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Premier League disappointing signings GXGOAL

マウント、カイセド、ファティ…今季プレミアリーグで期待を裏切った新戦力ランキング

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2022-23シーズンの2回の移籍市場で、プレミアリーグのクラブは前例のない記録的な支出として、新加入選手の獲得に50億ポンド(約9,858億円)という大金を費やし、この行き過ぎの傾向は昨年の夏まで続いた。世界最大の会計事務所であるデロイトによると、最終的に9月1日に夏の移籍市場が閉まるまでに23億6,000万ドル(約4.654億円)が支出され、それまでの記録を4億4,000万ポンド(約867億円)も上回ったのだ。このため、イングランドのトップリーグの未来は持続可能ではないのではないかという懸念が起こった。

1月、エヴァートンとノッティンガム・フォレストの違反で収益性と持続可能性に関する規則(PSR)が注目されることとなり、両クラブは最終的に勝ち点剥奪の処分を受けた。プレミアリーグの他のクラブは財布のひもを固くするようになり、レンタル移籍やフリーでの移籍が多発。それでも、さらに9,600万ポンド(約189億円)が冬の移籍市場で費やされ、シーズン全体の支出額は再び30億ポンド(約5,917億円)を超えた。だが、シーズン終了間近となった現在、多くのチームが選手獲得の戦略が間違っていたことを後悔しているかもしれない。

巨額の移籍をまったく正当化できていない選手がいる一方、そもそもその獲得に時間と手間をかける価値はなかったのではないかと思える選手もいる。そうした選手たちは、今後もプレミアリーグの舞台で実力を証明するチャンスを得られないかもしれない。

そこで、以下に、2023-24シーズンで最もガッカリな契約だった21人をランキングしてみよう。まずはマージーサイドで全力を出すことに苦労した、あのオランダ代表だ…

  • Gravenberch-LiverpoolGetty

    21ライアン・フラーフェンベルフ:リヴァプール【3,400万ポンド(約67億円)】

    ジュード・ベリンガム獲得競争でレアル・マドリーに敗れたリヴァプールは、バイエルン・ミュンヘンに移籍したばかりのシーズンでイライラを募らせ、出直し先を探していたライアン・フラーフェンベルフに標的を移した。レッズは、アリアンツ・アリーナで失敗したこのオランダ代表に3,400万ポンド(約67億円)を投資して5年契約を結び、ユルゲン・クロップ監督はフラーフェンベルフのことを、「類まれな才能の持ち主」と評していた。

    今シーズン、フラーフェンベルフはアンフィールドでその才能の片鱗を見せ、フル回転したときは瞬く間に守備から攻撃に移ることができているが、先発したのはリーグ戦12試合だけ。中盤のポジション争いではアレクシス・マクアリスター、ドミニク・ソボスライ、カーティス・ジョーンズ、遠藤航に後れを取った。

    報道によると、リヴァプールはトルコのチームが興味を示しているフラーフェンベルフで損失を埋めようとしているらしいが、それは間違いだろう。彼はまだ22歳で、クロップ監督の後任のアルネ・スロットのもとで成長できる可能性がある。ただし、これまででベリンガムの代わりにはならないことが証明されたことは否定できず、アンフィールドでのキャリアを好転させるには、安定したパフォーマンスが出来ることを証明しなければならないだろう。

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  • Christopher Nkunku Chelsea 2023-24Getty Images

    20クリストファー・エンクンク:チェルシー【5,200万ポンド(約102億円)】

    今シーズンのクリストファー・エンクンクは、ケガのためチェルシーの39試合に出場できなかった。そのためスタンフォード・ブリッジでの彼の12カ月を公正に判断することは難しい。だが、ブルーズはケガがちなことはRBライプツィヒ時代から明らかだったのを無視して、5,200万ポンド(約102億円)の取引でこのフランス代表FWと6年契約を結んだのだった。

    チェルシーでプレーした13試合では、エンクンクは総じて非常に良いパフォーマンスをしたが、わずか3得点でアシストなしの成績は、ベストコンディションでピッチに立てていないことを示している。エンクンクは破壊的で機敏なフォワードであり、ライプツィヒ時代には相手DFを恐れさせていた。ウイングとしても背番号9としても、あるいは正統派の背番号10としてでもマルチにプレーできる。プレシーズンには、同じく昨年夏に加入したニコラス・ジャクソンと強力なコンビを築ける兆しも見せていた。だが、チェルシーには毎週成果をあげてくれる信頼できるストライカーが必要なのである。

