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omiya(C)Rintaro Asano

懐かしい悔しさと楽しさ…屈辱のさいたまダービー敗戦が大宮の力になる「こういう試合をもっと」

本拠地でのさいたまダービーで負けた。ゴール裏はブーイングだった。もうこんな思いはしたくない。それでも、選手たちは「楽しかった」「こういう試合をもっと」と口にした。9年ぶりの公式戦での対決で、大宮が嚙みしめたのは悔しさだけではないはずだ。

■9年ぶりのダービー、街に満ち溢れた熱

古巣対戦となったMF杉本健勇の言葉はシンプルだった。

「負けっす。たらればですし、終わってからだったら何とでも言える」

勝利必須のダービーが、この日はいつにも増して特別なものになった。

同じさいたま市内のクラブだが、かたやJ1、かたやJ2。神さまのいたずらなのか、リーグ戦では顔を合わせないライバル同士が、天皇杯でぶつかった。

2017年に大宮がJ2に降格してからは、公式戦では対戦してこなかった。この日は9年ぶりのさいたまダービーということもあり、街がにぎわった。J3からはい上がってきた自分たちの力を証明しようと、大宮は試合に向けて特設サイトを作り、大宮駅前ではスタッフたちが声をからして、熱を醸成した。

だからこそ、勝ちたかった。

「きょう負けたのは本当に悔しい。街全体が待ちに待ったという感じだったので、勝ちたかったですけど、力が及ばなかった」。浦和の下部組織出身の大宮DF茂木力也は唇をかんだ。

拮抗した展開で0-0のまま後半に突入したなか、短時間での2失点が痛かった。60分にCKからヘディング弾を許すと、3分後には右サイドからの折り返しをFW肥田野蓮治に決められた。浦和の策にハマった形だ。

「1発勝負の天皇杯で相手が浦和ということで、もっと戦い方はしたたかにというか、賢くできたと思います。僕たちがプレッシャーに行ったら蹴られて、裏を取られてというのが相手の狙いだったと思いますし、セカンドボールもプレスに行っているのになかなか拾えないことが続いた」と、杉本は悔やむ。

しかし転んでもタダでは起きないのが大宮だ。64分に生え抜きのMF小林柚希が茂木からのクロスをダイレクトシュートで仕留めた。79分にはFWオナイウ阿道に裏抜けから得点されるも、82分に途中出場のMF泉柊椰がボックス内に侵入して1点差に迫った。

大宮は最後まで粘り強く戦ったが、2-3で敗戦。選手たちは肩を落とした。プライドを懸けた戦いに敗れ、スタジアムには浦和サポーターによる「J2大宮!」の屈辱的なコールが響いた。

杉本は「ファン・サポーターの人がたくさん来てくれて、期待してくれた試合だったと思うので、本当に申し訳ないです。悔しい気持ちで帰らせてしまった」と深く頭を下げた。決定機もあっただけに、「俺のせいっす。ぜんぶ俺のせいでいいです」ともつぶやいた。

  • sugimoto(C)Rintaro Asano

    ■屈辱の敗戦も「やっぱり楽しかった」

    大宮にとってのさいたまダービーの戦績は9勝7分20敗となった。どの試合も、忘れられない思い出だろう。

    ただ……、9年ぶりの敗戦はこれまで経験してきた悔しさとは少し違ったものだったかもしれない。杉本の言葉には、この熱気の中で戦えた特別な感情もにじんでいた 。

    「本当に悔しかったし、もっとこうできたなとか終わってから思うんですけど…、でもやっぱり楽しかった」

    悔しさと同時に、楽しさも嚙みしめていたのは杉本だけじゃない。

    下部組織から大宮一筋で育った18歳のDF木寺優直は「まだまだ足りないところだらけ、というのが一番の印象です」と課題を感じながらも、憧れの舞台に立てた喜びを感じていた。

    「小学生のころ茨田陽生選手が決めた試合(※)を自分はスタンドで見ていました。そこに自分が立っていることに幸せを感じました」

    「J1の相手と戦うのはレベルが高くて楽しい。練習試合も含め、毎試合いい経験になっています。壁にぶち当たることも多いですけど、もっと、もっと成長した姿になって再戦したい」

    また、木寺と同じく18歳の小林もJ1相手にゴールできた経験を自信に変えていた。

    「相手のレベルは関係ないなって思えた。(大事なのは)自分だなって」

    「正直、最初は緊張というか慣れていくのに精一杯でしたが、後半は落ち着く時間も増えた。そこから試合の雰囲気もあって、バチバチやっている楽しさを感じました」

    ※2017年4月30日の明治安田生命J1リーグ第9節浦和戦・NACK。大宮は茨田の得点で1-0の勝利を収め、リーグ戦初勝利を挙げた。

  • kobayashi yuzuki(C)Rintaro Asano

    ■生え抜きにも大きな経験「さいたまダービーは特別」

    大宮が最後にJ1で戦った2017年時は小学生だった二人にとっても、この試合の意味は大きい。

    「さいたまダービーは特別なもので、絶対に負けられない」(小林)とアカデミー時代から叩き込まれてきたなか、街のにぎわいや試合の重みといった“さいたまダービーの熱気”を当事者として初めて体験できた。

    ダービーをスタンドから見ていた小学生は、その熱気をピッチで経験する選手になった。悔しさも、強敵と戦う楽しさも、この舞台に再び立つための経験として刻まれた。

    杉本は「この雰囲気でできるのは最高だし、こういう試合をもっと、もっと僕らもしていきたい。そのために残りの試合を1試合、1試合コツコツとみんなでやって、(J1復帰を)つかむしかない。みんなで一つになってやっていきたい」と、1年後のさいたまダービー実現を目指す。

    取材・文・写真=浅野凜太郎

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