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サイドバックに100億円は妥当?リュカのバイエルン移籍にまつわる疑問の答え

リュカ・エルナンデスの移籍に伴って発生した8000万ユーロ(約99億6000万円)という移籍金によって、彼はブンデスリーガ史上最も高額で獲得された新加入選手となった。エルナンデスはバイエルンにとってなぜそれほどの価値があるのか? 彼の移籍はジェローム・ボアテングやマッツ・フンメルスやダヴィド・アラバにとってどんな意味を持つのか? 『Goal』では、エルナンデスの移籍にまつわる重要な疑問に対する答えを探ってみた。

■なぜ8000万ユーロの価値があるのか?

Lucas Hernandez Atletico Bayern
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第一に、アトレティコがエルナンデスとの契約で定めた契約解除金が焦点となる。スペインでは契約にバイアウト条項を盛り込むのが一般的であり、ほとんどの場合、トップ選手の引き抜きを警戒して天文学的な価格が設定されている。

しかし、移籍金のインフレーションが起きている趨勢の中、8000万ユーロという数字は特に憤激の叫びをあげるほどのものではないだろう。例によって価格は市場によって決まるものであり、エルナンデスのプロフィールが卓越したものであるからには、彼の獲得にそういった莫大な金額が動くのは当然のことである。

エルナンデスは現在のプロフットボール界に数少ない非常に優れた左サイドバックの一人であるばかりでなく、有能なセンターバックとしても機能する。

さらに、エルナンデスが渇望の的になっている理由の一つは、彼がディエゴ・シメオネに育てられたということである。つまりエルナンデスは、徹底的に“意志の力”を叩き込まれているのだ。シメオネがヨーロッパのフットボール界に自分と同じような選手を生み出すために鍛えようとした意志の力、アトレティコの守備を世界最高水準に引き上げる原因の一つにもなった意志の力を、である。

ゆえにエルナンデスは最高レベルの駆け引きを身につけ、1対1の戦いに強く、スピードがあり、その上さらにDFとしては驚くほど豊富な運動量を誇っている。加えて、フランス代表チームの一員として2018年のW杯制覇にも貢献したことを思えば、確かに移籍金の莫大な金額も半分方説明がつくというものだ。

このことは、バイエルンの会長であるウリ・ヘーネスにとってもおそらく納得できる範疇のことであっただろう。バイエルンが一人の選手を獲得するために1億ユーロもの金額を支出することはないと以前言っていたが、そのことを持ち出してヘーネスの矛盾を突く者はいない。実際、彼は明らかにエルナンデス獲得のために、かつては揺るぎなく掲げていたはずの信条に対して基準を緩めていた。それほどまでに重要な選手になると認識したのだ。

■バイエルンでのポジションは?

Lucas Hernandez Atletico Madrid 2019Getty

エルナンデスを獲得したのは、ある特定のポジションでのみ起用するためではない。すでに触れたように、彼は多彩なポジションに対応可能な選手である。ユーティリティ性を備えるエルナンデスは、アトレティコでの公式戦110試合のうち56試合はセンターバックとして、52試合はサイドバックとして出場している。

フランス代表での成功が記憶に新しいからか、サイドバックのイメージが強いが、シメオネ監督は「センターバックのポジションにいる時のエルナンデスはモンスターだ」と、興奮を隠せない様子で語る。今季のシメオネは、エルナンデスをセンターバックでディエゴ・ゴディンのパートナーとして使っていた。

エルナンデスはアトレティコのユース時代からすでに、センターバックとして納得のいく働きを見せていたが、結局左サイドバックとしてブレイクを果たし、トップチームのレギュラーの座を獲得したのだった。

だが、そのスピードを思えば、左サイドにエルナンデスを配することには何の問題もない。サイドであっても、中央であっても、ワールドクラスだ。

バイエルンではどちらのポジションに組み込むことも可能であり、それによってニコ・コバチ監督はさらに守備の柔軟性を増すことができる。さらに、次の夏にはバイエルンが今まで以上にシステムの幅を広げることも考えられるだろう。つまり、コバチはエルナンデスを左のウィングバックに据えながら、フランクフルトで多用していた3バックの陣形を取ることもできるだろう。