    直近の体調不良の後なかなかピッチに戻れなかったことは重要であり、ライプツィヒでそうであったような、カリスマ的存在にブルーズではなれそうもないようである。

  • Danjuma-EvertonGetty

    19アルノー・ダンジュマ:エヴァートン(レンタル)

    2023年1月、ビジャレアルからレンタルでトッテナムに加入するために、アルノー・ダンジュマがエヴァートンを蹴ったことは有名な話だが、北部ロンドンでは見事に失敗した。トフィーズは、2023-24シーズンにこのオランダ代表FWをレンタルで獲得し、埋め合わせのチャンスを与えた。だが、ショーン・ダイシ監督にとって都合のいい選手以上にはなれず、降格争いからの脱出に際して真の信頼を得ることはできないでいる。

    ダンジュマはボーンマスにも在籍したことがあるが、プレミアリーグに向いているようには見えず、エヴァートンが彼と完全移籍の契約をしようとするなら、大いなる驚きだろう。ダンジュマのピークが2021-22シーズンのビジャレアルであったことは明らかで、まさかのチャンピオンズリーグ準決勝進出を果たしたが、もはや、ピッチの最前線で決定的な仕事をする能力があるようには見えない。

  • Andrey Santos Nottingham Forest 2023Getty

    18アンドレイ・サントス:ノッティンガム・フォレスト(レンタル)

    昨年の夏、ついにヴァスコ・ダ・ガマからアンドレイ・サントスがチェルシーに加入した時、西部ロンドンは大興奮に包まれた。サントスは10代ながら、チームのブラジルのセリエA復帰において主要な役割を果たしていたのである。当初は同じくブラジル代表のカゼミーロと比較され、マウリシオ・ポチェッティーノ監督のチームでリーダー的な役割を果たすとすら予想されていた。マルチにプレーでき、ボックス・トゥ・ボックスの運動量豊富なMFとして、突然決定的なゴールを決めることもできる選手とみなされていたのだ。

    ところが開幕が近づき、モイセス・カイセドやロメオ・ラビアが加入すると、チェルシーは、サントスの成長にはレンタルに出すのがよいと判断し、1シーズン契約でノッティンガム・フォレストに在籍することとなった。しかしながら、この移籍は散々な結果となり、たった2試合しかプレーできないまま、1月に呼び戻された。

    シティ・グラウンドではスティーヴ・クーパー前監督やヌーノ・エスピーリト・サント現監督の役に立つことができず、シーズン後半にストラスブールへレンタル移籍した際には成長した姿を見せたものの、プレミアリーグで活躍できかどうかは依然として未知数である。

  • Trafford-BurnleyGetty

    17ジェームス・トラフォード:バーンリー【1,900万ポンド(約37億円)】

    GKジェームス・トラフォードは、2023年のU21欧州選手権の全試合を無失点で乗り切り、イングランド代表の優勝にきわめて重要な役割を果たした。それにより、バーンリーは彼の移籍には1,900万ポンド(約37億円)の価値があると判断し、マンチェスター・シティから完全移籍でトラフォードを獲得したのであった。

    だが、ご存じのとおり、22歳の若者はプレミアリーグの厳しい要求に応える準備ができていなかった。バーンリーのヴァンサン・コンパニ監督は3月まで待って、トラフォードを控えのGKアリヤネット・ムリッチと交代させたが、その時すでにチームの降格はほぼ決まってしまっていた。

    もっと早くムリッチを起用していたところでバーンリーが救われたかどうかはわからないが、トラフォードのフィードの拙さとフィジカルの弱さのせいで貴重な勝ち点を失ったことは確かである。かつては将来のイングランド代表の背番号1とみなされていたが、今やプレミアリーグでの最初のチャンスをつかみ損ねて失った評判を取り戻すには、長い道のりが待ち構えている。

