2018-11-17-japan-venezuela

森保監督の“待ち人”新時代GKシュミット。その足技はフィールドプレーヤー時代に磨かれた

16年10月、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代に日本代表候補GKキャンプに招集された。この時のメンバーは東口順昭(ガンバ大阪)、西川周作(浦和レッズ)、林彰洋(サガン鳥栖、現FC東京)、櫛引政敏(鹿島アントラーズ、現モンテディオ山形)、中村航輔(柏レイソル)。それから2年余り。森保一監督に初招集されたシュミット・ダニエルが17日、日本代表デビューを果たした。

■ビルドアップに絡んでいける現代型GK

44分、この日が代表初先発となったGKシュミット・ダニエルの右足から放たれたボールが、FW大迫勇也の胸へスッポリと収まる。余裕を持って振り向いた大迫はドリブルで前進した上で3つのパスコースから左へのラストパスを選択。受けた中島翔哉のシュートは惜しくも外れたが、何とも印象深い場面だった。

9月の森保ジャパン結成当初からメンバーリストに名を連ねていたシュミットだが、先発はこの日が初めて。練習の様子から「来るだろうな」と察したのは試合の2日前のこと。ただ、「ガチガチに緊張するとかはなかった」と振り返ったとおりの落ち着きぶりで、バスが渋滞に巻き込まれてウォーミングアップの時間が削られても「別に余り気にしなかった」と肝の太さも見せた。

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DF吉田麻也は、この日のシュミットのプレーを「自分がなぜ呼ばれたのかを理解している」と形容する。正確なロングキック、落ち着いてビルドアップに絡んでいける足技の良さは彼の真骨頂である。臆することなく、そうした良さを表現したプレーぶりに、吉田は「なかなか一試合目でああやって自信持ってパス繋ぐのは簡単なことじゃない。自分の良さを少しでも出そうとしていたし、出したんじゃないかな」と舌を巻いた。

森保一監督の志向するサッカーは、後方からのビルドアップを重んじるもの。安易にクリアへ逃げることを良しとせず、マイボールを大切にしながら前線へボールを運んでいくのが基本的なスタイルだ。そして高度に組織化されたディフェンスが敷かれる現代サッカーにおいて、こうしたスタイルを貫徹させるために不可欠なのは、「蹴れるGK」の存在である。その点で、シュミットは森保監督の「待ち人」だったのではないか。指揮官は彼のデビュー戦をこう振り返った。

「初代表でしたが、落ち着いてプレーしてくれたと思います。彼に求めるプレーの一つである足元の技術を使ったGKからのビルドアップという部分も非常に落ち着いた良いチャレンジをしてくれたと思います」

■GKを始めたのは高校時代から

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実は9月の森保ジャパン結成時、とある媒体で予想スタメンをお願いされたとき、GKのところにシュミット・ダニエルの名前を書き込んだ。冒険的を通り越して無謀な予想にも思えたが、タイプ的に間違いなく森保監督の求めるGK像に最も近い選手だという確信もあった。

吉田も「監督のサッカーに合っている選手」と評するが、197cm(実測は198cmらしいが)の高身長ながら、あれほど足元の技術を持つ選手はなかなかいない。ハマる可能性は十分にあったし、初戦でないにしても、どこかで起用してくる予感もあった。

そんな起用の理由を象徴する、この試合で印象深いシーンとしてもう一つ挙げておきたいのが58分に右サイドのDF酒井宏樹へと綺麗にフィードを通した場面。自然と前を向いた酒井からのスペースへの縦パスで堂安律が一気呵成に抜け出した場面だ。結局、相手DFの捨て身のファウルに阻まれて決定機には至らなかったものの、ストレスなく繋げるGKの強みが出た場面だった。

シュミットの堂々と「蹴れる」能力の源泉は東北学院高校へ入学するまで主にフィールドプレーヤーとしてプレーしていた(バレーボール部にいたこともあるそうだが)というキャリアに由来する部分が大きいだろう。

逆にGKスキルの部分で完成度が上がるまでは時間もかかってしまったと言えるが、よりハイブリッドな、26歳と円熟期を迎えた今、GK離れした足元のスキルを兼ね備える総合力の高い守護神へと成長を遂げることとなっている。

「彼からの起点で良い形でディフェンスラインから持ち上がること、そして相手からプレッシャーをかけられたときに、それを回避して前線にあててビッグチャンスが生まれるといったところにも繋がっていた」

そう語った森保監督の表情を見れば、シュミット・ダニエルの先発起用が単なる「第3GKに経験を積ませる」といったニュアンスでなかったことは明らかだろう。

もちろん、実績の面で大きく上回る東口順昭、権田修一の壁は決して低くない。ただ、この日は「相手の1本目のコーナーキックでしっかりと飛び出せて、それで少し嫌がっていたと思う」と自ら振り返ったとおり、ハイボールへの対応でも積極的な動きを見せ、「守備の所でもディフェンスラインと連携して安定してプレーしてくれていた」(森保監督)。

もっとも、本人に浮かれた様子は少しもなかった。

「しっかり後ろからビルドアップする部分は一応アピールできたと思いますが、肝心のゴールを守るという部分はあまり守備機会もなかったです。まだまだ二人(東口と権田)には劣るし、まだまだ勉強しなきゃいけないところがいっぱいある。もちろん、一番手の争いはしたいですが、あまりそこにとらわれず、毎日の練習で成長していけるように取り組んでいけたらいいかなと思います」

ビッグな守護神は至って謙虚に語ったが、ここから経験を積むことで得られる伸びしろの大きさも加味すれば、アジアカップ本大会もあるいは…。新時代の「蹴れる大型GK」が見せたのは、そんな可能性を想起させる90分だった。

文=川端暁彦

■シュミット・ダニエル(Daniel SCHMIDT) 
1992年2月3日生まれ、26歳。197cm/88kg。アメリカ合衆国出身。仙台市八幡サッカースポーツ少年団→仙台スポーツシューレFC→東北学院中→東北学院高→中央大を経て14年ベガルタ仙台加入。ロアッソ熊本、松本山雅FCへの期限付き移籍を経て17年仙台復帰。J1通算36試合出場、J2通算71試合出場、日本代表国際Aマッチ1試合出場(2018/11/16時点)。

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