手を擁してきたクラブだが、ロベルト・レヴァンドフスキがバルセロナへ去った後には、埋めるべき穴が生じた。バイエルンは遅ればせながら、1年後にハリー・ケインを獲得して対応した。イングランド代表の主将は、国内サッカーで自身が狙える得点記録のほぼすべてを塗り替え、今年のバロンドール候補の有力選手にも数えられている。

    その存在が、ブンデスリーガの魅力を伝えやすくしている。

    ドゥロは「ワールドカップを通じて人々が知るであろうスーパースター全員にかかっていると思います。『えっ、これがハリー・ケインなのか! 名前は知っていたけど、いったいどこでプレーしているんだ? ああ、ドイツのクラブなのか』となるわけです」と語った。

    バイエルン自身も、トップクラスの選手が米国市場での人気を高めることを理解している。必ずしも米国の視聴者にアピールするために選手を獲得しているわけではないにせよ、だ。

    クンドラは「国際化を進め、新たな市場に進出しようとする中では、スターを重視する文化を生かしていかなければなりません。私たちにも世界屈指のスターが何人もいるからです。ですから、そのような文化を活用することは、私たちにとって非常に重要です」と語った。

    さらに広い視点で見ても、バイエルンはクラブ全体として好調な時期にある。昨年のチャンピオンズリーグ準決勝ではPSGを最後まで苦しめ、今季も優勝候補の一角と見なされるべき存在だ。昨年はブンデスリーガを勝ち点16差で制し、リーグ戦での敗戦はわずか1度だった。確かに、クラブ間の格差を懸念する声はある。それでも、バイエルンの好調が米国でのドイツサッカー人気にプラスとなる傾向があることは間違いない。

  • 話をアメリカ男子代表とクラブの伝統に結びつけて

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    AFP

    ドルトムントの「黄色い壁」は、世界のサッカー界でもひときわ人を引きつける光景の一つだ。

    むしろリーグ側は、バイエルンをブンデスリーガを知ってもらうための入り口と捉えている。リーグ全体を魅力的にしている、さまざまな物語に触れてもらう窓口だ。その一つが、ドイツのトップリーグは昔からアメリカ人選手が育つ場であり続けてきたという事実だ。米国のファンにとっても親しみを感じられる物語である。

    「必ずしも超一流のスターである必要はありません。アメリカにルーツを持つ成長途上の選手でもいいのです。『マリク・ティルマンにとって、レヴァークーゼンでの飛躍のシーズンになるのか。そうか、そうでないか』という話もできます。ルイス・ディアスと同じくらい広く知られるようになるかもしれません。いずれにせよ、それは一つの物語です。ブンデスリーガは歴史上、米国人選手が最も多くプレーしたリーグで、その数は80人を超えています」とアウスターマンは説明した。

    ほかにも伝えるべきことはある。フランクフルト、ドルトムント、レヴァークーゼン、ハンブルクはいずれも輝かしい歴史を持つ、非常に魅力的なクラブだ。ブンデスリーガは今、そうしたクラブの物語をより効果的に伝えようとしている。ジョーブ・ベリンガム、セルー・ギラシ、クリストファー・エンクンクはいずれも優れた才能を持つ選手であり、彼らのクラブには大勢のファンがいる。

    「フランクフルトやドルトムントのファンであるとは、どういうことでしょうか。イエローウォールの何が特別なのでしょうか。なぜスタジアムはいつもあれほど大きな声援に包まれるのでしょうか。私たちが積極的に伝えなければならないのは、そうした物語です。あなたやあなたの友人、米国の人々が、それを当然知っているとは思えません。だからこそ、発信し、ある意味で観客に知ってもらう必要があるのです」とアウスターマンは付け加えた。

    そのために、多くのフォロワーを持つ発信者を起用し、個々のクラブを深く掘り下げている。これは、いわゆる規模の小さいブンデスリーガのクラブを、はるかに幅広い層に紹介してきた「ディスカバー・ア・クラブ」という取り組みの一環だ。

    「米国から1人、メキシコから1人のクリエイターをドイツに派遣しています。彼らはクラブと丸1週間を過ごし、フランクフルトやシャルケなどの物語を、アメリカからの視点でまったく違う形で伝えます。そのコンテンツを放送局に提供し、ソーシャルメディアでも活用しています。そして、その物語はシーズンを通して使えるのです」とアウスターマンは説明した。

    ブンデスリーガのクラブが、他のリーグのクラブよりも国際的な協力に強い関心を持っていることも追い風だ。

    「私たちのクラブはそうした取り組みにとても前向きです。本当に積極的で、自分たちの物語を伝えたいと考えています。ピッチ上では競い合っていますが、国際的な活動、特に米国での活動については、人々がまず選手を、次にクラブを、そしてリーグを追うことを私たちは理解しています。私たちにできることは多いですが、クラブの協力も必要なのです」とアウスターマンは付け加えた。

    それだけではない。ドイツサッカーには、ある種の伝説めいた魅力がある。クラブは比較的持続可能な形で運営され、多額の資金を投じることはめったになく、ファンが所有している。スタジアムの雰囲気は他に類を見ない。ヨーロッパの他のサッカーが企業色を強める一方、ドイツも完璧ではないが、そこには親しみやすい魅力もある。

  • 「我々は本物だ」

    FC Bayern München Visit Oktoberfest 2026
    Getty Images Sport

    バイエルン・ミュンヘンはオクトーバーフェストと歴史的なつながりがあり、その雰囲気をニューヨークに持ち込んだ

    9月18日、バイエルン・ミュンヘンはマンハッタン南部のユニオンスクエアにあるタイムアウト・マーケットを貸し切り、オクトーバーフェストのイベントを開催した。理由はシンプルだ。バイエルンにはウニオン・ベルリンとの試合があり、ミュンヘンで毎年開かれるビールの祭典も始まったばかりだった。クラブはその祭典をアメリカ大陸に持ち込みたかったのだ。

    特に目新しい試みというわけではない。ドイツ文化への関心と酒を楽しみたい人々の多さを反映し、米国では毎年、数百ものオクトーバーフェストが開かれている。ただ、リーグの後押しを受けて開催されることはめったにない。

    「私たちは『ちょっと待てよ。私たちは正真正銘のバイエルン発のブランドだ。ビールのパートナーであるパウラナーは、本場のオクトーバーフェストで提供を認められている六つのビールの一つでもある。一緒に何かをして、本場らしいものにできないか?』と考えたんです」とクンドラは説明した。

    その結果、非常に魅力的なイベントになった。比較的小さな会場に数百人が詰めかけ、マスコットやビールジョッキが並び、大型スクリーンで試合を観戦した。バイエルンはウニオンを7-0で圧倒。ハリー・ケインが2得点、ミカエル・オリーズが3得点を挙げた。戦力均衡を示す試合ではなかったが、サッカーというコンテンツの魅力を示すものではあった。試合終了後には、主催者がビールジョッキを持ち続ける競技を開催。参加者は1リットルのビールが入ったジョッキを、腕をまっすぐ伸ばしたまま、落としたり自分が倒れたりせずに持ち続けなければならない。

    バイエルンの女子チームも存在感を示した。ニューヨーク市とミュンヘンは約6400キロ離れている。それでも、この日の会場ではずっと近くに感じられた。