  • Sangare-Nottingham-ForestGetty

    16イブラヒム・サンガレ:ノッティンガム・フォレスト【3,000万ポンド(約59億円)】

    昨年の今ごろ、イブラヒム・サンガレはヨーロッパで最も引く手あまたの選手のひとりだった。マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、チェルシーなどが、このコートジボワール代表に興味を持っているとされ、その争奪戦に勝ったのがノッティンガム・フォレスト。PSVから3,000万ポンド(約59億円)という大金で獲得した時には大いに驚かれたものだった。

    フォレストにとって不運にも、その後サンガレの獲得が完全に大金の無駄遣いだったことが判明した。26歳のサンガレはプレミアリーグのスピードにまったくついていけず、ボールを保持しすぎて簡単に奪われてしまい、徐々にヌーノ監督のチームで重要な役を任されなくなっていった。

    サンガレはAFCON(アフリカ・ネイションズカップ)を優勝したコートジボワール代表の一員であったが、ケガに見舞われた。プレシーズン後にはまったく違う選手になれるかもしれないが、当初はクーパー前監督に見いだされた自身の価値をヌーノ監督に示せるかどうかは未知数である。

  • Robert Sanchez Chelsea 2023-24Getty

    15ロベルト・サンチェス:チェルシー【2,500万ポンド(約49億円)】

    チェルシーが2,500万ポンド(約49億円)でロベルト・サンチェスと契約した時、眉をひそめた人は少なくなかった。南海岸での最後のシーズンで、サンチェスはジェイソン・スティールにブライトンの正GKの座を奪われていたのである。それでもブルーズは、サンチェスをケパ・アリサバラガや、昨年の夏サウジアラビアへ行ってしまったエドゥアール・メンディよりは上だろうと期待していた。しかし、シーズン前半のサンチェスは、チームを去った2人と同じくらいミスの多いGKであった。

    シーズン後半は、体調の問題がサンチェスの悩みを悪化させ、マウリシオ・ポチェッティーノ監督のもとでチェルシーの状態が徐々に改善していく中、ジョルジェ・ペトロヴィッチが単なる代役以上の存在であることを示していった。この段階で、サンチェスが背番号1のユニフォームを取り戻せるようになるのは難しく、スタンフォード・ブリッジでのデビューシーズンに苦しんだ後、ユーロ2024のスペイン代表の座を逃すのもほぼ確実である。

  • Mahmoud Dahoud_Brighton_20230812(C)Getty Images

    14マフムド・ダフード:ブライトン(フリー)

    「彼がわがチームのトップ選手となることを確信している」と、マフムド・ダフードがフリーで移籍してきた時、ブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督は言った。

    「マフムドが加入してくれて興奮している。サッスオーロの監督だったときも彼を欲しいと思っていた」

    ボルシア・ドルトムントは、2022-23シーズンをケガにたたられたダフードとの契約を更新しないことにしたが、ドイツで6年間大いに活躍したダフードはブライトンにとって大きな資産となる才能を持っていると思われていた。しかし、デ・ゼルビ監督の興奮はすぐさまフラストレーションに変わり、ダフードがアメックス・スタジアムのチームに合わないことが明らかになっていった。

    ダフードはブライトンでの最初の14試合で、ドルトムントのチームであれほど重要な選手となった司令塔としての才能をまったく発揮できず。チームでの居場所を失い、1月にシュトゥットガルトにレンタル移籍することとなった。ドイツを出た初日から水を得た魚のように見えたダフードがブンデスリーガで活躍できれば、シュトゥットガルトとの契約には完全移籍のオプションもある。

  • Matt TurnerGetty

    13マット・ターナー:ノッティンガム・フォレスト【1,000万ポンド(約19億円)】

    マット・ターナーは、2022-23シーズン中ずっとアーロン・ラムズデールの後塵を拝した後、アーセナルからフォレストに飛びこんだが、それ以降プレミアリーグのトップクラスのGKであることを証明できないでいる。アメリカ代表GKは今シーズン、2度先発の座を奪われており、当初はオディッセアス・ヴラホディモスだったが最近はマッツ・セルスがフォレストのゴールを守っている。

    ターナーが正GKだった時のフォレストの守備は今よりはるかに弱そうに見えていたため、今やセルスからその座を奪えるようには見えない。29歳のターナーはペナルティーエリア内を支配することができず、キックミスでチームを余計なプレッシャーにさらすことがある。そのため今や彼の将来は宙ぶらりんな状態にある。

