Fernando Redondo Clarence Seedorf Savio Bortolini - Real Madrid

「社会は変わってしまった。若者に適応しないと」3度のCL覇者、セードルフが語る時代の変化【独占インタビュー】

いよいよチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦はセカンドレグに突入。2018-19シーズンの欧州8強チームが決定することになる。5日には、サンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリーとアヤックスが対戦。ファーストレグを2-1で制したレアル・マドリーだが、直近のクラシコ2連戦で2連敗。周囲も騒がしくなる中で、オランダの強豪チームを迎える。

そんな大一番を前に、『Goal』は両チームに在籍し欧州の頂点へ立った男、クラレンス・セードルフ氏に独占インタビューを敢行。その他ミランでもタイトルを獲得し、異なる3クラブでCLを優勝した唯一のレジェンドである。

現在はカメルーン代表を指揮する元オランダ代表は、レアルとアヤックスというクラブのこと、自身のキャリアのこと、そしてフットボールを取り巻く環境の変化など、多くを語ってくれた。

以下に続く

インタビュー=アルベルト・ピネーロ/Alberto Pinero

■マドリー次期指揮官候補に挙がったのは名誉だった

2018_8_5_seedorf(C)Getty Images

――新たな冒険に踏み出したわけですが、カメルーンというチームはいかがですか?

「カメルーンについては、あらゆることを改善しているところだ。まだプロセスのほんの始まりに過ぎない。まだワールドカップが行われている間に、私は会長と面会したんだ。ほんの数カ月前まで職責にあった人物だ。彼らは新たな指揮官を探していた。条件は若い人物で、すでに国際経験を有し、選手や国をインスパイアしてくれる存在であること。彼らは国際舞台でのリスペクトを回復し、かつて以上の存在になりたがっていた。カメルーンはアフリカネーションズカップでは優勝(5回)しているが、直近のW杯には出場できていない。これは大きな失望だったようだ。彼らは非常に深刻で真剣なプロジェクトを始めようとしていた。それは素晴らしいプロジェクトに思えたんだ」

「アフリカには多くの才能がいる。チームを取り巻く組織面で改善していくという“闘い”がある。だが同時に良い緊張感もあるんだ。私のもとには素晴らしい選手のグループがいる。まだわずか5試合だが、これほど良くなってきたことに満足しているよ。ここでは試合数も少ないし、トレーニングセッションも限られている。だがナショナルチームでの取り組みというのはこういうものだね。我々はここまでの仕事で連帯と団結を獲得できたと思う。それはほんの数日の間で出来ることすべての質を高めることができるものだ」

――あなたは代表監督だけでなく、まだクラブの指揮官という選択肢を捨てていないように見えます。恐らくはこれまでのようなシーズン途中での就任ではなく、プロジェクトの始まりから携わりたいはずです。デポルティボ・ラ・コルーニャで指揮(2018年)をとったスペインに戻りたいという希望はありますか?

「そうだね、確かに不幸にもデポルでの結果は我々が求めていたものではなかった。だがとても良い経験ができたと思っている。試合結果、技術・戦術・肉体面における試合やチームのパフォーマンス……いずれの側面でも何らかの良いものを残せていた。私にしてみれば、スペインでの仕事に対する好感触を手にしたよ。あそこは世界で最も強力なリーグの1つだ。いつの日かあそこでチームを率いることができれば、それは最高のことだね」

――レアル・マドリーの監督という可能性もあったと思います。なぜ最終的にそうはならなかったのでしょうか?

「簡単なことだ。彼らには彼らの考えがあり、それが選ばれただけのことさ。マドリーのような偉大なクラブでは、常に全ての可能性が検討される。それは簡単なことではない。ああいった重要な決断を短時間の間に全て行わないといけないんだ。だがこれだけは言いたい。その選択肢の中に自分が入っていたという事実は、私にとって名誉なことだよ。難しい時期もあったが、あそこは私にとって我が家のような場所なんだ。いつだってね。いつの日かあそこに戻れるならそれは大きな名誉だ。だが最も大切なことは、いまのマドリーが競争力を維持することだ」

「彼らはこの5年間にとてつもないことを成し遂げてきた。だから現在のパフォーマンスに失望するのは普通のことだ。彼らだって人間で、マドリーと対峙する選手は皆いつも以上のなにかを発揮してくる。移行期にある今は簡単な時間ではないだろう。だが困難な時期にも再び這い上がってきたのがこのクラブだ。再び団結し、強さを取り戻すだろう。いまは(指揮官サンティアゴ)ソラーリにリスペクトを払うべきだ。難しいシーズンで仕事を引き受けた。我々は再びチームがポジティブで競争的な状況に戻るように彼をサポートすべきだと思うね」

