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Urawa Red Diamonds v V-Varen Nagasaki - J.LEAGUE MEIJI YASUDA J1J.LEAGUE

攻撃はミスマッチ、守備はマッチアップ。浦和・曺貴裁監督が追求する“RED GAME”の輪郭

Hidezumi Shimazaki
  • 相手に応じて柔軟にシステムを変化させながら、中央突破へのこだわりは崩さない。攻撃ではミスマッチを生み出し、守備ではマッチアップを重視する独自の戦術も見えてきた。指揮官が掲げ続ける“RED GAME”。柏レイソル、ヴィッセル神戸との上位対決を前に、その進化を読み解く。

    (取材・文=島崎英純)

  • FC東京戦の完敗を転機に

    FC TOKYO v Urawa Red Diamonds - J.LEAGUE MEIJI YASUDA J1
    J.LEAGUE

    FC東京戦が転機だった。この試合は”神経戦”のなかで元浦和のFW長倉幹樹に1ゴール2アシストを許し、完敗した

     10月10日のJリーグ第9節・FC東京戦での完敗は重い教訓になった。4-4-2システムの相手に対して4-1-2-3システムで向き合う熾烈な”神経戦”を戦った中でパーソナルエラーが発生し、浦和レッズは、かつてチームに在籍したFW長倉幹樹に1ゴール2アシストを許すなどして0-3で屈した。

     浦和の曺貴裁監督は好調なFC東京に対してほぼマッチアップ状況を築いて臨んだが、選手は重要な局面で打ち勝てずに失点を誘発してしまった。この点を憂慮した曺監督はその後のゲームで幾つかの人選を改め、戦い方も若干変化させている。

     曺監督はこれまで、リーグ戦とカップ戦とでメンバーを入れ替えてきた。今季開幕から3連敗を喫したJリーグ第3節・FC町田ゼルビア戦後に戦った天皇杯2回戦・山梨学院大学戦(3◯0)や、敵地で苦戦したルヴァンカップ1stラウンド2回戦・カターレ富山戦から8日後に臨んだ天皇杯3回戦・RB大宮アルディージャ戦(3◯2)はいずれもターンオーバー組が奮起して勝利を掴み取った。そしてFC東京戦から中3日のインターバルで迎えたルヴァンカップ1stラウンド3回戦の横浜FC戦でもセンターバックの宮本優太以外の10人を入れ替え、この試合を4-0で制して同大会4回戦へ駒を進めた。

     今の浦和はチーム全体の底上げを図りながら進化の過程を歩もうとしている。FC東京戦で失点に関与してしまったDF根本健太は公式戦2試合連続、MF植木颯は4試合連続で不出場に終わった。

     一方で、その間にスーパーサブ的な役割を果たしたMF笹修大が公式戦4試合連続ゴールをマークして自身の存在価値を示した。また、GK西川周作が遠藤保仁氏(現・ガンバ大阪コーチ)のJ1通算最多出場記録672試合にあと1試合まで迫る中でセカンドGKの福井光輝もカップ戦でコンスタントに先発出場している。

     特筆すべきは曺監督の巧みなチームコーディネイト術で、一定期間起用しなかった選手にも必ず挽回の機会を与え、当該選手がそれに応えれば評価を改めたりもしている。先述した根本はJリーグ第11節・ジェフユナイテッド千葉戦で先発復帰してセットプレーからヘディングシュートを決め、続く第12節のV・ファーレン長崎戦では相手の攻撃の要であるマテウス・ジェズスを完封した。また植木も長崎戦で先発に抜擢されて公式戦4試合ぶりに出場し、64分間のプレーだったが中盤のトライアングルの一角として勝利に貢献した。

     試合後に植木に聞くと、「曺監督から細かくは説明されなかったが、FC東京戦の僕のプレーに物足りなさがあったのは確かだと思います」と受け止め、現状から脱却する必要性を感じていたことを吐露している。

     出場機会を得られなかった選手がその後に活躍しているケースは他にもある。長崎戦でマテウス・サヴィオの決勝ゴールをお膳立てするスルーパスを通したサミュエル・グスタフソンは自らのストロングポイントであるゲーム支配力を現チームの戦術にアダプトさせた典型的なタイプだ。

  • 中央突破への執着と変化のさじ加減

    Urawa Red Diamonds v V-Varen Nagasaki - J.LEAGUE MEIJI YASUDA J1
    J.LEAGUE

    長崎戦ではグスタフソン(写真)のスルーパスとサヴィオの縦ランニングからサヴィオが71分に決勝点を奪っている

     曺監督が採る戦術・戦略の一貫性と変化のさじ加減も興味深い。

     攻撃の骨子はピッチを縦に5分割した5レーンの中央と両ハーフレーンを重視する『センターアタック』で、極端なまでの中央突破はここまでの全試合を通して貫かれている。ちなみに相手が退場者を出して数的優位な状況が長く続いた第10節の水戸ホーリーホック戦はサイドアタックへの偏重が見られたが、これは10人での防御姿勢を貫いた相手を攻略する手立てとしてやむなくサイドレーンを活用したことを安居海渡が試合後に説明してくれた。

     その点を教訓として、5-3-2のディフェンスブロックで懸命に堅守を築いた長崎との試合では中央レーンと両ハーフレーンの幅だけを活用してグスタフソンのスルーパスとサヴィオの縦ランニングで相手守備をブレイクし、決勝点をマークしている。

