“ストックポートのイニエスタ”
このニックネームは、フィル・フォーデンを完璧に言い表している。この17歳が見せるエレガントなプレー、そして技術力の高さは、バルセロナの誇り高きアカデミー”ラ・マシア“以外ではそうそうお目にかかれるものではない。だが、この類まれなタレント性に何年も前から目をつけていたのはマンチェスター・シティだった。
フォーデンは、10年以上前からコーチ陣、そして対戦相手のDFから注目を集めていた。わずか6歳でシティのトレーニングに誘われると、8歳になるとすぐさまに契約のオファーを受けた。これは、フットボールクラブがサインできる最年少の年齢だ。
その後、彼は年上で彼より体の大きな選手たちを相手に堂々としたプレーを披露。そのスキルの高さと聡明さは、まさにシティのアカデミーが誇る輝く宝石そのものだった。
バルセロナが輩出した偉大なるアンドレス・イニエスタのように、フォーデンもまた狭い間をすり抜けるドリブルと、チームメイトに決定的なパスを通すための細かなコントロール技術とビジョンを兼ね備えている。おそらく、イニエスタとの違いはよりゴールに目を向けているという点だろう。ゴールを狙えるエリアであれば、素早い動き出しで得点を狙う。
Getty
彼には、シティで成功するための大きなチャンスが訪れている。ジョゼップ・グアルディオラの存在だ。現在指揮を執り、クラブに史上最高のシーズンをもたらしているペップは、フォーデンの才能に心酔している。
2016年夏のことだ。ペップがマンチェスターにやって来たとき、彼はこの若き選手のタレント性を発見するといたく気に入った。カタルーニャ人指揮官は友人とのディナーのときですら、フォーデンのことを熱弁したという。
このシーズン、グアルディオラはチャンピオンズリーグのセルティック戦で16歳のフォーデンをベンチ入りさせた。ちょうどこの頃、各年代で彼を追っていたTwitterのユーザーから興味深くまた的を射たニックネームを与えられている。
5月に17歳になったフォーデンは、去年の夏までの間にシニアチームからの招集を受けたが、出場することはなかった。
アメリカでおこなわれたシティのプレシーズンツアーを経て、グアルディオラはフォーデンを2017-18シーズンのトップチームに加えることに決めた。フォーデンはこの夏、ヒューストンでの「マンチェスター・ダービー」で印象深いプレーを見せたが、ロサンゼルスでのレアル・マドリー戦ではあまり存在感を示せなかった。
17歳という年齢ならこれくらいの浮き沈みは普通のことだ。世界最高の選手たちと共にトレーニングを積み、グアルディオラのゲームプランに入るという成長のためのまたとないチャンスが、フォーデンにはまだ十分に与えられている。
「彼以上の指揮官はいないよ」
フォーデンはインタビューでこう語った。「彼は僕を信じてくれているんだ。とても嬉しいよ。毎日彼のもとで学べるなんて特別なことだからね」
正確には「ほぼ毎日」だろう。10月に彼はU-17ワールドカップのためシティを離れてインドに向かった。グアルディオラは、カラバオ・カップのウォルヴァーハンプトン戦でトップチームデビューを検討していたという。だが、イングランド代表が予選を突破したことで、シティの指揮官はイングランド代表にとどまることを認めた。
10月28日、グアルディオラが3-2で勝利したウェスト・ブロムウィッチ戦後のインタビューを受けている頃、フォーデンはU-17W杯決勝スペイン戦で2ゴールを奪っていた。
この決勝で「ヤング・ライオンズ」は0-2とリードされたが、フォーデンのゴールで逆転。結局5ゴールをたたき込んだ。この活躍で、彼は大会のベストプレーヤーに輝きゴールデンボールを受賞。これが『Goal』の「NxGn」の5位入賞の決め手となった。
シティでは中盤でプレーするフォーデンだが、この大会では主に右サイドでプレー。遜色ないパフォーマンスを披露していた。この日の午後、ザ・ホーソンズ（ウェストブロムのホームスタジアム）で、ペップはこれに戸惑いを見せつつ、フォーデンを別のポジションで起用するとジョークを口にした。
「彼と一緒にそのインタビューを観たよ。ウエストブロム戦のあとのやつでしょ？『戻ってきたらそのポジションでプレーさせよう』って言ってたね。笑っちゃったよ」
Goal NxGn
フォーデンは、少し苛立ちながらもジョーク混じりに「ベストポジションは左サイドバックだ」と語った。これは2月のCLシャフタール・ドネツク戦にちなんだ発言だ。この試合で、彼は驚くべきことに左サイドバックとして出場している。
グアルディオラは、彼に新たな責任を抱かせ、そしてより考えさせることによって感性をより研ぎ澄まそうとしたのだろう。ペップがフォーデンを将来的に中盤の選手として考えていることに間違いはない。12月のカラバオ・カップ、レスター戦で足首を負傷していなければ、今シーズンもっと出番があったことだろう。
それでも、すべてにおいて彼が成長している兆候が見られる。3月におこなわれたバーゼル戦、ペップは多くの選手に失望する中、フォーデンに対しては良い印象を抱いていた。
「彼はよかったね。おそらく彼とレロイ（サネ）だけがアグレッシブな姿勢を見せ、何かをしようと試みていたね」
敗れたこの試合後、ペップはこう話した。「ボールを失ったあとのことは問題ではない。ただパスを出しているだけ、そのあと得点できるフィーリングは全くなかった」
フォーデンはこの夜、CLのノックアウトステージでプレーした最年少イングランド人となった。そして、単に才能豊かな若者というわけではなく、優れた気質を持ったプレーヤーであることも示した。
多くの点でイニエスタとの共通項を持ち、ゴールという点では上回りさえするフォーデン。だが、トップチームの一員としていま彼に必要なことは、他の特質があると示すことだろう。1つの点で突き抜ければ、トップレベルで自分の適性を見つけることが出来るはずだ。
今のところ、彼には明るい未来が待っている。マンチェスター・シティは、真のタレントを手にしているのだ。
文=サム・リー／Sam Lee
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