    それでもターナーは、コパ・アメリカ2024に向かうアメリカ代表の正GKであるが、クラブレベルで長期にゴールを守り続けるためには移籍先を探す必要があるかもしれない。ただし、試合中にたびたびある基本的なミスをなくすために一層の努力が必要だろう。

  • Nicolò Zaniolo Aston Villa 2024Getty Images

    12ニコロ・ザニオーロ:アストン・ヴィラ(レンタル)

    今シーズンのアストン・ヴィラは、昨年夏の移籍で加入したユーリ・ティーレマンス、パウ・トレス、ムサ・ディアビなどが大活躍し、最終的にトップ4入りを果たす勢いで、あらゆる予想を上回った。しかしながら、サポーターたちを最も興奮させた契約は実質的に何の貢献もしておらず、ヴィラの求める規準に合わなかったニコロ・ザニオーロは、ヴィラが「条件付き強制買取条項」を発動させて、ガラタサライに戻ることになりそうである。

    ローマではスターだったザニオーロは、かつては同世代で最も将来有望な選手のひとりとみなされていたが、ヴィラ・パークでは、ウナイ・エメリ監督の先発イレブンに定着することができないでいる。試合に出れば、ユース時代の予測不能でテクニックに優れた姿の一端を見せることができるが、プレミアリーグの激しさに対応できていない。

    24歳のザニオーロにはまだキャリアを軌道に戻すだけの若さがあるが、トルコのスーパーリーグから完全に抜け出し、将来はイタリア代表の主力となる希望を持っているのなら、もっと覇気と覚悟を見せる必要があるだろう。

  • Matheus Nunes Man City 2023-24Getty

    11マテウス・ヌネス:マンチェスター・シティ【5,300万ポンド(約104億円)】

    ペップ・グアルディオラ監督は、ウルブスから5,300万ポンド(約104億円)でマンチェスター・シティに移籍したマテウス・ヌネスのことを「世界最高の選手のひとり」と評した。そしてそれはその時、ポルトガル代表のこのMFに緊張を与え、不必要なプレッシャーをかけたのだった。当然ながらヌネスは監督のこの言葉に見合う活躍ができず、プレミアリーグで先発したのはわずか7試合。そのうちの5試合は対戦相手が下位6チームとの対戦だった。

    マンチェスター・Cの試合に出た数は少ないながら、ヌネスが場違いに見えたことはなかった。相変わらず、見事なボール運びで最も狭いエリアで仕事の出来る選手であるが、ベルナルド・シウバのようなマンチェスター・Cの先発に選ばれるテクニシャンな選手に比べて、簡単にポゼッションを放棄してしまうところがある。選択肢の中で簡単にできることを選ぶのではなく、リスクの高いパスを選択してしまうことが度々あるのだ。

    グアルディオラ監督は、マンチェスター・Cが楽に試合をできる時にのみヌネスを起用しており、ヌネスが監督から完全な信頼を得ていないことは明らかだ。まだ25歳の若者には未来があり、全盛期が来るのはこれからであるが、来シーズンの開幕までにマンチェスター・C独特の戦術哲学やハードワークを完全に把握し、ボール・ポゼッションを改善する必要があるだろう。

  • Armando Broja - Fulham 2024Getty

    10アルマンド・ブロヤ:フラム(レンタル)

    チェルシーは唯一の生粋の背番号9であるアルマンド・ブロヤとともにシーズンを開始したが、ブロヤは8月から1月にかけて不調でコンディション調整に苦労し、プレミアリーグの13試合で1得点しかできなかった。それでもポチェッティーノ監督はこのアルバニア代表には「素晴らしいポテンシャルがある」と主張し、冬の移籍市場でフラムとウルブスが熾烈な獲得競争を繰り広げ、最終的にブルーズの西部ロンドンのライバルが短期間のレンタル移籍でブロヤを獲得することとなった。

    たが、ブロヤの運命はフラムでも改善しなかった。実際、加入してすぐにロドリゴ・ムニスやラウル・ヒメネスに次ぐ第3の男に甘んじなければならなくなった。このまま、フラムでは1ゴールも挙げることなくシーズンを終えそうである。

