浦和MF安部裕葵が2019年以来2561日ぶりに先発出場した。度重なるケガを乗り越えてつかんだチャンスで背番号7は存在感を発揮し、勝利に貢献した。一方で、試合後には課題を口にした。
■「驚くほど冷静」だった約7年ぶりの先発出場
オーロラビジョンに映し出された背番号7の文字に、スタジアムから拍手が起こった。
「ウガさん(宇賀神友弥U-21チーム強化担当)やいろいろな人から、『いつも通りでいいんだぞ』『はしゃぐなよ』『ケガをしないことが一番だぞ』と言ってもらっていました」(安部)
周囲が心配するのも無理はない。2023年夏に浦和へ加入した安部だったが、これまで度重なるケガに苦しめられてきた。復帰してもなかなかコンディションは上がり切らず、浦和移籍後の2シーズンは出番なしに終わっている。
ここまで再負傷に人一倍の注意を払いながらトレーニングを続けてきた。そしてついにこの日、Jの舞台で2019年以来となるスタメンの座をつかみ、キックオフの笛をピッチ上で聞いた。
周囲は万感の思いで背番号7を見つめた。しかし当の本人は「特に何も思わなかった」と驚くほど冷静だった。むしろ、“どうすれば90分間を通して相手を圧倒できるか”を考えることで、頭がいっぱいだった。
トップ下の位置で出場すると、右サイドのMF金子拓郎と同サイドバックのDF石原広教の間に入りながら、相手の守備を混乱させた。チームの前進を助け、スルスルとアタッキングサードへ侵入し、落ち着いたボールさばきで攻撃の潤滑油となった。
考えながら、プレーし続けた。背番号7が「前半は思い通り。相手も出てこられていなかった」と振り返るように、チームは主導権を握り、41分にコーナーキックから得点した。シュート2本に抑えるなど、理想的な形で前半を終えて安部は57分にベンチへ下がった。
上出来のスタメン復帰戦に見えた。しかし、交代後そのままロッカールームに戻り、アイシングをしながら試合をチェックしていた安部が感じたのは「数年間練習をずっとやってきたから、試合とはやっぱり違う」という自身の課題だった。
■「やっぱり試合に出ないと」
「試合と練習はプレー選択が違う。余裕を持ってプレーはできたんですけど、もっとリスクの負い方とかは考えないといけない。練習中はケガをしないようにとかもあったので、リスクを負ってプレーとかあまりしないので。成功確率50パーセントでも仕掛けていくタイミングとかは、理解し始めないといけないですね」
長い間、先発メンバーとして試合を戦ってきていなかったが弊害が出ていたようだ。
後半になると、千葉は3枚替えでプレッシングの強度を高めた。相手の圧力を受けた浦和はシュート5本を打たれるなど、前半に比べて守りの時間が増えた。
安部は後半の立ち上がりからシャドーの位置でプレーしたが、前半の戦いに手ごたえを感じていたからこそ、「もう一回ポケットを取って、(金子と石原の間に入りながら)相手がプレスに行けない環境を作るべきだった。相手の心を折ってから、俺がもう一個高いポジションを取るべきだった」と、交代後に映像を見ながら反省したという。
10分弱のプレータイムで相手の変化に気が付くのは至難の業にも思えるが、「ピッチレベルでも感じないといけない。というか、感じられるはずなんですけど、たぶんこの7年間くらい考える習慣がなかったので」とブランクの影響を語った。
それでも浦和は千葉の反撃を許さず、64分に小森飛絢の2試合連続弾で突き放し、そのまま2-0で勝利した。危なげなく白星を飾ったように見えたが、安部はもっと圧倒できるはずだと力を込める。
「途中出場とかだと考えることが全然違う。やっぱりゲームコントロールするってなったら、そういう(状況に応じてプレーや立ち位置を考える)能力が必要。それはチームとしてもそうで、僕だけが『こうやったほうがいい』と言っても、みんなが『違う』と言えば違う戦術になるので。11人のうちの過半数が理解できるようになれば、もっといい試合運びができる」
チームと個人の改善点を口にした安部だが、その表情にはどこか充実感が漂う。長いトンネルから抜け出した男は、この試合のワンプレー、ワンプレーを噛みしめていた。
「やっぱり試合に出ないとですね。これを練習中に感じることはないですから」
背番号7は「体的には大丈夫でした」という安心の一言とともに、新たなスタートを切った。
取材・文=浅野凜太郎





