Marc Albrighton Leicester City 2018-19Getty Images

無敗リヴァプールと急ブレーキのシティ、そしてトッテナム…史上稀に見るハイレベルな優勝争いはどうなる?【プレミアリーグ前半戦総括】

■前半戦無敗の首位リヴァプール、チーム状態は最高

Mohamed Salah Liverpool Wolverhampton 21122018

文句なしの首位ターンだ。プレミアリーグのちょうど半分、19試合を終えて稼いだ勝ち点は「51」。前半戦だけで50ポイントの大台に到達したチームは、過去に2005-06シーズンのチェルシー、昨季のマンチェスター・シティといういずれも優勝した2チームだけ。今季のリヴァプールが史上3チーム目になる。また開幕19戦無敗(16勝3分け0敗)はリヴァプールにとって1987-88シーズン以来で、その時の彼らはタイトルを手にしている。

もう守備がウィークポイントなんて言わせない――。そう言わんばかりのリーグ最少失点「7」、最多クリーンシート「12」という数字が、リヴァプール好調の証である。新守護神のアリソン・ベッカー、今や世界最高のCBとの呼び声高いフィルジル・ファン・ダイクという「総額およそ200億円」の2人がいずれもシーズンMVP級の活躍ぶりで守備陣をリードしているのも大きな要因だが、それ以上に感じられるのはチーム全体のバランスの良さだ。自由な攻撃的マインドの裏にあるFW・MF陣の規律正しいプレッシング、攻→守の高速トランジション、ポゼッション向上による相手の攻撃機会そのものの減少が堅守につながっているから、「守り勝っている」という印象は微塵もない。

攻めては前線の3人、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラーが織りなすアンサンブルが相変わらず暴力的で、たとえ彼らを徹底マークしたとしても、新加入のジェルダン・シャキリという“第4の男”が先発・交代出場を問わず颯爽と決定的な仕事をやってのける。シャキリの他にも、ファビーニョ、ナビ・ケイタらをうまく使いながら日替わりのスタメンと交代カードを組むユルゲン・クロップの采配が冴え渡り、選手のコンディションとモチベーションの両方がコントロールできている。悲願のプレミア初制覇に向けて、リヴァプールは現時点であらゆる歯車がうまく回っており、自信も最高潮の状態と言っていい。

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■まさかの急ブレーキ、王者シティに何が起こった?

Manchester cityGetty Images

一方で、12月に異変が起こったのが前年王者シティだ(勝ち点44)。最強だった昨季と同等の勢いでの無敗進行から一転、第16節チェルシー戦(0-2)で初黒星を喫すると、クリスマス前後の第18節、第19節にはクリスタル・パレス(2-3)、レスター(1-2)にまさかの連敗を喫して3位転落。ここ4試合で喫した3つの敗北に共通するのは、「最初に撃たれたシュートで失点したこと」と「相手が4-5-1でブロックを固めてきたこと」だ。前者は集中力散漫と言うしかないが、後者はチェルシーのマウリツィオ・サッリの策が当たったことで、他チームにも「ブロックを組んで耐えればカウンター勝負で活路が見出せる」と思わせてしまったのが原因だろう。

パレス戦ではアンドロス・タウンゼントに、レスター戦ではリカルド・ペレイラにシーズンベスト級のゴールが飛び出す不運もあったし、対策を講じられても自分たちの時間にはきっちりゴールを奪っている。それでもこうなってしまったのは、相次ぐ主力の負傷離脱でどこかチームのリズムが歪になっていた“ツケ”が回ってきた結果だろう。

最近復帰したケヴィン・デ・ブライネは前半戦をほぼ棒に振ったし、セルヒオ・アグエロが抜けた時期もあった。アグエロが復帰すればダビド・シルバを失い、デ・ブライネがようやく戻ってきたら今度はフェルナンジーニョが離脱と、今季の彼らは常に“飛車”と“角”のどちらかを欠いたような状態で戦い続け、チームは確実に無理をしてきた。デ・ブライネの穴はベルナルド・シルバが埋め、アグエロ不在の影響もガブリエウ・ジェズスやラヒーム・スターリングの活躍で隠せてはいたものの、埋められない穴も出てくる。D・シルバやフェルナンジーニョの存在がそれだ。特に後者の不在は地味ながら大きな痛手で、パレス戦はジョン・ストーンズをアンカーにコンバートしたが明らかに機動力が足りず、レスター戦はイルカイ・ギュンドアンを中盤の底に置いて左SBのファビアン・デルフにいつもより組み立てをサポートさせる形をとったが、レスターにその空けた左サイドの裏を何度も突かれた。フェルナンジーニョに依存してきたアンカーの問題は、シーズン後半戦もペップ・グアルディオラを悩ませることになりそうだ。