    チェルシーとの契約はまだ2028年まであるが、報道によるとこの夏、完全移籍で放出されることになりそうだ。これまでプレミアリーグでコンスタントにゴールを決めたりチャンスを作りだせたりするところを見せておらず、22歳のブロヤはレギュラーで試合に出られる場所を求めて外国を目指す必要があるかもしれない。

  • Reyna Nottingham ForestGetty

    9ジョバンニ・レイナ:ノッティンガム・フォレスト(レンタル)

    フォレストは1月に、もう一人のアメリカ代表ジョバンニ・レイナと契約した。ボルシア・ドルトムントのエディン・テルジッチ監督と不仲になってしまっていたレイナにとっては、他に選択肢がなかった。しかし、21歳のレイナはシティ・グラウンドで自身のリズムを取り戻すことができず、ヌーノ監督のもとで、ドルトムントの頃よりさらに出場時間が短くなってしまっている。

    フォレスト加入から5カ月間で先発したのは2試合のみ。実際、プレミアリーグで有意義なパフォーマンスをすることはできていない。それでも、2対2の引き分けとなったウルブス戦では、コーナーキックをアシストしてモーガン・ギブス=ホワイトの得点につなげ、プレミアリーグ残留に向けて邁進するチームに貢献した。

    ヌーノ監督はチェルシー戦に、体調万全のレイナを帯同させなかった。フォレストにはレイナを完全移籍させる気がないと見ていいだろう。それでもレイナは母国では人気が高く、素晴らしい才能の持ち主でもある。ただ、トップレベルのサッカーでやっていけるかどうかについては、まだ判断が大いに分かれている。

  • AmrabatGetty Images

    8ソフィアン・アムラバト:マンチェスター・ユナイテッド(レンタル)

    ほとんどのサッカーファンがソフィアン・アムラバトを知ったのは、2022年ワールドカップでのことだった。アムラバトはノーマークだったモロッコ代表を準決勝進出にまで導き、全力疾走でのリカバリーやキリアン・エンバペへのタックルで名をはせた。このため、マンチェスター・Uのサポーターは、フィオレンティーナからレンタル移籍で加入したアムラバトこそ、長年待ち望んだ守備的MFにちがいないと期待していた。ところが、エリック・テン・ハーグ監督のチームでは、ワールドカップの時と同じようなエネルギッシュな姿を見せられないでいる。

    事実、アムラバトのプレーは守備に偏りがちで、レギュラーの座を獲得できていない。主力の相次ぐケガで、27歳のアムラバトがさまざまな役割を負わなければならなかったことも不運だったのは確かだ。だが、もはや90分フル出場するだけの体力、もしくは情熱がないようにも見える。

    ここ数戦のパフォーマンスは悪くないが、アムラバトがフィオレンティーナに戻りたいと言えば、マンチェスター・Uは反対しないだろう。アムラバトは、ここ数年のマンチェスター・Uの選手獲得戦略がいかに無秩序であったかを示す、パニック買いの一例としか記憶されないことになるだろう。

  • Beto-EvertonGetty

    7ベト:エヴァートン(3,000万ポンド(約59億円))

    エヴァートンは、シーズン開幕から3試合で1得点もできずに3連敗し、ダイシ監督は2022-23シーズンにセリエAの34試合出場し10得点を挙げたウディネーゼのFWベト獲得を希望した。この数字は、順位表下位に位置するウディネーゼというチームにとっては素晴らしいものであったが、トフィーズことエヴァ―トンが3,000万ポンド(約59億円)ものカネをかけて獲得したことはギャンブル気味に思われており、実際それは見事に裏目に出たのだった。

    エヴァートンに来たベトは29試合で3得点しか挙げられず、合計8回も「絶好のチャンス」を逃している。決定力が彼の強みでなかったことは明らかだ。26歳のベトはフィジカルが強く、ボールがないところでの動きも悪くないが、プレミアリーグで成功するには不器用であり、前線でターゲットになるための技術が足りない。

    奇跡でも起こらないかぎり、ダイシ監督がしばしばケガに苦しむドミニク・キャルバート=ルーウィンの代役でしかないベトをエヴァートンに残そうとすることはないだろう。移籍市場が開幕し次第、声をかけてくれそうなチームを探すことになる可能性が高い。

