ハンジ・フリック率いるバルセロナは、明確な狙いを持ってこの試合に臨んだ。ハーフスペースを突き、息の詰まるような高い守備ラインを維持して、ヘタフェのダイレクトな攻撃を封じることだ。流動的な4-2-3-1を採用し、ヘタフェのウイングバックを孤立させるとともに、中央で数的優位をつくろうとした。敵陣のファイナルサードでボールを奪うことが目的で、その戦略はすぐに実を結ぶ。立ち上がりからの強度の高いプレーで、アウェーのヘタフェを出遅れさせた。
一方、ペペ・ボルダラスは持ち前の現実的な戦い方を貫き、ヘタフェを規律ある5-4-1でスタートさせた。主な狙いは、バルセロナにライン間のスペースを与えず、フィジカルの競り合いとコンパクトなローブロックでホームチームを苦しめることだった。しかし、イバン・アソンを起点とするカウンターは、バルセロナの素早いカウンタープレスに阻まれた。ヘタフェは試合を通じて、ボールを保持することも息をつくこともままならなかった。
バルセロナの戦術的布陣
バルセロナの基本布陣は4-2-3-1だが、ボール保持時には2-3-5に近い形で機能した。ロドリとガビのダブルボランチが土台となり、サイドバックのジュール・クンデとジェラール・マルティンが高い位置で幅を取った。これによりヘタフェのサイドのMFは守備に追われ、4人の中盤は実質的に6人の守備ラインへと変わった。プレスを仕掛ける合図も明確だった。ボールがヘタフェのセンターバックに渡ると、アンソニー・ゴードンとラミン・ヤマルが弧を描くように走って横方向のパスコースを遮断。ロングボールを選ばせ、エリック・ガルシアが制圧する密集した中盤へ蹴り込ませた。
ビルドアップでは、GKのジョアン・ガルシアがスイーパー役も担う「ダイヤモンド型」の陣形を用いた。これによってセンターバックが左右に開き、ヘタフェの最前線のプレスを横に広げた。トップ下のダニ・オルモの役割も重要だった。「ゾーン14」へ絶えず動くことでヘタフェのジェネを持ち場から引き出し、ガブリエウ・ジェズスが2点目で突いた縦のスペースを生み出した。守備面では高いラインにリスクがあったものの、クンデのスピードとロドリの戻る際のポジショニングにより、ヘタフェの数少ない前進はオフサイドになるか、ペナルティーエリアに達する前に食い止められた。
ヘタフェの戦術的布陣
ボルダラスが選んだのは、ピッチ上のスペースを圧縮するための5-4-1の守備陣形だった。ネマニャ・グデリを軸にダニ・オルモを監視させ、バルセロナの攻撃の中心を囲い込む狙いがあった。ヘタフェのプレスは自ら仕掛けるというより、相手の動きに応じるものだった。バルセロナがピッチ中央の3分の1に入るまで待ち、そこから寄せた。合図になることが多かったのは、バルセロナのボランチ間での横パスだ。その瞬間にリベリオ・テラッツがラインから飛び出し、攻撃のリズムを乱そうとした。
しかし、バルセロナの攻撃が大きく幅を取ったことで、5バックの組織は崩れた。ヤマルとゴードンがウイングバックのホアン・モヒカとザック・ロメロを釘付けにしたため、ヘタフェのセンターバックはガブリエウ・ジェズスとの1対1を強いられる場面が多かった。攻撃では、ヘタフェに前線への有効な逃げ道がなかった。ボール保持率はわずか17%。主な攻撃パターンはアソンを狙う長い斜めのボールだったが、後方からのサポートがなく、攻撃はすぐに尻すぼみとなった。二次的なプレスもなかったため、バルセロナは何度でもボールを回収して攻撃をやり直せた。パス数はバルセロナの862本に対し、ヘタフェは172本という大差がついた。
両監督の駆け引き
勝敗を分けた戦術上の攻防はサイドで繰り広げられた。フリックは、ヘタフェが中央をコンパクトに守る一方、ボールを素早く逆サイドへ動かせばウイングバックを孤立させられると見抜いていた。ヤマルが守備者2人を引きつけることで、逆サイドのゴードンには繰り返しスペースが生まれた。このミスマッチは開始2分に早くも表れた。バルセロナは素早い攻守の切り替えによって、ヘタフェが守備陣形を整える前に突破した。
ボルダラスはサイドのMFに内側へ絞るよう指示して対抗したが、それはバルセロナのサイドバックにボールを持つ時間を与える結果となった。23本のシュートと2.13のxG(期待得点)を記録したバルセロナの攻撃力は、ついにヘタフェの守備を破った。ジェズスを先発させたフリックの判断も的中した。ジェズスは低い位置に下りて攻撃をつなぎ、ヘタフェのセンターバックを守りにくいエリアへ引き出した。バルセロナは粘り強い戦術的な攻防を制した。
試合中の修正
試合の流れは、特にハーフタイム後に大きく変わった。テンポの低下を感じたフリックは、60分頃にペドリとフェルミン・ロペスを投入し、中盤を活性化させた。これに伴い、バルセロナは4-2-3-1から、より伝統的な4-3-3へ移行。ボール保持時の安定感が増し、ヤマルがさらに幅を取れるようになった。この修正が直接3点目につながる。ペドリが中央に相手の注意を引きつけたことで、クンデが遅れてペナルティーエリアに入り、ヤマルの供給したボールを決めた。
ボルダラスは早い段階での変更を迫られ、37分にザック・ロメロに代えてアブデル・アブカルを投入し、崩されていた右サイドの守備を立て直そうとした。さらに65分にはサトリアーノとボセッリを同時投入して5-3-2へ移行。バルセロナのセンターバックに2人のストライカーをぶつけ、中盤へ持ち上がるのを防ごうとした。これによってヘタフェは一時的に敵陣のファイナルサードで存在感を増したが、中盤はさらに手薄になった。終盤はマルク・ベルナルとペドリが容易に試合をコントロールし、交代策はバルセロナの優位を揺るがすどころか、むしろ強める結果となった。
結局、勝敗を決めたのはバルセロナのハイプレスの遂行力と、効率よくボールを奪い返して攻撃を続ける力だった。フリックは縦への攻撃を重視する形から、ボール保持を重視して試合を締めくくる形へ柔軟に切り替え、ヘタフェに反撃の道を与えなかった。序盤のゴールによって、相手をいら立たせるヘタフェのプランは崩壊。守備的なチームが、戦術的に逆転の備えがないまま、追いかける展開を強いられた。バルセロナのボール保持率83%と、ゴードン、ジェズス、クンデによる決定力の高いフィニッシュは、ポジショナルプレーの見事な実践を物語っていた。





