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moriyasu(C)Getty Images

なぜ「経験の浅い選手」を45分で代えたのか。森保監督の采配に見えた“半年ジャパン”のジレンマ

試合後に残ったのは、どこかモヤモヤとした感情だった。森保一監督は「経験の浅い選手」を中心に先発させるも、ハーフタイムにはその多くを交代。後半はW杯メンバーを中心に戦い、劇的な逆転勝利を収めた。若手の成長と目の前の勝利――。その45分間には、残り半年となった森保ジャパンが抱える難しいジレンマが見え隠れした。

■試合後に感じたモヤモヤ

試合終了間際の劇的PK弾で逆転した。しかし“気持ちのいい”勝利ではなかった。

MF熊坂光希とDF渡辺剛、そしてDF鈴木淳之介までもが負傷して、病院に直行したこと。ベネズエラの監督が不満を漏らしたように、ベネズエラ側がPKを主張する際どい場面があったことや、勝敗を分けたPKのVARに怒りをあらわにしたベネズエラの選手たちの態度が尾を引いたのかもしれない。残った感情はモヤモヤだ。

そして一番の気がかりは、森保監督の采配だった。

指揮官は試合前から「経験の浅い選手」を起用すると明言して実行に移したが、ハーフタイムには鎌田大地とともに、ここまで代表キャップ5以下だったGK小久保玲央ブライアン、MF齋藤俊輔、MF佐藤龍之介、FW後藤啓介の経験の浅い4人も交代となった。決して悪いパフォーマンスではなかったにもかかわらず。

代わって投入されたW杯メンバーの質は高く、格の違いを見せつけた。攻撃のテンポは向上し、FW上田綺世が2得点を奪った。だが、これで良かったのか。0-0の状況で「経験の浅い選手」に踏ん張らせることで、さらなる成長が見込めたのではないか。

もちろん「親善試合では大きなポイントになりませんが、FIFAランクを上げるためにも勝ちにこだわっていく。勝ち癖をつけていくところを、試合前のミーティングで選手たちに伝えました」(森保監督)と意味ある白星だった。

しかし勝利が第一ならば、それこそスタートからコアメンバー中心に組むべきだったのでは…。『なぜ指揮官は前半の若手組を後半で大幅に入れ替えたのか』というモヤモヤの裏で、“半年ジャパン”の抱えるジレンマが見え隠れしていた。

  • sato(C)Getty Images

    ■なぜ若手を「前半」に送り出したのか

    ベネズエラ戦後に森保監督は「プロの世界ですし、経験だけとは簡単に言えませんが」とした上で、前半の若手組起用に至った経緯を説明した。

    「経験豊富な選手たちが基本的に出てから、(若手が)交代で出てきて力を示してポジションを奪っていくことがプロの世界では通常のこと。しかし勝っているからといって若手を出すよりも、より厳しい前半からのプレッシャーとインテンシティのなかで経験を積んでもらって、成長してほしいという意図で、スタートで出しています」

    3-0で投入されるよりも、0-0でピッチに立つほうがより実戦的だ。指揮官は本番に近い状況下で何ができるのかを見ていた。さらに森保監督はW杯を戦ったコアメンバーとの化学反応も期待していた。

    「きょうのプランだと、ボランチのところで(鎌田)大地とクマ(熊坂)、田中聡と田中碧に組んでもらう2セットを考えていました。世界の舞台で戦っていて、経験も豊富な選手と浅い選手が組んでもらって、これまでのチームの戦いを共有してもらうことと、より高いクオリティのプレーを感じてもらいながら、個々の成長につなげてもらいたかった」

    佐藤が「鎌田選手や経験のある選手がいてくれたおかげで、自分たちはある程度自由に、クリアにプレーできた」と手ごたえを口にしたように、このトライはポジティブに働いた。鎌田のような常連組との融合を図ることで、若手も生き生きと自分の持ち味を出すことに集中できた。

    しかし途中でやめた。

    森保監督は「経験の浅い選手」のパフォーマンスにかかわらず、早ければ前半だけで交代するプランをあらかじめ用意していたという。そして後半の頭にピッチに立っていたのは、田中聡とMF中野就斗、MF相馬勇紀をのぞいて全員がW杯メンバーだった。

    大胆に入れ替えた理由については、「チームとして(交代で)つなげて勝っていこうと、選手たちに伝えていた」としつつ、交代回数の節約や選手同士のコンビネーション面を挙げた。ただ、理由はほかにもあったようだ。

    森保監督は「途中で一人か、二人を代えることも考えました。考えたあげく、最後は自分の直感的なところだったかもしれない。いろいろ話すと長くなるので」として、含みのある回答を残した。

    「45分だけで物足りない選手はいるかもしれませんが、貴重な45分とも捉えられる。これまでチームを支えてきてくれて、かつ次のW杯にも出場可能という年齢の選手たち、パフォーマンスを見せてくれている選手たちですので、彼らへのリスペクトのバランスも考えないといけないと思っています」

    誰にとっての“貴重な45分”だったのだろう。

    ベネズエラ戦を終え、来年1月のAFCアジアカップまでに行える国際親善試合は、発表されている時点で残り4試合のみとなった。

    4年後のW杯も見据える血気盛んな若者たちにとって、この日の前半は貴重な45分だった。同時に、アジア杯優勝を目指すコアメンバーと、任期が残り半年を切った指揮官にとっても貴重な45分間だった。

    今月17日の会見で森保監督は、アジア杯優勝と大岩剛監督へのバトンタッチを両立させると明言した。現チームのクオリティを高めながら、未来を担う若手も育てる。その間で指揮官は板ばさみにあっているーーこの日の采配は、そんな“半年ジャパン”のジレンマから引き起こされたのではないだろうか。

  • japan(C)Getty Images

    ■二兎を追って、二兎を得られるか

    「経験の浅い選手」たちの成長と、アジア杯優勝を見据えた完成度を高める作業の両立が吉と出るか凶と出るかは、まだ分からない。しかし現状は好影響が生まれているように映る。

    森保監督は交代した若手選手たちを「焚きつけるつもりはなかった」としているが、その想いとは裏腹に、沸々と燃え上がるものを抱えたプレーヤーは少なくない。後藤もその一人で、試合後には悔しさをにじませていた。

    今後に向けて必要なことを問われると、「やっぱりゴールじゃないですか? 綺世くんは3点取っていますし、(塩貝)健人も結果を残している。生き残っていくにはクラブも大事ですけど、代表で点を取ることがかなり大事になってくる。もっとゴールやボールに執着したい」と口調を強めた。

    また佐藤も「後半のメンバーとプレーするためにも、自分がクラブでもっともっと結果を残して、全ての序列を上げることでスタメンの選手たちとプレーできる機会を得られる。次はあのメンバーとやりたい」と素直な想いを口にしており、若手選手たちはポジティブな“モヤモヤ”を感じているようだった。

    森保監督もウルグアイ戦とベネズエラ戦の手ごたえを口にしている。

    「この2試合でいうと、間違いなく途中から入って存在感を示してくれている選手がいる。チームの競争という意味では、刺激の試合として悪くない流れかなと思います」

    とはいえ、何かしらの“結果”が出るまでは、このモヤモヤは晴れそうにない。

    危惧されるのは、アジア杯優勝と若手の成長の二兎を追って、一兎も得られない未来だろう。そうなれば、『何のための半年間だったのか』となってしまう。立場上、一兎に照準を絞るわけにもいかない、森保監督の困難なミッションだ。

    日本代表は二兎を追って、二兎を得られるだろうか。

    取材・文=浅野凜太郎

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