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「自分たちの結果で環境を変える」――町田、激動の2018年。その現在地とCA参画のこれから

■初めて明確な順位目標を設定した背景

J2優勝の可能性を残したまま迎えた最終節、東京ヴェルディとの『東京クラシック』。1-1で終盤まで推移した試合も後半アディショナルタイムの90+5分を超えていた。勝ち越しの1点を狙った町田は、中島裕希がルーズボールを拾い、相手ゴール前へハイボールを蹴り込む。しかし、相手DFがそのボールを頭ではね返すと、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。

最終節の結果は1-1のドロー。勝ち点1差で追っていた首位・松本山雅FC、町田と同じ勝ち点の2位・大分トリニータも他会場で引き分けたため、町田は東京Vに勝っていれば、「てっぺんの景色」(深津康太)にたどり着けたが、その夢を自らの力で叶えることはできなかった。最終順位は4位。しかし、J2最小クラスの予算規模である町田が、プレーオフ圏の4位でシーズンを終えたことは「胸を張ってもいい結果」(中島)だろう。

今季の町田は、2014年の第二次相馬体制発足以降、初めて明確な順位目標を設定し、新たなシーズンを迎えていた。その目標とは「6位以内」。J2リーグにおける一つの焦点であるJ1参入プレーオフ出場圏の順位に食い込むことで、町田市内外の注目度を集め、J1ライセンス取得に向けた動きの加速度を早める狙いが、その背景にはあった。

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最大のネックでもあった天然芝の練習場とクラブハウスの環境整備がなかなか進展せず、開幕前の準備の時点から選手たちは「なんとなくJ1に上がれないことは分かっていた」(深津)。それでも、選手たちは「自分たちの結果で環境を変える」(中島)という強い意思の下、J2復帰3年目のシーズンを戦ってきた。

■4月からCA社の経営参画を模索

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▲ブレイクした平戸太貴(左)、右は東京V井上潮音©J.LEAGUE

チームを率いる相馬監督の下、2014年のJ3時代から培ってきた攻守両面で複数人がボールに関わる“攻守表裏一体のサッカー”は年々成熟度が増し、特に今季は鹿島アントラーズからの期限付き移籍2年目を迎えた平戸太貴がブレイク。自慢の正確なキックでアシストを量産し、セットプレーの得点力とコンパクトな陣形から奪ったボールをスピーディーなカウンターにつなげるスタイルに磨きをかけて、勝ち点を着実に積み重ねてきた。

開幕8戦無敗など、スタートダッシュにも成功し、「シーズンを通して波が少なかった」(中島)チームは、第23節の熊本戦で勝利して以降、4位以下に転落することなく、ずっと上位に定着。第30節・FC岐阜戦から第32節・水戸ホーリーホック戦までは、一時的に首位にも立っていた。

チームが大躍進を遂げる中、秋口の9月27日にはJリーグからJ2ライセンスが付与されたことで、仮に今季、目標である6位以内に入れたとしても、J1昇格は叶わない現実を突きつけられた。しかし、この間、クラブは4月から大手IT系企業・サイバーエージェントの経営参画を模索。9月下旬にはその事実がメディアに報じられると、10月1日には正式にクラブがCAグループの子会社として再スタートを切ることが発表された。

その会見の席上、CAの藤田晋代表取締役社長は、19年度中の練習場の環境整備を明言。J1ライセンス取得に向けて最大のネックでもあった練習場問題に見通しが立ったことで、近未来のJ1ライセンス取得に光が差し込んだ。今回のCAグループの経営参画によるクラブの経営体制強化は、シーズン開幕当初から「自分たちの結果で環境を変える」(中島)と奮闘してきた選手たちの頑張りが報われる形となった。

一方のピッチ上では、残り10試合を切った段階でJ2優勝も射程内にある戦績を残していた。そのため、クラブの経営体制の強化が発表されて以降、相馬監督は練習グラウンドで目標を「6位以内」から「一番上」に“上方修正”したい意思を選手たちに伝えたという。10月の段階から、チームの目標は「一番上」に切り替えられた。

■具体的になってきた強化、環境整備

しかし、周囲の目はどうしても、「J1に昇格できない状況でどうやってモチベーションを維持するのか」といった疑問を抱く。当時の首位だった大分を3-2で破った第37節の試合後の会見では、報道陣から相馬監督へ、前述の疑問を投げかける質問がぶつけられた。その会見の席で指揮官はこう言った。

「この試合のピッチに立てば、目の前に勝ち点3がある。ピッチに立って、勝ちに行かないような選手はウチのチームにはいらないです。ライセンスとは関係なく、この結果は目の前にいる相手に勝ちに行くことを選手たちが表現してくれていることに尽きると思っています」

チーム内における終盤戦のモチベーションの生命線は、「一番上」。大分戦後のミックスゾーンでモチベーション維持の理由を問われた中島は「僕たちは結果で環境を変えて、人の心を動かしたいと頑張ってきた。今は目の前に優勝するチャンスがあるから目標を優勝に切り替えた。ただそれだけのことです」と回答している。最後まで優勝を目指して戦ったチームの最終成績は4位。それでも、町田の奮闘は決して色褪せることがないだろう。

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▲4位で終わったシーズン。優勝できず、うなだれる選手たち©FcMachidaZelvia

今季以上の成績を目指すであろう来季に向けて、最終節後に囲み取材に応じた藤田オーナーは、J1ライセンス取得に向けたハード面を整えることと、来季のチーム編成について言及した。

天然芝の練習グラウンドとクラブハウスの環境整備に関しては、2月のキャンプよりチームが戻ってきた時期から町田市内の新練習場が使用できるように、クラブ側が唐井直GMらを中心に、行政や関係各所、CA側と最終調整を進めている。一方で行政はホームの町田市立陸上競技場をJ1規格のスタジアムに改修する計画を発表しており、2021年2月からの使用を目指すという。

また強化体制に関しては、従来の唐井GM、丸山竜平強化部長体制が継続。来季のチーム編成については、藤田オーナーが囲み取材で「今まで厳しい経営体制で勝てるチームを作ってきた相馬監督が考えていることを聞きたい」と話し、現体制継続を含めて、相馬監督と会談の機会を持つ意向を示した。

激動の2018シーズンは終わった。J2復帰4年目となる2019シーズンは、町田にとって、悲願であるJ1ライセンス取得に向けて、その動きの加速度がさらに早まるシーズンになるかもしれない。

■著者プロフィール

郡司聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経て、フリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、エルゴラッソやサッカーダイジェストなどに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』(https://www.targma.jp/machida/)の編集長も務める。

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