  • onana(C)Getty Images

    6アンドレ・オナナ:マンチェスター・ユナイテッド【4,800万ポンド(約94億円)】

    マンチェスター・Uは、昨年6月のオールド・トラッフォードでの契約満了を前に、ここ4年で大きく調子を落としていたダビド・デ・ヘアよりも優秀な選手を渇望しており、2023年にインテルをチャンピオンズリーグ決勝に導いたアンドレ・オナナは、まさに理想的な選手であるように思われた。もともとテン・ハーグ監督はアヤックスでオナナと一緒でもあった。マンチェスター・Uは、3位という不本意な順位でプレミアリーグを終えた後、マンチェスター・シティやアーセナルとの差を埋めるべく、後ろからプレーを展開する能力で知られたGKと契約できたと評判だった。

    ところがオナナは、オールド・トラッフォードでの最初のシーズンで、4,800万ポンド(約94億円)のGKとしての役割を果たせなかった。実際、多くのサポーターは、カメルーン代表のオナナがゴール前でばたばたする姿を見て、デ・ヘアに戻ってきてほしいと大いに思ったことだろう。しばしばマンチェスター・Uの守備陣がかわされた後、ごく簡単なシュートがオナナのグローブの下をすり抜けたり、オナナが根の生えたようにゴールラインに立ちすくんだりすることがあったのだった。

    実際には、今シーズンのプレミアリーグで、オナナは他のGKの誰よりも多くのシュートを止めている。だがそれは、マンチェスター・Uがリーグで2番目に多くのシュートを浴びているからである。被シュート数最多のシェフィールド・Uのすぐ上にいるのだ。誤解を招くような数値を言い訳にすることはできない。基本的な手さばきやポジショニングにおいて、求められる水準に達してはいなかった。

  • Ansu Fati BrightonGetty

    5アンス・ファティ:ブライトン(レンタル)

    今となっては遠い昔のことのように思われるが、アンス・ファティはかつて、バルセロナにおけるリオネル・メッシの後継者とみなされていた。スペイン代表のファティは、2019年に16歳でカンプ・ノウのシニアの試合に大抜擢され、ストリートのサッカー選手のような目がくらむようなドリブル技術を披露していた。だが、ほどなく相次ぐケガに見舞われ、トップチームでレギュラーとなることはできなかった。

    ラミン・ヤマルが出現するとアンスは陰に押しやられ、昨年の夏、ブライトンが彼の不確実な将来に期待をかけ、高額なレンタル移籍をもちかけたのだった。アンスはブライトンでの最初のプレミアリーグの5試合で2得点を挙げたが、彼の体格ではイングランドのサッカーで求められるフィジカルな強さに耐えられそうにないことが明らかになった。

    ブライトンが大躍進していた時期も、アンスはふくらはぎのケガのため蚊帳の外だった。2月に復帰した後も、デ・ゼルビ監督の先発メンバーに戻ることはかなわなかった。ブライトンの監督は、アンスのコンディションに大きな懸念を抱き続けている。21歳のアンスがアメックス・スタジアムでプレーした時間は短く、エリート選手になれるかどうかについて懐疑的な見方が増える一方である。バルサに戻っても活躍できるかどうかは難しいところだ。

  • Mason-Mount(C)GettyImages

    4メイソン・マウント:マンチェスター・ユナイテッド【5,500万ポンド(約108億円)】

    マンチェスター・Uにメイソン・マウントは必要ない。昨年6月にチェルシーから5,500万ポンド(約108億円)で移籍してきた際の論争に終止符が打たれ、第三者の大半はそう確信している。

    マウントの絶頂期は、チェルシーで背番号10の役割を果たしていた時であった。マスコミに取り巻かれ、ボールを自由自在に操っていた。だが、オールド・トラッフォードではブルーノ・フェルナンデスが同じ役割を果たしており、予想どおりテン・ハーグ監督は2人を同時にチームで機能させる方法を見つけることが出来ていない。

    テン・ハーグ監督はチェルシーで最悪のシーズンを過ごした後でマウントを移籍させたが、マウントも同じようにマンチェスター・Uですっかり自信を失っているように見える。小さなケガに悩まされ続け、これまでプレミアリーグでの出場は14試合のみであるが、それらの試合でもほとんど存在感のないプレーしかできていない。

    こんなマウントが在籍していたのでは、マンチェスター・Uが首位に返り咲くことは出来そうもない。25歳のマウントはサッカーへの集中力や情熱を失っているように見え、すでに対処しなければならないことが山のようにあるクラブに、新たな問題を作りだしたにすぎない。

