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Vincius Junior Real Madrid 1:1Getty/GOAL

今のヴィニシウスは本当に“別人”なのかもしれない:レアル・マドリー&ブラジル代表で輝き失う理由

James Westwood
翻訳者:
  • 今夏のワールドカップ・ラウンド16でブラジルがノルウェーに衝撃的な敗戦を喫した後、ヴィニシウス・ジュニオールは顎の輪郭を整えるために「フェイス・ハーモナイゼーション」の施術を受けたという。この非外科的な美容施術後、初めて公の場に姿を見せた時はSNSが騒然となった。確かに輪郭ははるかかに引き締まり、以前とは印象が変わっている。

    キャリア最大の失望を味わった後、精神的にも見た目の面でも心機一転を望んだのかもしれないし、単純により彫りの深いあごのラインの方が自分に合うと感じただけなのかもしれない。自分の体であり自分の選択だ。外野が文句を言う権利はない。しかしこの決断により、必要以上に注目を集めてしまったのは確かだ。そしてそれは、今季のパフォーマンスが過去数シーズンと比べて大きく低下していることから、“影武者”騒動へとつながってしまった。

    もちろん、彼が別人であるということは全くありえない。しかし、今季の彼の姿は、確かに別人のようだ。

  • ブラジル代表での苦戦

    Australia v Brazil
    Getty Images Sport

    ヴィニシウスは今夏のワールドカップで面目を保った数少ないブラジル人選手の1人である。5試合の出場で4ゴール1アシスト、特にグループステージのスコットランド戦(3-0)は傑出していた。

    しかしブラジル代表キャリア全体を通してみると、ネイマール、ロナウジーニョ、ロナウドのような「象徴」と言われるような結果は残していない。57試合で14ゴール。直近のインターナショナルウィークでも苦戦が続き、オーストラリア戦(1-1)は65分間でボールタッチ36回、ドリブル成功は1回のみで、守備貢献のスタッツは一度もなかった。その4日後の再戦ではゴールも挙げて勝利に貢献。そして3日のインド戦は4-0でチームは勝利したものの、FIFAランキング138位の相手に苦戦が続いたチームとともに広く批判されることになる。

    『UOL』は「ブラジル代表は眠たげで、動きが鈍く、ひらめきもない立ち上がりだった」と指摘すると、「ヴィニは左サイドで十分なスペースを得ていたが、それを生かせず、チャンスメークでもミスを犯し続けた」と批判的に伝えている。パス成功率はなんと54%。カルロ・アンチェロッティ監督も「ベストの状態ではない」と認めている。

  • “影武者”説

    Vinicius Junior Brazil 2026
    Getty Images

    このインド戦のパフォーマンスはあまりにも低調であり、過去のヴィニシウスからは考えられないほどの出来だった。『X』で「@The HateCentral2」というアカウントが2分21秒にまとめたこの試合のプレーは2500万回以上再生され、23万4000件以上の「いいね」を獲得している。

    すると、リプライ欄でのある指摘が大きな話題となる。「そもそもヴィニシウスはプレーしておらず、替え玉を出場させていたのでは?」と。この指摘にSNSは大盛り上がりで、彼のタトゥーや筋肉、そして施術を受けた顔など、過去のヴィニシウスと違う“影武者”説が世界中で話題を呼んだ。

    もちろん、あれは本物のヴィニシウスだ。タトゥーや筋肉は試合映像の角度や照明の関係で違う見え方をしただけである。しかし、パフォーマンスに関しては確かに別人のようだ。全体を通じてプレー精度を大きく欠いており、持ち味である初の爆発的な突破も影を潜めた。

    明らかにコンディションが低下しているのだろう。その原因はメンタル面にもあるようだ。ヴィニシウスはオーストラリア戦の勝利の後、「ワールドカップの影響はいつも大きい。そこから戻ってくるのはいつだって難しいんだ」と認めている。

  • ブーイング

    FBL-FRIENDLY-SCHALKE-REAL MADRID
    AFP

    今季開幕から最初の2カ月間、ヴィニシウスは確かに重荷を背負ってプレーしているように見えた。8月28日のレアル・ソシエダ戦(4-1)ではゴールを決め、さらにキリアン・エンバペのハットトリックを導く見事なアシストも記録したが、それ以外では不可解なほど精彩を欠いている。


    レアル・マドリーでは公式戦直近6試合でノーゴール。チャンピオンズリーグ・インテル戦を含め、本拠地サンティアゴ・ベルナベウのサポーターからブーイングを浴びることも少なくない。「オフ・ザ・ボールで抜いていいほど、オン・ザ・ボールで貢献していない」という見方が大半だ。それでも、ジョゼ・モウリーニョ監督は真正面から彼を擁護している。

    「彼は試合を決めるヴィニシウスになるために懸命に取り組んでいる。最高の状態ではなくても、これまで以上にハードワークしている。下がって守備ができなかった場面があったのは、疲労のせいだ。私はそこを高く評価しなければならない。このヴィニシウスには大きな敬意を持っている。彼が試合を決め、我々に勝利をもたらす時は来る。彼が努力する限り、私は常に支えるよ」

    「もちろん、左サイドであった1対1の場面では、ベストのヴィニなら試合を決めていただろう。それが我々の期待することだ。だが、彼はすべてを出し切った」

    モウリーニョの期待は大きい。しかし、ヴィニシウスは2024年以降で本当の意味で「期待に応えた」ことはほとんどないのだ。

  • エンバペとの共存

    Real Madrid C.F. v FC Internazionale Milano - UEFA Champions League 2026/27 League Phase MD1
    Getty Images Sport