     一方で、浦和は対戦相手のシステムを鑑みてミスマッチで臨む形が見られるようにもなっている。

     水戸、千葉はいずれもFC東京と同じく4-4-2システムを採用するチームだったが、浦和はこれに対して3-4-2-1システムで向き合った一方、横浜FCや長崎のように3-4-2-1システムを用いるチームには一転して4-1-2-3システムを形成してミスマッチ状況を生み出している。金子拓郎やサヴィオなど個人能力の高い選手が在籍していてもミスマッチを好む傾向があるのは興味深い事象だ。

     ただ試合状況を厳密に精査すると攻撃時はギャップを突き、守備時は人数を揃えているようにも見える。サッカーの世界では攻撃と守備が連続しており、それぞれを切り分けることは現実的ではない。それでも戦術的な狙いとして攻撃時のミスマッチ、守備時のマッチアップを重要視している節がある点に曺監督の狙いが透けてみえる。

  • ハイプレスよりもコンパクトネス

    Urawa Red Diamonds v JEF United Chiba - J.LEAGUE MEIJI YASUDA J1
    J.LEAGUE

    第11節の千葉戦では交代出場した笹修大が3点目を決めた

     今季始めに曺監督が標榜した縦方向への強い志向性も良い意味で変容している。前線からのハイプレスはより現実に則した安定化が図られ、前線ユニットと中盤のライン間が間延びする頻度は減った。おそらくチームの最優先は前線からのプレス強度ではなくチーム全体のコンパクトネス維持なのだろう。

     直近の長崎戦ではジョナタン・ジュニオールやジェズスなどの個人能力の高い相手攻撃陣と対峙しても果敢にバックラインを押し上げ、前線から後方までの縦方向を約30メートルの距離で保ちながらゲームをコントロールしていた。ハイラインになれば必然的に前線プレスの開始位置も敵陣深くになる。前線プレスを名目にするのではなくチームコンセプトに則った自然発生的なものと捉えると、浦和の好戦的な戦術を正しく理解できると思う。

     今の浦和は選手間の距離が狭まることのメリットを他チームとは異なるベクトルで示している。

     通常は選手間の距離を縮めることで相互コンビネーションの機会と精度の増加を目論むが、このチームの場合は狭小エリアでの連続した単独アタックを武器としている。千葉戦の先制点は1トップの肥田野蓮治が相手ペナルティーエリア中央を強引に縦突破する隙間にマテウス・サヴィオが縦パスを通し、それを相手CBが懸命に処理して小クリアしたボールを金子拓郎がノートラップで叩いた。

     パスワーク連動ではなく単独での仕掛けを狭小エリアで畳み掛ける。これは守備面でも同義で、味方がボールを逸した局面で一次、二次、三次の個人奪取が連続している。この概念は局面を相手に突破されると一転して大ピンチに陥る危険性を孕むが、選手たちに躊躇する素振りは見られない。

  • 柏、神戸との上位対決、問われる真価

    Kashiwa Reysol v Port FC - 2026-27 AFC Champions League Elite East League Stage
    Getty Images Sport

    次節、かつて浦和を率いたリカルド・ロドリゲス監督が指揮する柏と対戦する

     今季ここまで町田、サンフレッチェ広島、FC東京といった強敵に敗れてきた浦和は今週末から来週にかけてのリーグ戦で柏、ヴィッセル神戸との上位陣対決が連続して控える。実力上位、あるいは拮抗する相手との戦いでクローズアップされるのはやはりマッチアップでの趨勢だろう。

     先述したように浦和は特に守備時におけるマッチアップを重要視していて、このバトルで劣ると失点リスクが大幅に高まる。長崎戦ではCBの宮本がジョナタン、根本がジェズスを封殺して無得点に抑えたが、このパフォーマンスを今後も継続できなければ上位進出は望めない。

     ただし、直近の相手である柏には他にも警戒すべき点がある。柏は相手のマッチアップ策を強引にミスマッチにするチーム戦術を有する。守備者一人に対して3人、4人が殺到する柏の好戦的な攻撃志向は難儀で、それに付き合って局所に多人数を集めれば狭小パスワークを十八番とする柏の土俵に乗って深みに嵌まる。浦和にしてみれば局面が狭まろうがマッチアップ状況を崩さず先述したようにファンブルボールをいち早く回収して攻撃へ転じたいだろうが、それは柏側も同様に望むシチュエーションであることを事前認識すべきだろう。

     対戦相手によってフレキシブルに変化するシステム&陣容、攻撃時のミスマッチ・守備時のマッチアップといった様態変化、先鋭化するセンターアタック、あくまでも単独での畳み掛ける攻撃&守備と、昨今のJリーグチームとは毛色の異なるチームスタイルを標榜する今季の浦和は観る者に様々な視点を提示している。

     曺監督は言う。

    「今は選手たちに『RED GAME』という話をしていますが、レッズ仕様に変えていかなければいけない。それはプレーシステムなのか、時間帯による戦い方なのか、いろいろあると思いますが、同じチームでも年ごとに変化していくのがチームのあるべきスタイルだと思います」

     時代のトレンドを適切に捉えているのは果たして誰か。『RED GAME]』の構築過程にある浦和は、自問自答しながらも、自らはあくまでも前を見据えている。(了)