■フットボールを取り巻く環境の変化

Carlo Ancelotti & Clarence Seedorf AC Milan 080921

――あなたの指揮官としてのキャリアの話に戻りますと、素晴らしい“指揮官養成講座”を受けたのではありませんか? 現役時代にはルイ・ファン・ハール、ファビオ・カペッロ、ユップ・ハインケス、マルチェロ・リッピ、そしてカルロ・アンチェロッティのもとでプレーしました。この中で、監督としてのいまのあなたに似た人物は誰でしょうか? いまも思い出す監督との逸話などありますか?

「そうだね、こうした経験が間違いなく役に立っているよ。特にプレッシャーにさらされた場面でね。勝つために取り組むとき、外部から多くのプレッシャーを受けるんだ。私は人生の中でそうした状況に慣れてきた。私のようなキャリアを歩まなかったら、こうはいかないかもしれないね。物事に正しく対応することが大切だ、特にビッグクラブで働く場合はね。もちろん小さなクラブでだって同じだ。いかにバランスをとるか、その術を知っていなければならない」

「一方でどんな監督にも個性がある。もちろん、異なる人間だからだ。これは“本物”の指揮官になるために大切なことだ。私がともに働いてきた監督は全員、異なる個性を持っていたよ。異なるフットボールを見て、それぞれ違った困難を乗り越え、幸福を掴んできたんだからね。私は好奇心が強いから、彼らをいつもよく観察していたんだ。さっき君があげた監督たちと私は良い関係を築いていたから近くで彼らと接することができたし、またチームのために策を考える彼らを間近で見ることができた。私は選手として長年そうやって監督たちの考えを学べる環境にいたんだ。それは選手視点とは全く異なるもので、だから私は選手と監督の中間に立つ考え方を模索したよ。チームでは時々、監督が下す判断が選手には理解できないといったことがある。そんな時、知っての通りだが、私はチームの団結を維持するためにいくつかの情報を提供していたんだ。時々、そういった役割をする選手が必要になる。私は彼らからそういう考え方や、状況への対応の仕方を学んだ。また同様に、何をしないかも学んだよ。チームに機能しないこととは何かを学ぶことがより重要だと考えている。監督はフィードバックをしないことがある。何かを提示することで、選手たちはそれぞれの考えについて話し始めるんだ」

「24年間ロッカールームにいて、私は選手はどのように考えるかを理解した。好ましいこと、必要なこと、何がバランスを保つのか。それらによってチームは機能する。選手たちは時々、集団について考えないことがある。だが選手個々人にはそれぞれの目標があるんだ。指揮官の役割は、そういった選手たちを束ねる共有の目標を立てて、皆を包み込む。そしてその目標に向けたサポートと指示を出すことだ。私がともに働いた監督たちは概して集団にとってのベストコンディションを作り出し、ピッチ上で最高のパフォーマンスを披露できるよう試みていたよ。選手個人がより重要視されることはない。我々が数々のタイトルを獲得できたのは、チームにエゴがなく、なによりも集団が重要視されたからだ。そして私は監督たちがそのバランスを維持しようと努力する姿を見てきた。それは日々の取り組みであり、ピッチ内外で続けるべきものなんだ」

「3つの世代を過ごしたいま私が言うべきことは、監督はこれまで以上に、ピッチの内外で選手個々人と向き合う必要性が増した、ということだ。彼らとより多くの時間を費やし、彼らに自分自身のことを考えるように刺激するんだ。どのように自分に向き合うか、プロフェッショナルな存在になるには、自発性を維持するには、といったことだね。外部からもらう励ましは決して長続きしないものなんだ。私自身を含め、偉大なチャンピオンたちはいつだって自発的に向上する意思をもって取り組んでいたんだ。それが日々の自分自身を支えてくれる。今日では、そのことにより時間をかける必要がある。若者たちが能力に欠けるからではない。だが社会が変わってしまった。集団間での社会性がかつてより失われており、人々はより自分の世界を持つようになった。iPadや携帯電話といった世界をね。そして我々大人はそうしたやり方に適応して、彼らとのコミュニケーションを図っていかないといけない。もっと外側に出て行ってもらうためにね」

