大宮の背後がまたしても狙われた。高いライン設定は厚みのある攻撃を生み出す一方で、一発でピンチを招く諸刃の剣だ。ロングボールなどからの失点はなかなか改善されないが、チームは前向きに「ほかのチームとの大きな違いを生んでくれる」戦術に取り組んでいる。
■狙われ続ける「レッドブルが目指しているサッカー」
諸刃の剣でどこまで戦えるか。
今季の大宮は背後のスペースを利用される形での失点が後を絶たない。今季より就任したナルシス・ペラッチ・ナダル監督はハイライン、ハイプレスを志向しており、ハマれば厚みのある攻撃と即時奪還で主導権を握っている。一方で、相手チームはその特性を逆手に取るように、ロングボールなどから一瞬のスキを突いてきている。
今月7日に行われた天皇杯3回戦の浦和レッズ戦でも背後を執拗に狙われると、2-3で敗れた。同試合後に大宮のFW杉本健勇は「もっと戦い方はしたたかにというか、賢くできた。相手が嫌がること、やりにくいことを考えたら、もっとできたこともあります」と唇をかんでいたが、同時に「でも、それは俺たちのしたいサッカー、レッドブルが目指しているサッカーではないよね、という両方の気持ちがある」と複雑な胸中を明かしていた。
前節カターレ富山戦でもロングボール中心に攻められて3得点を許したなか、大宮がブロックを敷いて守りを固めることはなかった。レッドブルの名の下に「リスク」を取り続けている。
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この日の大宮は横浜FCをホームに迎えると、13分にコーナーキックからFWカプリーニがヘディング弾を叩き込み、幸先良く先制した。しかし直後の15分にすぐさま失点。またしても、“弱点”である背後を狙われた。
同点弾を決めた横浜FCのMF島村拓弥は「相手がハイラインで、裏がウィークだとも分かっていました。試合の立ち上がりは、(パスを)つなぐのではなくて割り切って、まずは裏を狙いに行こうとしていました」と計画どおりだったと振り返る。背後に抜け出したFWルキアンのポストプレーと、そこに連動したシャドーの島村が息の合った連係で奪ったゴールだった。
また、47分には再びロングボールを起点に自陣へ侵入されると、最後はサイドからの折り返しを流し込まれた。
ナダル監督は試合後に「外的要因によって勝つことは許されませんでした。横浜FCの2点はオフサイドだったと思います」と審判に不満を爆発させていた。
判定の正誤は分からない。それでも、大宮が今後もVARのないJ2でハイラインを選び続けるならば、きわどいオフサイドをかけられるかどうかの「リスク」とは向き合っていかなければいけないだろう。
■ハイラインは「自分の成長にもつながる」
ここまでリーグ戦全試合でスタメン出場しているセンターバックのDF西尾隆矢は「いろいろとジャッジのところはありますが、僕はそこじゃないと思う」と矢印を内側にした。問題はリスクに見合った、リターンを享受できているかどうかだという。
背番号88はディフェンダーとして失点を防げなかった課題に目を向けた上で、「僕らのチャンスは数え切れないくらいあったなかで、シュートのクオリティを上げていかないといけないし、チャンスの数でいえばもっと2、3点入っても良かったと思う。今シーズンは決定機を外してしまう場面がよくあるなかで、もっと反省しないといけない」と、仕留め切る重要性を口にした。
「ずっとハイラインをやっていれば、1対1の局面はたくさん出てくるし、蹴られるだけでも、走って戻らないといけない。それでも、きょうは自分たちのアグレッシブさ出せていた」
「回収できればずっと自分たちの攻撃にできるんです。きょうだって、人に対してしっかりと行けていたし、ボールを奪えていた。だからこそ、決定機を作れた。そこが僕たちのサッカーの軸だから不安でもないし、しんどいとは思わない」
西尾のいうように、勝ち越された後の大宮はハイラインの良い面を存分に出していた。両サイドバックが高い位置を取りながら積極的に攻撃へ参加し、波状攻撃を仕掛けた。ボールを奪われてもすぐさまゲーゲンプレスで取り返し、弱点であるロングボールに対しても西尾とCB尾崎優成が冷静に対処。自分たちの時間を増やすと、68分にMF泉柊椰のゴールで同点に追いついてみせた。
泉をはじめ、アタッカー陣は攻撃のチャンスが増えるという理由などから、ハイラインによって得られるリターンの大きさを認めている。
一方で、ディフェンダー陣には的確なラインコントロールや守備対応が求められ、一つのミスが失点に直結するリスクもある。大宮にとってハイラインは一長一短の諸刃の剣でもあるなか、「自分の成長にもつながるし、これができれば絶対に勝てる強いチームになると実感している」と、西尾はやりがいを感じていた。
「センターバック二人が守らなければいけない範囲がとても大きいので大変です。最終的に負荷がかかるのはディフェンスラインだとも分かっている。それでもポジティブに考えています」
「背後を狙われる弱点があるというハイリスクがあると十分に理解しているなかで、ハイラインを保ちながら失点をどれだけ減らせるか。監督からも『勇敢にプレーしてほしい』とずっと言われています」
どれだけ勇気を持って、諸刃の剣を振り続けられるか。
ナダル監督が「この国のほかのチームとの大きな違いを生んでくれるもの」と称する戦術を使いこなしたい。
取材・文=浅野凜太郎



