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20261005-ajian-games-final-japan-korea©Hiroyuki Sato

「誰が出ても強くならなきゃいけない」。アジア大会準優勝の大岩ジャパンが示した五輪への備え

第20回アジア競技大会(愛知・名古屋)の男子サッカー決勝が3日に豊田スタジアムで行われ、大岩剛監督率いるU-21日本代表は韓国代表に0-1で敗れ、3大会連続の準優勝となった。

Yuki Matsuo
  • 3大会連続の日韓決勝で敗れ、2010年大会以来の優勝には届かなかった。それでも、2028年ロス五輪を目指す大岩ジャパンの戦いには、結果とともに振り返るべき特徴がある。準決勝では先発11人、決勝でも10人を変更。大胆な選手起用で決勝まで進んだチームは、約3週間の戦いで何を得てどんな課題を残したのか。(取材・文=松尾祐希)


  • 準決勝は11人、決勝も10人を変更

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    ©Hiroyuki Sato

    決勝・韓国戦の先発はGK荒木琉偉、DF:佐藤海宏、市原吏音、岡部タリクカナイ颯斗、梅木怜、MF:中島洋太朗、嶋本悠大、大関友翔、FW:横山夢樹、 ンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄、石井久継だった

    準決勝で先発11人を総入れ替えし、決勝でも10人を変更する。負ければ終わりの舞台でも、大岩剛監督は大胆な選手起用を貫いた。

    「意図はありますけれども、ここでは控えさせていただきたい。決勝もあるので」

    ウズベキスタンとの準決勝後、指揮官はターンオーバーの狙いについて明言を避けた。それでも、今大会を通じた選手起用を振り返れば、一部の主力に頼らず、チーム全体で勝ち上がろうとする姿勢が浮かび上がる。

    キルギスとのグループステージ第2戦(7-0)は初戦から先発7人、タイとの第3戦(3-0)は8人を変更。ノックアウトステージに入ってからは、さらに大胆な策を講じた。北朝鮮との準々決勝(1-0)は9人を入れ替え、ウズベキスタンとの準決勝(1-1/PK9-8)は11人を総入れ替え。韓国との決勝にも10人変更した先発で臨んだ。

    GKも例外ではない。A代表歴を持つピサノ・アレクサンドレ幸冬堀尾(名古屋グランパス)と、今年1月のAFC U23アジアカップで優勝を経験した荒木琉偉(ガンバ大阪)を交互に起用。ピサノが初戦に出場すると、ACLE出場の関係で合流が初戦当日となった荒木が第2戦目のゴールマウスを預かり、以降はその順番でピッチに立った。

    細かい狙いは指揮官にしか分からない。ただ、選手の合流時期が異なる変則的なチーム編成と、中2日、中3日の連戦を乗り切るうえで、重要な戦略だったのだろう。


  • 「誰が出ても強くならなきゃいけない」

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    ©Hiroyuki Sato

    キャプテンのDF市原吏音(AZ)「良いチャレンジだったなと思う」と手ごたえを口にした

    選手たちもこの戦い方をポジティブに捉えている。

    「誰が出ても強くならなきゃいけないし、実際に本大会、オリンピックになったときに誰かが呼べないとか、アクシデントがあった時にそうじゃないと勝てない」

    キャプテンのDF市原吏音(AZ)はそう言い、「良いチャレンジだったなと思うし、実際にそれで準決勝でウズベキスタンにも勝てたので」と手ごたえを口にした。

    そのチャレンジは、出場時間にも表れている。

    残念ながらGK小林将天(松本山雅FC)は出番がなかったものの、GK2人とフィールドプレーヤーの20人全員が出番を確保した。出場時間が200分に満たなかったのは、決勝で前半28分に負傷交代したFWンワディケ・ウチェブライアン世雄(オールボーBK)と、FW福永裕也(京都産業大)の2人だけだ。

    4試合分に相当する360分以上試合に出た選手は、FW横山夢樹(セレッソ大阪)、MF大関友翔(川崎フロンターレ)、MF嶋本悠大(清水エスパルス)の3人だけ。一方、5試合を戦った韓国代表はメンバーをある程度固定し、出番がなかったGKの2人を除くと、100分未満のプレーで終わった選手は6人いた。そうした事実を踏まえても、日本は準決勝の延長を含む6試合570分を、多くの選手にうまく振り分けながら勝ち上がったことが見て取れる。

    出場時間を分散させるだけなら、選手を入れ替えればよい。しかし、真剣勝負の場で勝ち上がりながら、多くの選手が経験を積めた点に価値がある。異なる組み合わせで一発勝負を乗り越え、決勝の舞台まで戦えたことは、チームの選手層を広げるうえで大きな意味を持ったに違いない。