■すべてのクラブには運命ともいうべきサイクルがある

Fernando Redondo Clarence Seedorf Savio Bortolini - Real Madrid

――あなたがチャンピオンになったときの話が出ましたが、1995年に欧州王者となったアヤックスはどんなクラブでしたか? ファン・ハールが今日のチームと比較していましたが……。

「ああ、その話は聞いたよ。私はそうした比較は危険だと考えている。95年時点でのチームだからだ。あの当時は欧州最高のクラブと同列にいた。比較すること自体は可能だ。だが選手たちのレベルについては比較できないだろう。アヤックスにいる選手たちは18,19,21歳とかそういった若者たちだ。25~27歳くらいの選手たちと交じり合ったチームだが、それでも若い集団だよ。これは小さな違いだ。すべてのビッグクラブでは、運命ともいうべきサイクルがある。リヴァプールやバイエルンが良い例だ。欧州カップを4つ、それ以上獲得するようなクラブがあり、感動的な瞬間もある。すべてがうまくいく時期があるんだ。アヤックスにもそうした瞬間が来るだろう。彼らが4つ目の欧州カップを獲得してから20年以上が経っているからね(※最後の優勝は1994-95シーズン)。選手たち、そしてその歴史に対してリスペクトすべきだ。重要なことだよ。ミラン、マンチェスター、マドリー、バルセロナ、バイエルン、リヴァプール……こうしたクラブは“ヨーロッパのDNA”を持っている。これは説明が難しいもので、まるでフットボールの神様が、いまはこのチーム、今度はこのチームというように手掛けているかのような感じなんだ。選手たちも、無意識にこういったことを感じているだろう。観衆が彼らをそのレベルにまで導き、成長できる可能性を自覚させるんだ」

「1stレグでマドリー相手にアヤックスが見せた試合は、ここ数年は見られなかったものだ。だがマドリー相手にはすべてを出し切る必要がある。いまはまだ何かが足りないね。マドリーはいま最高の日々を過ごしてはいない、にもかかわらず試合に勝っている。これは驚くべきことだよ。アヤックスにはタレントがある良い選手が揃っている。オランダ国内では良いプレーで勝利を掴めず苦しんでいるが、こちらも悪いプレーだったとしても勝っている。偉大なチームの強みだね。常に望むようなプレーができるわけではないんだ。対戦相手が自分の良いプレーを消すこともある。こうした点については分析して、成長の糧にすべきなんだ」

――インスタグラム(@clarenceseedorf)で、あなた自身のマドリー移籍について書かれていましたね。もう少し詳細について伺えませんか?

「とても興味深いものだったんだ! たしか当時私は14歳で、代理人が家に来るなりこう言ったんだ。『見ろ、書類だ』ってね。当時レオ・ベーンハッカーがマドリーに在籍していて、オランダでは毎週マドリーの試合が観られていた。チェンド、ミチェル、ブトラゲーニョといった選手がいたよ。私はユースの大会で2回ほどマドリーを見た。それは既に特別な出会いだった。『レアル・マドリーが君を欲しがっている』と代理人が言うものだから、私は『本当かい!?』と舞い上がったよ。『だけどそのためにはすぐに向こう(スペイン)で暮らさないといけない』と彼は言った。素晴らしいことに、両親は非常に明快だった。それはラッキーなことでもあったね。最後には私も彼らに同意した。なぜなら私はアヤックスや学校で楽しく、幸せだった。学業を終えたかったしね。だから我々家族はそれを断ったんだ。『これが起こるべき出来事なら、きっと将来また起きるはずだ。マドリー移籍はいつだって目標だ。だが我々はいま考えていることに集中してこう』ってね。これは素晴らしい瞬間だった。だってそうだろう、『ワオ!彼らは海外から僕のことを見てくれてる!』って思ったんだから(笑)」

「私は14歳だったからね! 我々はアヤックス、そしてオランダ代表として多くの国際大会を戦った。その結果多くの最優秀選手とか得点王といったトロフィーを家に持ち帰ったよ。だが世界がどのように動いているのかとか、そういったことを何も知らなかった。チームとともにプレーすることだけ、より良い自分になるために頑張る、それがすべてだった。だがその瞬間から、夢見た世界がすぐそばにあることに気づいたんだ。アヤックスのトップチームに入れれば、いつの日かロス・ブランコスのシャツに袖を通せるんだってね。当時はクライフとバルセロナの時代でもあった。衝撃的なクラブがいくつもあった。マドリー、バルセロナ、それにミラン。これらのチームでオランダ人選手は大きなインパクトをもたらしていたんだ」

