ヴィニシウスに対しては今夏、22年ぶりにプレミアリーグ王者となったアーセナルが強い関心を示した。一時はレアル・マドリーとの交渉が停滞したことで、移籍成立は間近とも伝えられた。しかし、8月上旬にレアル・マドリーと6年契約が成立。クラブは声明で「クラブ史上最も成功した時代のひとつにおいて、最も重要な選手の一人」と主張し、彼との契約を喜んでいる。またモウリーニョは、『as』でこう明かしている。
「私が彼に言ったのはただ一つだ。『ヴィニ、どこに行きたいんだ? 君はブラジルにいて、知っていたのはレアル・マドリーだけだ。レアル・マドリーを本当に理解するのは、そこを離れてからになる。離れて初めて、レアル・マドリーが何であるかを実感するんだ。出て行くな。その価値はない』とね」
モウリーニョは自身の経験を踏まえて助言を送っている。2013年にレアル・マドリーの指揮官に就任したが、リーグ優勝は1回のみ。彼の輝かしい成績からすれば物足りない。ビッグイヤーも手にすることはなかった。そうして失意のまま去ったこともあり、今夏に再び戻って来る選択をしたのだろう。
しかし、今の問題を抱えたレアル・マドリーが、ビッグイヤーを手にする姿はまるで想像できない。さらにラ・リーガでも、バルセロナの圧倒的な力を見れば、タイトルは数年後になってしまうという悲観的な思いが湧き出てしまっても仕方がない。
たらればにはなるが、アーセナルへの移籍はヴィニシウスにとって最善だったのかもしれない。ミケル・アルテタの下で強力な基盤が整ったチームで、自由を手にしながら左サイドで躍動する彼の姿は想像に難くない。世界最高峰のプレミアリーグのトップクラブで、レアル・マドリーでは不可能な主役の座が約束され、自身のパフォーマンスを発揮する最高の環境で爆発的な突破を見せ続ける彼の姿を見たかったファンも多いはずだ。そしてこのクラブとともにビッグイヤーを手にすれば、ヴィニシウスが喉から手が出るほど望んでいるバロンドールも大きく近づいていたかもしれない。
今季のレアル・マドリーでのヴィニシウスは、ドリブル試行回数は1試合平均4.6回。2025-26シーズンの5.6回からさらに低下した。また、ゴール期待値(xG)も「0.59」であり、昨季の「1.05」から大幅に落ち込んでいる。昨季にも増して、今のヴィニシウスは「小さくまとまり過ぎている」のだ。
この世代屈指の才能を持ち、サッカー界を代表する存在であるヴィニシウス。その特別な才能ゆえに、ある時期に再び輝きを取り戻すかもしれない。だがしかし、2024年のような姿を取り戻すのは、もう不可能なのかもしれない。今の彼は、まるで“別人”のようなのだから。