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Premier League world-class club GFX 1:1GOAL

プレミアリーグは本当に「世界最高のリーグ」なのか?“ワールドクラス”の不在とスペイン二強の魅力

Mark Doyle
翻訳者:
  • イングランドのトップリーグであるプレミアリーグ。その人気や実力、そして競争力は世界屈指であり、「世界最高のリーグ」と評価されることも多い。実際、資金力で言えば他のリーグに圧倒的な差をつけており、移籍市場での支配力は強大だ。その財力を武器に各国の代表選手を集め、そして欧州最前線で活躍する指揮官が毎週しのぎを削っている。

    だがしかし、プレミアリーグはある特有の問題を抱えている。フットボールにおける花形、ワールドクラスの点取り屋が非常に少ないのだ。先日発表した世界最高の選手トップ25を選出する『GOAL's World-Class Club』の2026年版でも、プレミアリーグから選出されたのはわずか5人、そのうち4人がディフェンダーであった。唯一選ばれたのは、毎年のように得点王に輝いているアーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)のみ。現在フットボール界を代表するアタッカーであるラミン・ヤマル(バルセロナ)、キリアン・エンバペ(レアル・マドリー)、ハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)らは軒並みイングランド外でプレーしている。

    では、なぜ世界屈指のアタッカーはプレミアリーグにいないのだろうか?

    文=Mark Doyle

  • 変わらぬ問題

    Manchester United v Liverpool - Premier League
    Getty Images Sport

    今では想像できないかもしれないが、かつてプレミアリーグが世界最高の選手たちを獲得するだけの魅力・資金力がない時代があった。

    1990年代、この分離独立した大会がまだ黎明期にあったころ、ビッグネームがイングランドへ移るのはキャリアの終盤に限られていた。ルート・フリットやジャンルカ・ヴィアッリ、ジャンフランコ・ゾラもそうだろう。あるいはエリック・カントナやティエリ・アンリ、デニス・ベルカンプのように、何らかの理由で他国で苦しんでいた選手たちしか来ることはなかった。当時はイタリアが世界の中心であり、ほとんどのビッグネームがセリエAでプレーしていた。

    しかし、この25年間でプレミアリーグは資金力で圧倒的なリーグとなる。今夏の移籍市場では、過去最高の総額35億ポンドを補強に投資。これはセリエA、ラ・リーガ、リーグ・アン、ブンデスリーガの全クラブの合計を上回る金額である。資金力という意味では他の追随を許さず、それ故に各国の代表選手が集まり、世界中にファンを拡大していっている。現状、リーグの価値という意味では「一人勝ち」状態かもしれない。

    だが、未だに抱える問題は変わっていないのかもしれない。21世紀に突入して以降、プレミアリーグの選手でバロンドールに輝いたのはたった3人しかいないのだ。マイケル・オーウェン(2001年)、クリスティアーノ・ロナウド(2008年)、そしてロドリ(2024年)が世界最高の選手の称号を手にしたが、これはあまりに示唆的である。特にバロンドールが人気投票的な側面があることを考えると、このリーグは現在も絶頂期にあるビッグネームを惹きつけることに苦しんでいる。

    もちろん、プレミアリーグには真のワールドクラスがいた。しかし、アンリやオーウェン、C・ロナウド、ルカ・モドリッチ、ガレス・ベイル、ルイス・スアレス、エデン・アザール、そして直近ではロドリと、彼らは軒並みスペインへと渡っていった。彼らの中でも全盛期をプレミアリーグで過ごしたのはアンリ、ロドリ、アザールだけだ。

    おそらく、リーグの人気という意味ではプレミアリーグは世界最高だろう。しかし世界中のほとんどの選手にとって、今なおバルセロナとレアル・マドリーが“ゴール”であるという事実は変わっていない。

  • スペイン二強という“ゴール”

    FBL-ESP-LIGA-BARCELONA-REAL MADRID
    AFP

    多くの選手が“ゴール”とするバルセロナとレアル・マドリー。このスペイン二強に世界中の選手が魅了される背景には、文化、気候、言語など様々な理由がある。特に南米圏の選手にとっては、今も昔も「夢の移籍先」だ。そして、イングランド屈指の名選手たちでさえ彼らに惹かれるのだ。

    リヴァプール生まれのスティーブ・マクマナマンは、レアル・マドリーで2度チャンピオンズリーグを制した。そんな彼は、「あの象徴的な白いユニフォームを着る機会を断れなかった」と明かしている。また、オーウェンも『GOAL』の取材で「『自分は一生リヴァプールの選手でいる』と思ったけど、その一方で『レアル・マドリーだぞ。断ったら一生後悔する』とも思ったんだ」と語った。

    最近では、トレント・アレクサンダー=アーノルドも同じような理由でレアル・マドリー加入を決断。マーカス・ラッシュフォードやアンソニー・ゴードンも「カンプ・ノウでのプレーが夢」としてバルセロナ入りを決断した。また、ジュード・ベリンガムに関しては、プレミアリーグのクラブを自由に選べる状況であったものの、マドリー移籍を即決している。

    以前はイングランドのトッププレイヤーがプレーするのはプレミアリーグであり、マクマナマンやオーウェンのような例は多くなかった。だが上述の通り、近年は国外の強豪を夢見る選手が増加している。

