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Anthony Taylor(C)Getty Images

「現代は断定を求めすぎ。監視の目は異常」審判を取り巻く“恐怖の文化”…引退の名レフェリーが訴え

先日引退を発表したイングランドの名審判アンソニー・テイラー氏は、昨今の審判を取り巻く環境について語っている。


20年に渡るキャリアの中で、プレミアリーグなどイングランドプロレベルで668試合を担当し、FAカップなど主要カップ戦すべての決勝戦で笛を吹いた他、国際試合も163試合を裁くなど、名審判として活躍したテイラー氏。今夏のワールドカップでも、スペイン対ポルトガルなど重要な試合を担当していたが、先月に審判活動からの突然の引退を表明していた。


引退時には「多大なる名誉だったが、プレッシャーは強大で、絶えず監視の目にさらされてきた」とも訴えていたテイラー氏だが、『BBC』のインタビューで引退理由について問われると、「それも理由の1つだった」としつつ、以下のように語っている。


「プレッシャーや厳しい視線が気にならないと言う審判がいれば、それは嘘をついている。人間として自然な反応だからね。あらゆるレベルの審判が直面する課題の一つは、自分たちが実際にどのような困難に直面しているのかを理解することにある」


「ミスへの恐れ、周囲、観客、監督、親、メディア、そして同僚の反応も……。こうした要素が重なり合うことで、自分を疑う気持ちや自信の喪失が生まれてしまう。そして収拾のつかない悪循環に陥り、ピッチ上での自分の行動に自信を持てなくなってしまうんだ」


「そのような環境に長期間さらされることで、誰だってエネルギーが低下してしまう時期を経験する。そうなると、モチベーションや自信にも影響が及び始める。『あの大会やあの試合を担当したい』といった思いや自信と、『また挑まなければならない、ミスは許されない』といった不安が絡み合ってくるんだ。これは誰もが経験する、非常に現実的な感覚だよ。私はその状況への対処法を自分なりに見つけて、大きな自信も持っていた」


「引退を決断したのは、純粋に、今の役割において自然な区切りを迎えたからだ。そして今、新たな旅へと踏み出す準備が整ったんだよ」


■審判を取り巻く「恐怖の文化」


「引退する時期は自分で決めたかった。そして、ワールドカップ以上にふさわしい舞台はないだろう」と語ったテイラー氏。そのうえで「(審判に向けられる監視の目は)常軌を逸している」と訴えると、審判を取り巻く報道に関して苦言を呈した。元選手や専門家に加え、元審判員までもがメディアで批判することを「個人的には残念に思う」と語っている。


「残念に思うよ。多くの場合、バランスを欠いているからね。フットボールにつきものの注目ではあるけど、スタジオにいる元選手の専門家であれ、元審判員であれ、試合の客観的な分析を行う際には、バランスの取れた公平なものであるべきだ。もし批判が一方的なものばかりになれば、恐怖や敬意の欠如、晒し者にするような文化が生まれてしまう」


「人々は『その判定は正しいのか、間違っているのか』という答えを強く求めている。しかし現実として、正誤の間には多くの主観や個人の見解が介在するんだ。だが今の時代、そうした曖昧さはなかなか受け入れられなくなっている」


「もちろん、誤った判定が下されることもある。しかし、その判定に至った理由を理解しようとする人はほとんどいない。私自身のスキルや情熱は、長年かけて幸運にも蓄積してきた知識や経験を次世代に伝えていくことにこそ、より適していると感じている」


「フットボールの試合結果というのは、様々な要素で決まるものだ。もちろん審判の判定もその一部だが、パスの精度が低い選手もいれば、PKを外す選手もいる。戦術的な変更やメンバー選考を誤る監督だっている。試合の結果を左右する要因は多岐にわたるんだ。それを心に留めておくことが、おそらく重要なのだろう」


さらにテイラー氏は、VARについて「判定の全体的な正確性を高めるという点において、VARは有益だ。だが、VARの本来の目的は公平性を担保すること、つまり明白な誤審を正すことにあるという点を忘れてはいけない。微細な点や詳細にわたる検証を行うためのものではない」とも指摘している。

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