Getty ImagesEURO（ユーロ）2020も佳境を迎え、イタリアとイングランドのどちらかが優勝に絞られた。しかし、多くの中立なサッカーファンにとってデンマークはヒーローとなっただろう。
初戦で主力であるMFクリスティアン・エリクセンが心停止を起こし、ショッキングなインパクトを与えられた。デンマークはそんな最悪の状況からスタートした。
しかし、カスパー・ユールマン監督率いるチームは一丸となり、精神的にもスポーツ面でも回復。見事準決勝まで勝ち進み、あと一歩で決勝のところまで迫った。『Goal』では、彼らの信じられない旅を振り返る。
Gettyデンマークの旅は、ウェンブリーのピッチで終わりを迎えたが、彼らは顔を上げたまま去ることができる。
悲劇的なスタートを切りながら、想像を絶する栄光に近づき、その過程でファンやニュートラルな人々を魅了した。コペンハーゲンでの祝賀会は最終的に中止となったが、デンマークのファンは今大会をずっと忘れないだろう。
エキサイティングで才能豊かな選手たち、そしてユールマン監督が指揮を執ることで、今後も楽しみなことがたくさんあるだろう。
Getty最終的にイングランドの前にデンマークは散ったが、GKシュマイケルの功績は偉大である。
EURO1992で優勝したピーターの息子であるシュマイケルは、前半ではラヒーム・スターリングの1対1を見事に阻止し、後半ではハリー・マグワイアのヘディングシュートをアクロバティックに防ぎ、アディショナルタイムにはハリー・ケインのPKを防いだ。しかし、その跳ね返りを押し込まれ、これが決勝点となった。
シュマイケルは、昨シーズンのFAカップ決勝でもウェンブリーで活躍。水曜の夜も同じように活躍した。
GettyEUROで最も皮肉なことのひとつは、エリクセンが大会を欠場していなければ、ダムスゴーがこれほど多くの試合に出場することはなかっただろうということだ。
準決勝の4日前に21歳になったデンマーク代表の最年少選手は前半、見事なFKを沈め、ウェンブリーの観衆を驚かせた。
このゴールは、イングランドがEUROで初めて許した失点となり、これ以上ないほど素晴らしいものだった。輝かしい未来を持つ選手にとって、信じられないような瞬間だっただろう。
Gettyヨアキム・メーレは、大会前にはデンマークのファンやセリエAファンの間でしか知られていない選手だったが、EUROでの見事なパフォーマンスによりすべてのサッカーファンが注目する選手となった。
ウェールズ戦ではゴールを決め、準々決勝のチェコ戦では、右足のアウトサイドで見事なクロスを上げて最高の瞬間を演出した。
デンマークは、後半に復活したチェコを抑えたものの、2-1で逃げ切り。ウェンブリーでのイングランドとの準決勝を決めた。
GettyEURO2020でのデンマークの活躍は、強力な集団の力によるところが大きかったが、新たに現れた個のスター選手もいた。
ドルベリはクラブレベルではニースで不振だったが、EUROではチームトップスコアラーとなる3ゴールを記録。ラウンド16ではウェールズ相手に2ゴールを奪い、優勝を狙えるチームであることを示した。
Gettyロシアがフィンランドを破ったため、デンマークは決勝トーナメント進出の可能性を残したまま、最終節のロシア戦を迎えた。
この日のデンマークはゴールラッシュ。ミッケル・ダムスゴーの見事なミドルシュート、アンドレアス・クリステンセンの強烈な4点目などで、4-1とロシアを撃破したのだ。
ベルギーがフィンランドを2-0と破り、デンマークは2位に浮上。決勝トーナメントへの切符をつかんだ。
Gettyグループステージ第2戦ベルギー戦を前に、コペンハーゲンでは感動的なシーンが見られた。開始10分、エリクセンへの応援の意味を込めて、両チームとファンが拍手で試合を中断したのだ。
デンマークは、この雰囲気とエリクセンのためにプレーしたいという気持ちに触発され、ベルギー戦では最速となるゴールを決めた。
しかし、ベルギーはケヴィン・デ・ブライネの投入により復活。彼の見事なパフォーマンスに刺激され、2-1と逆転勝利した。この時点で、2連敗したデンマークの本大会はわずか3試合で終了するかのように思われていた。
Gettyこの日、特に称賛に値する行動をとったのは、デンマーク代表キャプテンのシモン・ケアーだ。
悲劇の直後、ゴールキーパーのカスパー・シュマイケルとともに、エリクセンのパートナーであるサブリナ・クビスト・イェンセンをパーケンスタジアムのピッチ脇で勇気づけていた。
エリクセンが病院で安定した状態であることが確認された後、グループBの試合が再開され、フィンランドが1-0で勝利している。
Getty救急隊員がエリクセンの手当てをしている間、デンマークのチームメイトはエリクセンをかばい、囲んで周囲からの目線を阻んだ。
その後、エリクセンが心停止に陥ったことが確認され、サッカー界が一丸となって、エリクセンの無事を祈った。インテルのチームメイト、ベルギー代表FWロメル・ルカクやトッテナム時代の同僚FWソン・フンミンもその一人だ。
幸いなことに、ピッチ上での迅速な処置のおかげで、デンマークの10番は無事に退院し、現在は回復に向かっている。
GettyグループBの開幕戦、デンマークとフィンランドの戦いはスコアレスで前半を終えようとしていた。
すると、エリクセンが突如としてボールのないところ地面に倒れた。すぐにアンソニー・テイラー主審は医療スタッフを呼んだが、両軍の選手やファンは取り乱しながら、良い結果を得るためにただただ祈っていた。