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「ミスキック」でもスタンドが沸く…日本代表が孕むGK鈴木彩艶依存のリスク

【日本代表コラム】日本代表は1日に神奈川県の横浜国際総合競技場でキリンカップサッカー2026のエクアドル代表戦を行い、0-0のまま迎えたPK戦を5-4で勝利した。

Rintaro Asano
  • ゴールまで狙っていた背番号1

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    ©Kenichi Arai

    獅子奮迅のプレーに6万5012人の観客は大きな歓声をあげた

    鈴木彩の好プレーを見ていたら、ドーパミンが溢れ出た。

    今回の活動で初めて先発出場した背番号1は期待どおりのプレーを披露した。所属クラブのアストン・ヴィラでも見せているようなロングキックはもちろん、ピッチを切り裂くような縦パスで、エクアドルの守備網を突破した。「キーパーからのシュートが直接入ればいい」とゴールまで狙っていたという。

    極めつけは、チームを救うPKストップだ。「ボールを見ながらコースが甘くなったら取れるかなという感覚はあった。止めたシーンは先に動くことを意識していた」と相手の3人目が放ったシュートを、横っ飛びでセーブして、獅子奮迅の活躍だった。

    これらのプレーが飛び出すたびに、6万5012人の観客は大きな歓声をあげた。興奮冷めやらぬまま試合後のミックスゾーンでは真っ先に鈴木彩のもとへ向かった。目はガンギマリだったかもしれない。

    しかし、鈴木彩の一言でハッとさせられた。

    「チャンスになったシーンもありましたが、ミスキックになってしまってもスタンドが沸いていた。自分としては『ミスキックだな』と思いながらも…」

    鈴木彩のキックは日本の強力な武器となった。たとえそれが「ミスキック」でもスタンドが沸く。それほどまでに鈴木彩のキックは、日本の大きな武器として認識され始めている。ただ、期待が高まるほど考えておきたいこともある。鈴木彩は「チーム、観客・ファンのみなさんも、僕からチャンスが生まれると認識してくれるので、やりやすい雰囲気」とほほ笑むが、依存は禁物だ。

    森保一監督が鈴木彩を重要なピースとして位置付けているのは明らかだ。指揮官はエクアドル戦後に守護神への信頼を語った。

    「彩艶からの組み立てだけではなく、一気に背後を狙うトレーニングも選択肢の一つとして、プレーモデルを作っています。状況に合わせて、うまく彩艶の良さを引き出しながら、攻撃のチャンスにつなげてくれるシーンが今日ももいくつか見られた」

  • 鈴木彩の「キック」を生かす上田綺世

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    Getty Images Sport

    ファーストプレーから背番号1の放つロングキックのターゲットとなった


    指揮官の言葉どおり、イレブンは鈴木彩を存分に生かして戦った。17分にはDF瀬古歩夢が右サイド奥深くまで駆け上がり、ロングボールに競り勝って味方につなげた。さらに23分には鈴木彩の低弾道パスがピッチ中央のMF久保建英へつながり、最後はMF中村敬斗のシュートまで持って行った。どれも“鈴木彩艶”がいるからこそ、成り立つプレーだった。

    そして鈴木彩のキックと高い親和性を発揮したのは、FW上田綺世だった。

    後半から投入されたストライカーは、ファーストプレーから背番号1の放つロングキックのターゲットとなり、以降もパワフルなポストプレーで、ボールを収めていた。

    上田は「彩艶のキックが飛ぶという情報だけでも、相手はディフェンスラインを下げなきゃいけない。僕らはそれを狙いつつ、裏にも抜けられるので、ビルドアップは格段にしやすくなった」とうなずいた。

    また右ウイングバックで出場したMF堂安律は「サイドから『すげーな』と思いながら見ていました。あそこでFWが起点になってくれれば、サイドで1対1をするシーンが増える」としつつ、「助かる戦術のひとのタスクになる」と称賛した。

    絶大な存在感だ。だからこそ懸念されるのは、鈴木彩と上田が同時出場していないときに、どう戦うかという点だろう。

  • 「彩艶+上田」以外の最適解はあるか?

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    (C)Getty Images

    堂安律は「僕は間違いなく世界一のキーパーになると思っている」と絶賛する

    先発出場したFW谷村海那は、思うように鈴木彩のロングフィードを収められなかった。そもそもポストプレーを得意とするタイプではないが、「縦パスや長いボールを、ただ背負うだけじゃ勝てないなと思いました」と課題を口にしている。

    日本の攻撃面では、短いパスからのビルドアップでは、なかなか思うように前進できなかった。鈴木彩のキックを起点にチャンスを作っていた一方で、日本の枠内シュートはわずか1本という現実もある。

    スタジアムが沸いた鈴木彩のキックだが、それだけでは危険だ。

    鈴木彩はアストン・ヴィラのウナイ・エメリ監督について「僕のキックをチームの戦術として捉えてくれている。僕が持ったときの立ち位置や、チーム全体としてどうやって僕のキックを生かすか、共通意識を持ってできている。監督と僕のスタイルがうまくマッチしていると思います」と明かした。それは同時に鈴木彩一人の不在で、チームの戦い方が変わってしまう可能性があることも意味している。

    同じような懸念は、日本代表にも当てはまるのではないか。それほど特徴的な武器を戦術に組み込めば、当然、その選手がいない状況への備えも必要になる。

    もしも来年1月のAFCアジアカップ前に鈴木彩と上田のどちらかが負傷してしまったら? 相手の対策によって完封されてしまったら? 悲観的な“たられば”を言いたくないが、備えあれば患いなしだろう。日本代表はあくまで鈴木彩を一つのオプションとして捉え続け、“頼り過ぎない”勝ち方も構築したい。

    とはいえ、そのことを一番自覚しているのも鈴木彩自身だろう。

    背番号1は「イタリアでもキックからチャンスを作ることはやっていましたが、見られ方が違う。たくさんの人が見てくれている、フィーチャーされている」としつつ、冷静に言葉を続けた。

    「そこまで自分からやろう、やろうという感覚はない。相手の動きを見ながら、空いているところにつけようとしています。ゲームで自分のキックを発揮できていない場面があってもなんとも思っていません。キーパーとしては、きょうもキックに目が行きがちですが、ゴールを守ることが一番の優先順位にある」

    鈴木彩とどう向き合い、どのように生かしていくか。堂安が「僕は間違いなく世界一のキーパーになると思っている」と絶賛する大器の存在感は、これからも増していくばかりだろう。

    取材・文=浅野凜太郎