  • Kalvin Phillips West Ham 2023-24Getty

    3カルバン・フィリップス:ウェストハム(レンタル)

    マンチェスター・シティでのフィリップスの最初のシーズンは、歴史的3冠達成チームにいた割には地味なものだった。イングランド代表フィリップスは、そうしたタイトル獲得には大して貢献しておらず、カタールのワールドカップから体重過多で戻ってきたことを大っぴらに批判したグアルディオラ監督を納得させることはできなかった。

    1月、ウェストハムがフィリップスにエティハド・スタジアムでの悪夢からの逃げ道を提供したが、このレンタル移籍は28歳のフィリップスを変えることはできなかった。ウェストハムでのキャリアは、ボーンマス戦とマンチェスター・ユナイテッド戦で失点につながる大きなミスから始まり、その後2対0で敗れたノッティンガム・フォレストでは退場処分を受けてしまった。ほどなくモイーズ監督の信頼を失い、先発メンバーから外れることとなる。

    フィリップスはふくらはぎのケガのため早々にマンチェスター・Cに戻ったが、この夏グアルディオラ監督がフィリップスを完全移籍で手放すつもりでいることは確実だ。もはやフィリップスは、2022年にリーズ・ユナイテッドからマンチェスター・Cに加入してきた当初のレベルから遠ざかってしまっている。そのため、ユーロに出場できないだろうことはほぼ確実で、今後イングランド代表に戻るためには、完璧に自分を改造する必要があるだろう。

  • Moises CaicedoGetty

    2モイセス・カイセド:チェルシー【1億1,500万ポンド(約226億円)】

    チェルシーは、ブライトンからモイセス・カイセドを1億1,500万ポンド(約226億円)という驚愕の額を拒否したリヴァプールとの争いに勝ち、イングランドの移籍記録を更新する高値で獲得した。エクアドル代表のカイセドは、アメックス・スタジアムでの2年間でセンセーショナルを巻き起こしており、ブライトンが身に余る額を要求したのはそのためだったが、守備的ミッドフィルダーにそれほどの大金が投資されるのは異例のことである。

    ブルーズは、真に試合の流れを変えられる即戦力としてのカイセドを必要としていたが、カイセドは重すぎる期待に応えられなかった。ブライトンでは常に先頭に立ってタックルやインターセプトを行っていたが、チェルシーではその時ほど効果的に相手のプレーを切ることができず、試合の中心にいた頃の落ち着きを失っているように見えた。

    カイセドの名誉のために言えば、カイセドはシーズン終盤に強く、母国で暴力行為が頻発し、家族の身の安全を心配せざるを得ない間もプロとしてプレーし続けなければならなかった。それを思えば、本当にまだ22歳なのかと思う。だが、あの高額移籍から逃れることは出来ず、現時点ではカイセドは大きな失敗だったとみなさざるを得ない。

  • Sandro-Tonali(C)GettyImages

    1サンドロ・トナーリ:ニューカッスル【6,000万ポンド(約118億円)】

    昨年の夏、ACミランから6,000万ポンド(約118億円)で移籍したサンドロ・トナーリは、ニューカッスル史上最高額での契約だったが、払い過ぎだとは思われなかった。トナーリはサン・シーロ時代、イタリアで最高の司令塔のひとりであるという地位を盤石にしており、チャンピオンズリーグ出場を決めたニューカッスルに、まさに必要な買い物であったのだ。

    あるいは少なくとも、ニューカッスルがいつもどおり勤勉にプレーすることができていれば、トナーリも活躍できたかもしれない。トナーリはデビュー戦となったアストン・ヴィラ戦で見事な得点を決め、たちまちタインサイドに馴染んでいった。ところが10月、ミラン時代の賭博規則違反により10カ月の出場停止処分を受けてしまったのである。

    この処分は、夏の予算の大半をギャンブル依存症に苦しむ選手のために使ってしまったニューカッスルを大いに揺さぶった。8月には再びプレーできるようになるが、すでにチームに与えたダメージは大きく、中盤での結束を欠いたニューカッスルはチャンピオンズリーグを敗退し、またしても優勝のチャンスを逃したのだった。