13日のMIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023でもカナダ代表に快勝し、直近5戦5勝22得点としている日本代表。圧倒的な好調から、森保一監督が作り上げた成長のスパイラルが垣間見えている。【取材・文＝上村迪助（GOAL編集部）】
■好調5連勝中に計32名を起用
(C)Kenichi Arai攻撃の軸に据えられていた三笘薫が体調不良により参加を辞退し、不穏なムードで迎えたカナダ戦だったが、蓋を開けてみれば4-1の快勝。田中碧が2ゴールを記録したほか、森保監督が前日会見で三笘の代役として指名していた中村敬斗が攻撃の原動力となって1ゴールをマークし、カタール・ワールドカップ（W杯）以降初先発となっていた浅野拓磨がオウンゴールを誘発した。
直近5試合すべてで4得点以上と圧巻の得点力を示している日本が層の厚みを増していることは一目瞭然であり、数字にしてみてもその間の起用選手数は32名。うち13名がネットを揺らしている。アシストや起点となるプレー、ゲームメイク、守備での貢献なども含めれば、多くの選手が猛アピールを続けている。
カタールW杯後の“第2次森保ジャパン”の好調の象徴と見なされてきた三笘を欠いたとしてもその代役が躍動し、中盤に安定感を与えていた守田英正をベンチに置いたとしても、元同僚の田中が同じポジションを務めてチームを勝利に導く。伊東純也は最上級のパフォーマンスを続けているが、今回出場がなかった久保建英を送り出せばまた違った脅威を見せつけただろう。
指揮官が毎回の活動で掲げ続けていた通り、同じ布陣であったとしてもそれぞれの選手によって異なる特徴を発揮し、相手に困難な対応を強いる。それでいて複数のフォーメーションをシームレスに使い分けるのだから、チームの強化は極めて順調と言うほかない。
唯一、遠藤航の不在時に中盤の強度が維持できるかどうかは懸念事項だが、カナダ戦でも61分という早いタイミングで遠藤に代えてダイナミックなプレーを得意とする伊藤敦樹を送り出したように、森保監督も同じ役割をこなせる選手を探すつもりはなさそうだ。むしろ現実的な選択肢として、布陣変更も含めて最適なオプションを模索している。
■飢えを刻み込むマネジメント
(C)Kenichi Arai選手層の広がりにも繋がる部分で“第2次森保ジャパン”の特徴として注目したいのが、すべての選手が冷徹なほど最後まで結果を求めている点だ。カナダ戦で2得点を記録し、ハットトリックこそならなかったものの惜しいチャンスをいくつか得ていた田中は試合後、こう語っている。
「別にハットトリックを狙ったわけではないですけど、シンプルに勝つために点を取るということを、何対何であろうと狙っているところがあるし、それは自分だけではなくて色んな選手が狙っています」
こういった結果に執着する姿勢は、勝利そのものが大きな価値を持つ強豪との試合でも変わらず、それを示す発言は日本が4-1で完勝して世界を驚かせた9月のドイツ代表戦後にも複数の選手から飛び出た。特に強烈だったのが、その試合で途中出場から2アシストを記録した久保の発言だ。
「当然（ベンチスタートで）悔しいという気持ちはあったし、日本代表がすごく良い試合をしていたので、『ここに俺がいたらもっと良い試合ができた』と思っていました。それは僕以外の誰しも思っていることだと思うので、そういった意味で出た時に結果で示すしかない」
2026年W杯に向けて続投するにあたり、世界の頂点を目標に掲げた森保監督にとって、こういったメンタルやその渇望を満たすための試行錯誤を求めることは、必要不可欠なプロセスなのだろう。カナダ戦後、5試合連続4得点以上という結果を受けて、会見で「コーチ陣が攻撃も守備もアグレッシブにチャレンジすることを選手たちに植え付けてくれて、かつシステムのかみ合わせも選手たちが前向きに力を発揮できるように伝えてくれている」と、チームとしての方針を明かしている。
不思議なことに、ここ5試合では連続で先発して得点を記録した選手は、三笘と伊東、そして今回の田中と中村のみ。冒頭で触れた通り、その間に13名がスコアシートに名前を載せているが、うち9名がその前の試合でベンチ、または出場がなかった選手だ。招集されたすべての選手が厳しい競争に晒され、結果への渇望を強め、アピールを成功させる。そして、ベンチからそれを見守っていた選手たちもさらなる闘志を燃やす。“第2次森保ジャパン”では、かつてない猛アピールのインフレーションが起きている。