あるいはエルナンデスを中盤で使うことも可能だろうか? コバチによれば、それも一つのオプションだという。

「エルナンデスはどんなプレーもこなせるから、いろいろなポジションで使うことができる。これまではセンターバックやサイドバックとして起用されてきたが、彼は中盤でもプレーできる。それは素晴らしいことだ。だから、我々は彼が来るのを楽しみにしているんだ」

■フンメルス、ボアテング、アラバへの影響は?

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一つ、はっきりしていることがある。それは、バイエルンが8000万ユーロもの金額を支出してエルナンデスと契約を結んだのは、成功を果たしたダヴィド・アラバやマッツ・フンメルスやジェローム・ボアテングのバックアップを務めさせるだけのためではないということだ。ケガが回復すれば、すぐにエルナンデスはレギュラークラスの扱いを受けることになるだろう。

これまではまさに独壇場の立場にあったアラバにとっては、自身のポジションに同レベルの実力を備えたライバルが出現することになる。しかしボアテングほど微妙な立場に立たされることはないだろう。むしろ、エルナンデスの加入によって、アラバは今までより十分な休息が取れるようになるかもしれない。あるいは、エルナンデスと共にセンターバックとしてピッチの上で協力体制を組むことになることも考えられる。

これに対してセンターのポジションでは、エルナンデスの移籍はボアテングの退団を示唆しているとも報じられる。現在30歳のボアテングは昨夏にもすでに移籍が噂されており、今ではチーム内でニクラス・ジューレからもその地位を奪われる形になっている。

この先ジューレとエルナンデスがCBコンビとして起用されることが計画されており、そうなればボアテングの出場機会は減ることになるだろう。フンメルスにしても同じことが言える。2人のうちのどちらかがバイエルンのユニフォームを脱ぐことは現実性を帯びてきている。

バンジャマン・パヴァールというポリバレントな世界王者も加わることを考えれば、バイエルンの現陣容は多かれ少なかれ変化を余儀なくされることだろう。

■膝のケガの影響は?

Lucas Hernandez Atletico MadridGetty

エルナンデスのケガは、ハンス=ヴィルヘルム・ミュラー=ヴォールファールト博士を中心とする医師団のスポーツ医学的検査によって、右膝の内側側副靭帯損傷との診断が確定している。それにもかかわらず彼と契約を結んだという事実を考えるだけで、バイエルンがエルナンデスを非常に高く評価していることがよくわかる。

エルナンデスの手術はすでに成功に終わっているが、ミュンヘンの日刊紙『tz』によれば、アトレティコは手術を受けさせずに保存療法でケガの治療にあたる方針であったらしい。だが、バイエルンにとってはそれでは都合が悪かったようだ。あくまでも万全の状況で新シーズン開幕を待ちたかったというのが本音だろう。

バイエルンの主任医師ミュラー=ヴォールファールトは、「経験を頼りに言うならば」エルナンデスは2019-20シーズンのスタート時には復帰できるだろうと話している。

つまり逆に言えば、来季の第1節にエルナンデスが出場できる見込みは決して確実ではないということであり、シーズン前の準備の大部分には参加できないだろうということでもある。新たに指導することになるコバチも「第1節にはコンディションを取り戻しているはず」としながら、「必ずしも、彼が最初のトレーニングに元気に参加できるだろうということではないが」と付け加えるのを忘れなかった。

今回はエルナンデスにとってキャリア最大のケガであるが、これまでも度々経験してきたことだ。昨年12月に1カ月間の離脱、それ以前には3度大腿部の負傷とも戦わなければならなかった。そんな彼にとって「バイエルンでの新たな挑戦」は、彼のこれまでのキャリアの中で最も厳しい挑戦になるにちがいない。

文=Goalドイツ語版

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