    2024年のバロンドール投票でロドリにトロフィーを譲った後、ヴィニシウスは「10倍強くなって戻ってくる」と誓った。レアル・マドリーの二冠達成をけん引し、39試合で35得点に関与。ドルトムントとのチャンピオンズリーグ決勝でも得点を挙げていた。しかし振り返れば、現状、あのシーズンこそが彼のピークだった言える。

    レアル・マドリーでの直近2シーズンもそれぞれ22得点を記録しているヴィニシウスだが、安定感を欠き続けている。昨季10月下旬から2月中旬にかけてはラ・リーガで14試合連続ノーゴールが続き、2024-25シーズンの後半戦もリーグではわずか3ゴールにとどまった。

    その理由は、誰の目にも明らかである。そう、エンバペの加入だ。フランス代表のエースがゴールを担う攻撃の中心となり、ヴィニシウスにはよりチャンスメークが求められるようになった。フロレンティーノ・ペレスはそうして2人の世界的アタッカーの融合を期待していたようだが、今のところそれは全く機能していない。

    エンバペは純粋な9番タイプではなく、頻繁に左サイドへ流れてボールを受けることを望む。しかし、それはヴィニシウスの生きるスペースを潰すことにほかならない。度々プレーエリアが被ることで両者が使いたいスペースを食い合い、さらにはボックス内に選手が誰もいない状況は頻発している。また、両選手の守備貢献の低さは致命的で、今のレアル・マドリーは守備時に実質「11人 vs 9人」を強いられているようなものだ。現代サッカーにおいて守備に貢献できない選手を2人抱えていればどうなるかは、火を見るより明らかだ。

    確かに、ヴィニシウスとエンバペは世界を代表するワールドクラスの存在だ。だがしかし、この2人は単純に噛み合っておらず。それがレアル・マドリーの足かせとなっている。

    そしてこの状況が続いた場合、立場は危うくなるのはヴィニシウスの方だろう。昨季公式戦44試合で42ゴールを奪い、今夏のワールドカップでも10ゴールを奪って歴代最多得点記録を打ち立てた10番をレアル・マドリーが手放すことはありえない。さらに今夏、クラブ史上最高額でヤン・ディオマンデが加わった。左サイドを主戦場とする19歳のコートジボワール代表FWは、昨季ライプツィヒで敵陣深い位置でのボール奪取回数がヨーロッパ主要リーグトップ10を記録している。モウリーニョ好みのウインガーである。汚れ役を厭わず、エンバペとの共存の意味でも、彼のほうが今のチームには適正があると言える。

  • “別人”

    FBL-ESP-LIGA-ELCHE-REAL MADRID
    AFP

    ヴィニシウスに対しては今夏、22年ぶりにプレミアリーグ王者となったアーセナルが強い関心を示した。一時はレアル・マドリーとの交渉が停滞したことで、移籍成立は間近とも伝えられた。しかし、8月上旬にレアル・マドリーと6年契約が成立。クラブは声明で「クラブ史上最も成功した時代のひとつにおいて、最も重要な選手の一人」と主張し、彼との契約を喜んでいる。またモウリーニョは、『as』でこう明かしている。

    「私が彼に言ったのはただ一つだ。『ヴィニ、どこに行きたいんだ? 君はブラジルにいて、知っていたのはレアル・マドリーだけだ。レアル・マドリーを本当に理解するのは、そこを離れてからになる。離れて初めて、レアル・マドリーが何であるかを実感するんだ。出て行くな。その価値はない』とね」

    モウリーニョは自身の経験を踏まえて助言を送っている。2013年にレアル・マドリーの指揮官に就任したが、リーグ優勝は1回のみ。彼の輝かしい成績からすれば物足りない。ビッグイヤーも手にすることはなかった。そうして失意のまま去ったこともあり、今夏に再び戻って来る選択をしたのだろう。

    しかし、今の問題を抱えたレアル・マドリーが、ビッグイヤーを手にする姿はまるで想像できない。さらにラ・リーガでも、バルセロナの圧倒的な力を見れば、タイトルは数年後になってしまうという悲観的な思いが湧き出てしまっても仕方がない。

    たらればにはなるが、アーセナルへの移籍はヴィニシウスにとって最善だったのかもしれない。ミケル・アルテタの下で強力な基盤が整ったチームで、自由を手にしながら左サイドで躍動する彼の姿は想像に難くない。世界最高峰のプレミアリーグのトップクラブで、レアル・マドリーでは不可能な主役の座が約束され、自身のパフォーマンスを発揮する最高の環境で爆発的な突破を見せ続ける彼の姿を見たかったファンも多いはずだ。そしてこのクラブとともにビッグイヤーを手にすれば、ヴィニシウスが喉から手が出るほど望んでいるバロンドールも大きく近づいていたかもしれない。

    今季のレアル・マドリーでのヴィニシウスは、ドリブル試行回数は1試合平均4.6回。2025-26シーズンの5.6回からさらに低下した。また、ゴール期待値(xG)も「0.59」であり、昨季の「1.05」から大幅に落ち込んでいる。昨季にも増して、今のヴィニシウスは「小さくまとまり過ぎている」のだ。

    この世代屈指の才能を持ち、サッカー界を代表する存在であるヴィニシウス。その特別な才能ゆえに、ある時期に再び輝きを取り戻すかもしれない。だがしかし、2024年のような姿を取り戻すのは、もう不可能なのかもしれない。今の彼は、まるで“別人”のようなのだから。