20230615_Mitoma(C)Getty images

【日本代表|予想布陣】“槍”を携える左と“流動”の右。エルサルバドル戦で期待される戦術的試み

 日本代表は15日のキリンチャレンジカップ2023でエルサルバドル代表と対戦する。カタール・ワールドカップ(W杯)後の2度目の活動にて、新生森保ジャパンにとっての初勝利を奪うことはできるのだろうか。また、試合の中では様々な試みが行われると予想されている。【取材・文=河治良幸】

■特色の違う左右のトリオ

20230615_Kubo(C)Getty images

 カタールW杯後、2回目のシリーズとなる。日本代表で初めて、同じ監督による2サイクル目を迎える中で、森保一監督は新たなビルドアップの構築に取り組んでおり、3月には従来のメインシステムである4-2-3-1でトライした。ウルグアイ代表、コロンビア代表という南米の強豪が相手だったこともあるが、結果は1敗1分で、シュート数の少なさが目に付いた。

 その理由は明白で、ボールをしっかり保持しながら攻めるという手段が目的化してしまい、元々の特長だった高い位置でボールを奪い、素早く攻め切る形をほとんど出せなかったからだ。今回は「相手にボールを持たれる時間を少なくしたい。ロストした瞬間出来るだけ早く回収して攻撃に繋げていく」と森保監督。そうして押し込んだところから、縦に矢印を強くして攻めていくことを強調している。

以下に続く

 それと同時に、相手が守備を固めると、なかなか中央にスペースを与えてくれない。そこで「ビルドアップから背後を狙う、それができなければサイドに起点を作る」(森保監督)という優先順位を意識しながらも、左の三笘薫を中心としたサイドの突破力を生かしていくことになる。エルサルバドル戦では右のインサイドハーフに10番を背負う堂安律、右のアウトサイドに久保建英という関係が予想される。

 左の三笘が一種の槍になり、右はテクニカルな流動で崩すメカニズムも想定できるが、基本的には1トップの上田綺世をターゲットにしながら、守田英正をアンカーとして旗手怜央と堂安がどういったバランスでボールを運んでいくかが試合の生命線となる。練習では4-1-4-1を生かした“ローリング”も見られた。

 つまり左であれば、サイドバックの森下龍矢と旗手、三笘のトライアングルで、近い距離感でボールを回しながらポジションチェンジするコンビネーションだ。コンパクトな守備ブロックでサイドにプレスをかけてくる相手には有効だ。その意味でユニバーシアード代表の同僚でもある森下、旗手、三笘の左トリオ、アンダー代表からのつながりがある菅原、堂安、久保の右トリオという関係になっているのは興味深いが、攻撃面であまりサイドに意識が引っ張られないことも大事になる中で、どう機能するか。

■後半は新機軸の選手起用か

20230615_Japan_Form(C)GOAL

 また森保監督から新キャプテンに指名された遠藤は2日前の練習通りならベンチスタートとなるが、シュトゥットガルトでは攻撃参加に進化を見せており、4-1-4-1であればアンカーだけでなく、インサイドハーフの起用も面白い。その遠藤と4-2-3-1のボランチを組んでいた川辺駿の起用法、三笘と並ぶ"森保ジャパン"の強力な槍である伊東純也の投入も、勝負という意味ではキーポイントだ。

 さらに見どころとして挙げたいのが、カタールW杯では主に1トップとして鋭い守備を見せた前田大然の起用法だ。セルティックと同じ左サイドが今後のメインになるかもしれない。そうなれば“オズの魔法使い”と呼ばれた元オーストラリア代表のハリー・キューウェル(現セルティックコーチ)直伝のドリブルも、これまでより見られるだろう。

 そこに関連して、左のサイドアタッカーとしても期待される中村敬斗が左サイドバック、カタールのメンバーでもある相馬勇紀が右サイドバックでテストされており、そうした選手起用の新基軸がエルサルバドル戦の後半から見られるかもしれない。

 エルサルバドルは2019年のキリンチャレンジカップでも対戦し、その時は日本が2−0と勝利している。ただし、当時からウーゴ・ペレス監督に代わり、選手も大幅に入れ替わった。48カ国に拡大される3年後の北中米W杯に向けてモチベーションも高まっているようだ。この後、韓国戦も控える彼らにとって、6月24日から米国とカナダで行われるゴールドカップに向けた最終調整の場でもある。タフな相手に森保ジャパンがどう戦い、勝利を手にすることができるのか注目だ。

 日本とエルサルバドルによる一戦は、15日の19:10に豊田スタジアムでキックオフを迎える。

広告