「みんなこれだけできるじゃん!」
右サイドバックで先発出場した千葉DF石尾陸登がプレー中に抱いていた感情だ。
17季ぶりのJ1に挑んでいる千葉だが、ここまでは開幕5連敗と苦戦を強いられていた。前節にはブーイングもあり、重苦しい空気がフクアリに漂った。それでも中3日で迎えたG大阪戦に向けて、「練習もいい雰囲気で、下を向くような感じじゃなかった」とすぐさま顔を上げた。さらにこの日は控えメンバーのMFエドゥアルドがチームに燃料を注いでいた。
「エドゥが試合前に『重荷を取って明るい気持ちでやろう!』と言っていました。負けが続いていたなかで、みんなもそれで振り切れたんじゃないですかね」
千葉はアクセル全開で試合に入り、開始約20秒で先制点を奪った。石尾がファーストプレーで右サイドからグラウンダーのクロスを供給すると、中央で待っていたFW矢村健が右足ダイレクトで合わせた。これがネットに吸い込まれ、電光石火の一撃となった。
アシストを記録した石尾はその後も攻撃で躍動。際立ったのは得意のドリブルで、スルスルと相手選手の合間を抜けていって味方にパスをつないだ。さらに「恐れていたら得点は取れないので。サイドバックですけど行っちゃおう」と、25分にはG大阪のCB陣の背後を取ってチャンスを演出し、45分には右サイドから自身もシュートを放つなどキレキレだった。
「僕はどんなときでも落ち着いているタイプなので、あれ(自分のプレー)で『大丈夫なんじゃん』って、みんなが思ってくれればという気持ちはありました」
石尾のアグレッシブなプレーが伝播したのか、千葉は最後まで“らしく”戦い続けた。後方から丁寧にビルドアップを続け、奪われてもすぐに囲い込んでカウンターを放った。先制後も引いて守るのではなく武器であるサイドアタックを続け、52分にはMF津久井匠海が待望の2得点目を決めた。
「みんな毎試合これくらい落ち着けばいいのにと、思いながらやっていました。あれだけプレッシャーが来ても落ち着いてボールを回せていたし、これを続けたいですね」
試合はそのまま2-0で終了。千葉はJ1最長ブランクとなる6132日ぶり(2009年11月22日の第32節FC東京戦以来)の白星をつかみ取った。イレブンはホイッスルと同時に倒れこみ、安堵(あんど)の笑みを浮かべた。
今シーズン初の勝利とクリーンシートに貢献した石尾だが、「得点を取りたかったですね。取れていたら完璧って言えた。あと(途中交代したので)最後までやりたかった」と満足している様子はない。
また「きょうの勝ちはこれで終わったので、次に向けてやっていかないといけない。みんなも気は抜けていません」と、勝てば無条件で最下位脱出となる次節の東京ヴェルディ戦に向けて闘志を燃やしていた。
取材・文=浅野凜太郎



