今季初白星を飾った試合後に、FC東京のDF稲村隼翔が口にしたのは意外な言葉だった。
「(自分を)見つめ直したい」
2-2で引き分けた前節のヴィッセル神戸戦は出番がなかったなか、この日はセンターバックで先発出場した。相手の攻撃に「怖さはなかった」と言い切るように、気の利いたカバーリングと力強い対人守備をみせた。
「キャンプからコーチにリスクのところは言われていたので、ボランチの選手ともずっとコミュニケーションを取りながらできました。セカンドボールを拾い続けたことで勝利できたと思います」
FC東京は前半から猛攻を仕掛けるも、なかなかゴールを奪えなかった。それでも72分に右コーナーキックの流れから、最後はMF高宇洋が右足を振り抜いて先制点を記録した。
相手にほとんど決定機を作らせないまま、稲村は1-0で迎えた79分にベンチへ下がった。「コンディション的に良くない箇所があった」ため、大事をとる形だったようだ。
その後、FC東京は85分にMF安斎颯馬がヘディングで2得点目を決めた。前節はアディショナルタイムに同点弾を許していたため、イレブンが「追加点を取りに行こう」と意思を統一していたからこそ生まれたゴールだった。
試合はそのまま2-0で終了。「優勝を目指しているので、勝つことが一番大事」と語った稲村だが、表情は険しいまま。聞けば、79分の途中交代に悔しさを抱いていた。
「個人的にはフルで出られなかったので、コンディションを戻して、フルで試合に出て守り切りたいなと思いました」
神戸戦で許した劇的弾のように、最後のさいごまで気が抜けない試合がこれからも続くだろう。同じ過ちを繰り返さないためには、この日の青赤が見せたような、試合終了の笛が鳴るまでアグレッシブに行く姿勢が、これからも大事になる。そして、その戦い方を続けるために必要なのは、チームが安心して攻撃に手数をかけられるように、後方から危険を察知してくれる頼れるDFだ。
そんなセンターバック像こそ、稲村が目指しているもの。だからこそ、個人としては納得できる試合ではなかった。
背番号4の頭の中には、悲願のJ1優勝をピッチ上で喜ぶ自分の姿が描かれている。
取材・文=浅野凜太郎



