2018-12-03-cerezo-yoon©J.LEAGUE

楽しいサッカーよりも勝つサッカー。尹晶煥監督がC大阪に植え付けたもの

■ハードワーク、セットプレーからの得点、5バックでの逃げ切り

木本恭生のヘディングシュートがクロスバーに当たり、こぼれたボールに反応した清武弘嗣が決勝弾を叩き込んだ瞬間、ピッチ上の全員がベンチに駆け寄り、尹晶煥監督とともに喜びを爆発させた。

2017年、JリーグYBCルヴァンカップと天皇杯の2冠獲得。2018年、1次ラウンドで敗退したAFCチャンピオンズリーグ(ACL)、勝てなかった夏場、富士ゼロックス・スーパーカップ以外のタイトルを獲れなかった苦しみ…。さまざまな出来事が指揮官の脳裏を駆け巡ったことだろう。

「今季前半戦はケガ人も出る中、耐えて勝ち点を取れた。後半戦はもっといい成績を残せると考えていたが、中断期間以降、勝てなくなり、チームが少し沈んだようになった。それでもずっと上位にいたのは間違いない」

以下に続く

尹監督が述懐した通り、2018年のセレッソ大阪は浮き沈みの激しい1年を送った。納得のいかないシーズンのラスト。12月1日のリーグ戦最終節・横浜FM戦を山村和也と清武の得点で2-1と勝ち切ったことは、チーム全体にとって前向きなものになっただろう。

この日のC大阪はは杉本健勇と山村の2トップを前線に配する4-4-2でスタートした。対する横浜FMはJ1残留が決まっておらず、立ち上がりから飛ばしてきた。序盤は押し込まれる時間が続いたが、徐々にアウェイチームがペースを握っていく。19分には杉本がゴール前でフリーになる決定機を迎え、21分には清武のスルーパスに反応した水沼宏太がGK飯倉大樹と1対1になるなど、得点のムードも色濃くなってきた。前半のシュート数はC大阪の11本に対し、横浜FMは6本。この数字を見ても内容的に上回っていたのがよく分かる。

しかし、0-0で折り返した後半立ち上がり早々、C大阪は守備の穴を突かれて天野純に1点を奪われる。11月24日の前節・柏レイソル戦では失点後にズルズルと崩れて0-3で大敗を喫したが、この日は違った。集中力を切らすことなく前へ向かう選手たち。それが失点から6分後の山村の同点弾と、61分の清武の逆転ゴールにつながる。

山村の1点目は仲川輝人に松田陸がハイプレスをかけ、水沼が奪ったところからのショートカウンターだった。清武の2点目は得意のリスタートから。これはまさに尹監督体制のセレッソが重要視してきた形だ。指揮官のラストマッチでこの2つの形から得点を奪えたことは、チームが少なからず進化した証左だと言えるだろう。

追いかける相手が、久保建英やウーゴ・ヴィエイラといった攻撃のカードを切ってきた後は、山村を最終ラインに下げて5バックに変更。強固な守備で横浜FMの攻めをはね返した。

■「僕は尹さんには感謝しかない」(山口)

2018-12-03-cerezo-yoon©J.LEAGUE

C大阪はこの手堅い守りがあったから、昨季2冠を達成できた。今季はその采配が的中せず、指揮官も苦悩した時期が長かったが、最後の最後で原点回帰を果たしたのだ。

「一番大事なのは、楽しいサッカーよりも勝つサッカーをしなければいけないということ」

尹監督は試合後にあらためて強調したが、その哲学がクラブに植え付けられたことは、大きなポイントだった。ラストの時間帯に猛攻を受けながらも耐えて勝利を収めることができたのも、それを選手たちが実践したからだ。J1・7位という結果はACL出場権を手にした昨季の3位には及ばなかったものの、この今季最終戦の内容は新体制に移行する来季にもつながってくるに違いない。

「僕は尹さんには感謝しかない。セレッソの中で一番信頼してくれて、キャプテンも任せてくれた」と山口蛍が言えば、杉本も「尹さんはずっと僕のことを信じて使ってくれた。ケンカも言い合いもしたし、ぶつかり合いも多かったけど、そういうところから信頼関係ができてくる。僕がステップアップする過程において、たくさんのいい指導者と出会ったけど、尹さんはもちろんその1人」と、絶対的な1トップへと飛躍させてくれた恩師に敬意を表した。

彼らを筆頭に、松田や木本、山村、福満隆貴といった面々がこの2年間で大きな成長を遂げた。ハードワークや走力を重視し、選手に厳しい要求を続けた尹監督がもたらしたものはやはり大きかったのだ。

「僕らは尹さんにベースの部分を教えてもらっただけ。僕ら選手がやり続けることが一番大事」と指揮官の哲学を熟知する水沼は神妙な面持ちで語ったが、この2年間の積み上げをどう生かしていくかが何よりも重要だ。最後尾で横浜FMの強烈なシュートを防ぎ続けた守護神のキム・ジンヒョンも「この最終戦みたいな試合を1年間ずっとやり続けられれば、セレッソは本当に強いチームになれる。残念ながら監督は離れますけど、選手たちはもっと自覚を持ってやらないといけない」と自戒を込めて口にした。そういうメンタリティを個々が持ち、そしてチーム全体に深く刻み付けることが、常勝軍団へと上り詰めるための絶対条件と言っていい。

主力の移籍話も浮上していて、新シーズンのチーム構成がどうなるか不透明な部分もある。しかしまずはこの2年間をしっかりと分析し、足りない部分を補強していくことが肝要だ。今季に関して言えば、39得点38失点という数字に象徴されるように、明らかに得点力が不足していた。昨季22ゴールの杉本が5点にとどまったのが大きかったが、1人の傑出した“点取屋”に依存しないチーム作りを進めていくことも重要だ。若い世代をどう組み込んでいくかも残された課題だろう。

C大阪は資金力や環境を含めてまだまだ発展できるポテンシャルを秘めたクラブ。その利点を最大限生かして、さらなる強固な集団を作っていってほしいものだ。

文=元川悦子

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