  • 海外組が途中合流したチーム事情

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    ©Hiroyuki Sato

    韓国は23歳以下の選手を中心にオーバーエイジも組み込んだ編成でこの大会に臨んでいた

    こうした選手起用を考えるうえで、今大会のチーム編成にも触れておきたい。

    参加国の大半はU-23世代で編成しており、特に韓国は兵役免除につながるため「23歳以下の最強メンバー+オーバーエイジ3枠」といった“最強布陣”を編成し、本気で金メダル獲得を目指している。

    一方、日本にとってアジア競技大会は、次の五輪を目指す世代の強化の場として位置づけている。男子サッカーに原則23歳以下の年齢制限が導入された2002年の釜山大会以降、オーバーエイジ枠を使わず、次の五輪世代(U-21)を中心に臨んできた。

    海外組の増加や国内クラブの試合日程との兼ね合いもあり、近年は主力を揃えることが難しくなっている。そのなかで、出場機会が限られるプロ選手や代表経験の少ない大学生を招集し、代表候補の裾野を広げる場としても活用されてきた。

    今回は、その招集事情に変化があった。今年から9月と10月のインターナショナルマッチウィークが統合され、9月21日から10月6日までの16日間となった。そのため大会の後半がこの期間と重なり、海外組も招集しやすくなった。

    選手の発掘とチームの強化を進めながら、海外組の力も生かして自国開催での優勝を目指す。それが今回のチームのスタンスだった。

    もっとも、大会の日程が全て代表活動期間に収まっていたわけではない。グループステージの第1戦と第2戦は期間外だったため、日本は当初、国内組を中心に大会をスタートし、第3戦から海外組を加える構想だった。

    市原は予定を前倒しして9月18日に合流し、20日の第2戦に途中出場。DF小杉啓太(フランクフルト)、MF石渡ネルソン(シント=トロイデン)、ンワディケも第3戦を前にチームへ加わった。

    大会を戦いながらメンバーが揃っていく状況で、選手の状態を見極め、組み合わせを調整し、勝ち上がる。今大会には、そうしたチームマネジメントの難しさもあった。

  • ロス五輪へ残った成果と課題

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    ©Hiroyuki Sato

    大岩監督は2027年3月からA代表とロサンゼルス五輪世代の監督を兼任する

    アジア競技大会で得た経験が、その後につながった例は少なくない。

    2018年大会には、当時大学生だったFW上田綺世(リール)やMF三笘薫(ブライトン)、松本に所属していたFW前田大然(イプスウィッチ)、川崎Fからベガルタ仙台に期限付き移籍していたDF板倉滉(ボルシアMG)らが出場。当時トッテナムでプレーしていたFWソン・フンミン(ロサンゼルスFC)らを擁する韓国との決勝は延長戦までもつれ、日本は1-2で敗れたものの、銀メダルを手にした。

    コロナ禍の影響で1年延期され、2023年に開催された前回大会も、同年代の主力組とは異なるメンバーを中心に編成されたチームが決勝まで進んだ。そこで右SBとして台頭したDF関根大輝は、翌年のパリ五輪出場、そしてA代表入りも勝ち取った。MFイ・ガンイン(アトレティコ・マドリー)が出場した韓国との決勝で敗れたが、先制点を奪うなど可能性を示すゲームだったのは記憶に新しい。

    この年代はすでにMF佐藤龍之介(バレンシア)、FW塩貝健人(ヴォルフスブルグ)、FW後藤啓介(フライブルグ)、MF齋藤俊輔(ウェルステロー)のようにA代表に活動の軸を置いている選手たちもいる。アジア大会に参加した選手たちにとっても、この大会を今後の飛躍につなげられるかが重要になる。同時に、チームとして蓄積した経験を、2年後の大舞台へ生かしていかなければならない。

    ロス五輪最終予選を兼ねる2028年のAFC U23アジアカップは、日本開催が決まっている。自国開催の大会で期待を背負い、一発勝負を勝ち上がる経験ができた点でも、今回の戦いには意味があった。

    今後も、招集したい選手を常に揃えられるとは限らない。A代表での活動や所属クラブの事情、負傷などによって、チーム編成が変わることもあるだろう。誰かを呼べないことが、そのままチームの力の低下につながらないようにする。そのための実践の場にもなった。

    もちろん、準優勝という結果と、選手起用の成果だけで大会を評価することはできない。韓国との決勝では、最後まで得点を奪えず、2010年大会以来の頂点には届かなかった。筆者の目には、決定力や個々で相手を止め切る守備力に、まだ差があるように映った。

    多くの選手が経験を積めたことと、一人ひとりが勝負を決められる力を備えることは、別の課題だ。選手層を広げながら、個の力も引き上げていく必要がある。

    それでも、選手を大幅に入れ替えながら決勝まで戦い抜いた経験は、招集の制約や不測の事態に備えるうえで大きい。誰が出ても勝てるチームへ。その土台を広げた大会だった。