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【現地発】久保建英が持つ「良い選手だけの特徴」と交代の意味。幕を開けたキャリアを築く決定的な日々

いくつかの事情と多くの欠場者が出たことによって、久保建英はようやく先発復帰を果たしている。ホセ・ボルダラスは日本人が素晴らしい仕事ぶりを見せていると話し続けてきたが、その言葉に見合うような出場機会はここまで与えてこなかった。それはボルダラスが久保を使うことにリスクを感じていたためであり、同時に選手本人がスタメンの扉をこじ開けられなかったためでもある。しかし今回のエルチェ戦は、久保がヘタフェにとって重要な選手にならなければならないことを感じさせた。

エルチェ戦で久保が見せたプレーは、決して完ぺきだったわけではない。だが流動的にポジションを変えていった彼は、各ポジションの前任者たちよりもよっぽどチームに貢献している。最初はシャドーストライカーとして、その次にはサイドアタッカーとしてプレー。二番目のポジションの方がより快適という印象を与えていたが、事実、そこから試合を引き分けに導いた。右サイドでエレガントかつシンプルな突破を見せ、簡単かつ正確なグラウンダーのクロスによってエネス・ウナルのゴールをお膳立て。プレーを簡単なものとしてしまうのは良い選手だけが持つ特徴であり、久保はやはりその部類に入っている。

■疑いのない居場所

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久保の最初のアクションは、結局は黙認されたPKの誘発だった。彼は遠くを走る審判を見て、信じられないといった様子で両手を上げていた。が、そうした振る舞いは、その時点でもう止めることを決意したようにも思えた。自分でコントロールできないことにエネルギーを使っても意味がない、と……。

それからは、ただただフットボールだけが背番号5の届けるニュースになった。中央のスペースが隆々とした筋肉に埋め尽くされていることを把握すると、サイドに流れてより自由なプレーを獲得。対面する左サイドバックのモヒカとのマッチアップは見応え十分で、彼がわずかな差で勝利を果たしている。ヘタフェに久保の居場所があることは、疑いようもない。日本人なしのチームは、何かが起きる気がまったくしないほどに平べったい。

■意志の強さと交代

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ヘタフェはぐらぐらと煮え立った場所であり、火傷せずに済むことは難しい。ネマニャ・マクシモヴィッチは交代が納得いかず物に当たり、ボルダラスは同じくピッチから下げたウナルと口論をした。ウナルとボルダラスがやり合ったのは、ウナルがPKキッカーを務めるはずだったにもかかわらず、好戦的なベテランのアンヘルが規律を拒否して、彼からボールを奪いシュートを打ったためだった。

しかし久保が、ウナルようになることはないだろう。あのPKの少し前、ペナルティーエリア手前からのフリーキックの場面で似たような出来事があった。マウロ・アランバリがボールを蹴ろうとしたものの、久保は頑なに譲らず。そうして放ったシュートはコースも威力も甘かったが、しかし19歳の若者はチームを代表する選手の一人を相手にしても、まったく物怖じることがなかった。そうした意思の強さは、ボルダラスが好むところである。

久保がピッチから去ったのは72分のこと。あまりに早過ぎると誰もが感じたが、彼は一切動揺を見せず、タッチラインを越えるとボルダラスからの愛情を受け取っている。よくよく考えてみると、交代は無理もないことだったのだろう。ここまでの彼は実戦でのプレー時間が限られていたし、中盤での潰し合いと化していた試合を戦い続けるほどの体力的余裕はなかったはずだ。

■プレーで語る

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観客のいないヘタフェ本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスは、まるで猟犬の檻である。控えの選手たちは相手に重圧をかけるために怒鳴り声をあげ続け、スタジアム内はナーバスな感情が充満する。そのように緊張が張り詰める中、スタンドに腰を下ろした久保は19歳の若者とは思えないほど落ち着いていた。彼が何かを物語るのは、ボールに触れているときのみ……。そんなことを思わせた。

そう、久保はこのエルチェ戦で確かに口を開いた。ヘタフェの中で最も違いを生み出せる選手は自分なのだと示した。相手DFの目を真っ向から見て、ドリブルで突破できるチーム唯一の選手であることを証明した。相手をフィジカルと尋常ではないアグレッシブさで押さえつけるヘタフェのスタイルは、もう限界に近づいてる。久保は圧倒的な技術で、そこに清新の風を送ったのだった。

久保がヘタフェで、絶対的なレギュラーになることまでは期待しない方がいいのかもしれない。しかし今回のようなプレーを見せ続けられるならば、主役として扱われる瞬間を何度も迎えられるだろう。今季のラ・リーガは、残り10節。ヘタフェが残留という目標を果たすため、久保が駆け出したばかりのキャリアの基礎を固めるための決定的な日々が、ここから始まる。

取材・文=ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ(J. A. de la Rosa、スペイン紙『アス』ヘタフェ番記者) 
翻訳・構成=江間慎一郎

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