■安定感抜群のスパーズは優勝争いに生き残れるか

Heung-Min Son Tottenham 2018-19Getty Images

リヴァプールとシティの間に割って入って2位ターンのトッテナム(勝ち点45)は、抜群の安定感が光る。11月以降のリーグ戦はアーセナルとの“ノースロンドン・ダービー”(2-4)で敗れた以外の8試合は全勝しており、その9試合で26ゴール(うちハリー・ケイン、ソン・フンミンがそれぞれ7ゴール)と攻撃陣が堅調。夏には「補強ゼロ」が不安視されたが、4-2-3-1をベースに4-3-2-1、4-3-1-2、さらに3バックまで自在に使い分けながら、レギュラー組に加えて若手やルーカス・モウラ、エリック・ラメラ、ムサ・シソコらを有効活用するマウリシオ・ポチェッティーノ監督の手腕には感心するばかりだ。

スパーズが後半戦も優勝争いに絡んでいけるかどうかのカギは、補強ゼロの理由にもなった新スタジアムかもしれない。建設工事の遅延もあったが来年にはこけら落としとなる予定の新本拠地は、長期的に見ればもちろんポジティブなトピックであるし、即座にクラブを勢いに乗せる活性剤となる可能性もある。だが、移転したチームが新しいピッチや雰囲気に慣れるまで時間がかかることもままある。それがどちらに転ぶのかは、彼ら次第だ。

■トップ集団と差が開いたチェルシーとアーセナル…そして荒治療を施した“赤い悪魔”

2018-12-28-emery-sarri(C)Getty Images

同じロンドン勢のチェルシー(勝ち点40)とアーセナル(勝ち点38)は、トップとの差がやや開きすぎた。ただ、それぞれ新監督を迎えた両チームも興味深いシーズン前半戦を送っている。

注目すべきは、スタメンをほぼ固定して戦術浸透を図るサッリ監督と、メスト・エジルでさえ特別扱いせずメンバーやシステムを試行錯誤しながらチームにフレッシュな風を吹かせるウナイ・エメリのアプローチが真逆であることだ。チェルシーは1トップ起用するエデン・アザールが10ゴール9アシスト、チャンスメイク数、ドリブル成功数に被ファウル数でリーグトップと猛威を振るっているが、彼の相棒になれるような純正ストライカーの不在が気になるところで、1月にゴンサロ・イグアインなど1トップに固定できる人材を獲得して起爆剤にできるかどうかにかかっている。一方のアーセナルは、ピエール=エメリク・オーバメヤンとアレクサンドル・ラカゼットの活躍でゴールに問題は抱えていないが、一方で(故障の問題もあったが)ベストメンバーが定まらずに失点(25)も被シュート数も多い守備陣をどう整備していくかが課題だろう。

ジョゼ・モウリーニョ解任という荒療治を施した6位マンチェスター・ユナイテッド(勝ち点32)は、そのチェルシー、アーセナルとのトップ4争いに加われるか微妙なところ。ただ、オレ・グンナー・スールシャール暫定監督の下、初陣はカーディフに5-1、2戦目はハダーズフィールドに3-1で勝利と上々の滑り出しで浮上の兆しはある。前任者の抑圧から解き放たれて心機一転の選手たちにはアグレッシブな姿勢が見て取れ、ワンタッチやツータッチでボールを動かし、縦に速い攻撃を取り戻そうという意識が感じられる。後半戦でどこまで上位争いを荒らせるか注目が集まる。

■オーナー逝去の悲しみを乗り越えて…レスターが奮闘中

Marc Albrighton Leicester City 2018-19Getty Images

“ビッグ6”ばかりに注目が集まりがちなプレミアリーグだが、中小クラブも面白い。マルコ・シルヴァ流で生まれ変わりつつあるエヴァートンや、ワトフォード、ウォルバーハンプトン、ボーンマスの健闘も光るが、特筆すべきは6強に次ぐ7位でシーズンを折り返したレスターだ。

10月末、ヘリコプター墜落事故によってオーナーが逝去という悲劇がシーズン前半の一大ニュースとなってしまったフォクシーズ(レスターの愛称)だが、彼らは力強く、懸命に、悲しみから立ち直ろうとしている。クロード・ピュエル監督はポゼッションを志向しているが、やはりレスターはボール支配率が低くとも全員がハードワークする姿がよく似合う。12月にはチェルシー、シティを低ポゼッション&一撃必殺のカウンターで破って“らしさ”を見せた。ジェイミー・ヴァーディやカスパー・シュマイケルといったお馴染みのメンツだけでなく、アイディア豊富なスキルやスルーパス、ミドルシュートで攻撃のスパイスとなっている21歳の新10番、ジェイムズ・マディソンのプレーは一見の価値ありだ。

彼の台頭で残念ながら岡崎慎司の出場機会は減っているが、15-16シーズン優勝を成し遂げた“ミラクル・レスター”以降は目が遠ざかっているというファンも、再び熱狂できる好チームであることは間違いない。

文=大谷駿

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