■苦難の時を受け入れる知性も必要なんだ

2019-03-05-modric-kross(C)Getty Images

――アヤックスでの最年少デビュー(16歳242日)、あなたの記録は長く破られませんでしたね。その経験から、マドリーの若武者についてお聞きします。あなたから見て、ヴィニシウス・ジュニオールはどうするのが最善だと思われますか? 既にそうなりつつありますが、スターとしての扱いを受け入れるべきか、それとももう少し我慢すべきなのか……。

「ヴィニシウスは非常によくやっているよ。試合でのプレーが彼に経験を与えている。間違いなくあの少年には才能があるね。だが、我慢が必要だ。本来なら若者にプレッシャーや責任を強いることはできない。若者は失敗が許されるように守られるべきだ。得点し失敗し、パスを通しまた失敗する……、少しずつ適応できていく。周囲の環境が若者を守ること、それが一番大切なことだ。マドリーはずいぶん前から彼を買っていた。幸運にもカスティージャからトップチームへと昇格した。クリスティアーノ・ロナウドが去り、他の選手たちも真価を発揮できない中、彼は良いオプションとなっているね。彼は自分の空間を築きつつある。個性的で、多くの仕事をこなしているね。競争的な選手であり、チームを助けていると思うよ」

「すべてがうまく運ばないのは普通のことだ。だが彼がピッチ上で多くの貢献を見せ、決して適性があるわけではない仕事にも打ち込む姿勢は称賛すべきだろう。一方で彼がその働きを継続できない可能性にも備えておくべきだ。若い選手とはそういうもので、誰にでも起こることだ。30年間常に継続できるのは一握りの怪物だけだ。ロナウド、リオネル・メッシ、クリスティアーノ、マラドーナ、それにペレくらいだ。これについてもっと冷静になるべきだね。ミランの(アレシャンドレ)パトを見てくれ。彼は18歳でやってきて、当初はゴールを決めて多大な期待が寄せられた。その後、現在までのパトのキャリアを見てごらんよ。批判するわけではない。だがフットボールを知っていれば、5,6年見ていればその少年がスターになれるか否かわかるはずだ。そう考えれば、ここ数週間の試合でヴィニシウスが見せる取り組み方、相手との対し方、味方を助けるためのランニング……このまま精神的にも成長できれば、前にも言ったが彼は偉大なキャリアを歩めるはずだ」

――多くの人が、ヴィニシウスとレギロンのことを話し、同時にギャレス・ベイルやマルセロ、トニ・クロース、イスコといってスターが、既にクラブを去ったクリスティアーノのように出ていくのではという話題で持ちきりです。この5年で4度CLを制したマドリーは今、転換期にあるのでしょうか?

「それは私にはわからないよ。常々私が言っているのは、若い選手が選手として、人として成長し、『レアル・マドリーとはなにか』という意味を学ぶためには、年長者の存在が必要だということだ。クラブは良くやっているだろう。カギとなる選手をチームにとどめ、現在も競争力を維持しているからね。ラ・リーガで3位、CLでも勝ち残っている。コパ・デル・レイでは準決勝敗退だが、相手はバルセロナだ。負けて恥ずかしい相手ではない。彼らはここ数年勝利し続けてきて、今も素晴らしい年を過ごしていると考えている。彼らはまだタイトルを争っているからね。今いる若者たちだけで、過去数年でやってきたようにあらゆる大会で勝利するというのは簡単なことじゃない。再び忍耐強くチームを作る必要がある。物語を紡いできた選手たちの力でね。そうすれば再び輝けるはずだ。そして、若い選手はチームにエネルギーを与えてくれる。君が今挙げた選手たちはそれができるはずだ。だがバルセロナやほかの偉大なチームと戦うとき、負けることもある。それは起こりうることだ。永遠に、すべての試合で勝てるわけじゃないんだ。誰もがそう望むが、苦難の時を受け入れる知性も必要なんだ。それが再び高いレベルに戻るために大切だ」

――そうは言いますが、クラシコで連敗を喫した今、マドリーはCL四連覇を達成できると思いますか?

「去年も同じ質問をされたよ(笑)。クラブがビッグイヤーを持っていれば、マドリーは決勝に進出できるし、優勝できると思うはずだ。誰が三連覇を達成できる思っただろうか? 不可能だ! 誰も達成したことがないことだし、ニ連覇すらないと言われていた。もちろん、彼らは優勝できるだろう。フットボールはいつだって我々を魅了する。当然ながらとてつもない困難だろう。だが彼らがレアル・マドリーだということを忘れてはいけないね」

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