    2023年にトッテナムからバイエルン・ミュンヘン移籍を決断したケインは、『TNT Sports』でその決断の理由を説明。そして主な理由の1つに、20年前のデイヴィッド・ベッカムのレアル・マドリー移籍を挙げた。

    「彼は僕のアイドルだった。同じ学校に通っていたし、同じ地域で育った。僕が小さい頃、彼はイングランド代表のキャプテンだったんだ。だから僕も、彼の足跡をたどりたかった。多くのイングランド人選手がやることではないのは分かっている。でも、これは僕がこれまでしてきた中で最高の決断だった」

    そうした「憧れの存在」を見てきた世代が今のフットボール界を牽引しているわけだが、その「憧れの存在」が集まっていたのがバルセロナとレアル・マドリーなのだ。そしてそれは南米の選手に限らず、イングランドでもそうである。さらに言えば、今やケインやベリンガムも「憧れの存在」となっている。つまり、今の子供たちは彼らを目標としているのだ。バルセロナとレアル・マドリーが“ゴール”であり続ける状況は、今後数年間で変わるような話ではない。

  • 実利と魅力

    Manchester City v Sunderland - Premier League 2026/27
    Getty Images Sport

    統計上、プレミアリーグは地球上で最も視聴されているリーグである。スタジアムの雰囲気も素晴らしい。だがピッチに目を向けると、もはや特別「華やかな」プレーを見ることはできなくなっている。

    近年のフットボールはよりアスリート能力を重視する傾向がさらに加速しており、今や技術よりもフィジカルに大きく比重が置かれている。そして、その最前線がプレミアリーグだ。だからこそ、アーセナルは22年ぶりにプレミアリーグ王者に輝くことができている。ミケル・アルテタ監督と選手たちはプレミアリーグの基本的価値観を体現している。強さ、スピード、パワー、そして保守性といった面で。

    彼らはフットボールという「美しいゲーム」を「何が何でも勝つゲーム」に変えていった。勝利に徹底してこだわった結果、喉から手が出るほど欲しかったトロフィーを22年ぶりに手にした。その努力は咎められるべきではないし、称賛すべきだ。そして彼らの台頭により、試合自体が大きく見直されることになる。以前よりもさらに「効率的に勝つ」ことが求められ、リードを守り切ることとセットプレーがより重要視されることになった。その影響により、オープンプレーからの得点は大幅に減少している。

    そしてこの傾向が強まるほど、アタッカーが輝くのは難しくなっていく。現状、このリーグで圧倒的な輝きを放つアタッカーは、アーリング・ハーランド1人のみ。世界のフットボールにおける“顔”と言えるのは彼くらいだろう。そんな彼も、今季を最後に見られなくなるかもしれないが……。もしマンチェスター・Cが本当に降格や除名処分を受けるとすれば、ハーランドの退団は確実だ。そして彼も、レアル・マドリーかバルセロナへと旅立っていくのだろう。またしてもプレミアリーグは、“顔”と言える存在をスペイン二強に奪われることになるかもしれない。

    繰り返しになるが、決してプレミアリーグにタレントが不足しているわけではない。アレクサンダル・イサクは本領発揮すれば素晴らしいストライカーであり、“異端児”ラヤン・シェルキはワクワクするプレーを見せてくれる。マックス・ダウマンやリオ・エングモアといった才能は、イングランドの育成年代の成功を表している。

    しかし、「効率的に勝つ」ことが求められるゆえに加速していったフィジカル重視の傾向は、テレビ視聴者にとっては魅力的かもしれないが、選手たちに過酷な負荷を強いることで苦しみにつながっている可能性がある。

    あまりに実利的な戦いの流行と過剰なまでの競争によって、試合を美しくしていた選手たちが輝くスペース・時間が失われすぎている。昨季のチャンピオンズリーグ決勝を見れば、アーセナルとパリ・サンジェルマンは対照的だった。それはアルテタ監督自身が「我々は2つの異なる世界を比較している」と認めている。

    パリ・サンジェルマン、バイエルン、バルセロナ、レアル・マドリーは、国内での支配的な強さゆえに重要な選手たちをローテーションする機会がプレミアリーグ勢よりも圧倒的に多い。特に昨季、ルイス・エンリケ監督はウスマン・デンベレやフヴィチャ・クヴァラツヘリアの疲労のコントロールを最優先とし、リーグ・アンでは起用しないことも多かった。もしアーセナルがブカヨ・サカのコンディションをもっとうまく管理できていれば……彼はこの夏のワールドカップでもっと輝いていたはずだ。

    だがしかし、プレミアリーグの現在の傾向が弱まる気配はない。今夏の移籍市場が改めて示したように、イングランドのビッグクラブはこれまで以上に直接取引を行っている。そう、“プレミアリーグで実証済み”の才能を買うことに取りつかれているからだ。その結果、マーケットは完全に狂ってしまった(サビオ、リアム・デラップ、マテウス・フェルナンデス、エリオット・アンダーソンの移籍金は異常だ)。そしてそれは、プレミアリーグ全体のクオリティを改善するうえで、当然ながら何の助けにもならないだろう。

    この見通しは非常に悲観的かもしれないが、今やプレミアリーグは巨大なビジネスだ。そして当然、「ショー」であり続けなければならない。フットボールの本質は「勝利」だけでなく、見るものを「魅了する」ことである。もしこのまま実利だけを取る戦いが続き、ワールドクラスのアタッカーが次々といなくなってしまえば、このリーグの支配的な立ち位置は揺らいでしまうだろう。