Roberto Firmino Liverpool 2019-20Getty Images

ロベルト・フィルミーノ:スアレスの幻影を消し去ったリヴァプール最高の選手

■サポーターの誇り

「リヴァプールファンが今日歌っていたチャントは、今まで聞いたことが無かったよ」ターフ・ムーア(バーンリーのホームスタジアム)からの帰り道、あるバーンリーサポーターが話していた。バーンリーはこの日、ヨーロッパ王者に0-3と完敗した。これはバーンリーがプレミアリーグで喫した最悪の大敗のひとつだ。最後の大敗は、昨年のボクシングデー(12月26日)のエヴァートン戦(1-5)まで遡る必要がある。

彼らが歩く通りから少し離れたところでは、2つのリヴァプールサポーターのグループが合流していた。「やあ、ボールはボビーに渡すべきよな、彼なら得点してくれる」挨拶も相槌もなく、ただ腕をあげて喜び合う。そこにはビールとアウェー戦での勝利だけがあった。あいさつ代わりに交わされるこの歌、これこそがバーンリーサポーターがこの日アウェーエンドから聞いたものだった。

それは不快なものではなく、ただただずっと続いていた。それはどこか、彼自身に似ている気がする。

以下に続く

■「彼無しでは勝てっこない」

Roberto Firmino Andrew Robertson Man City Liverpool 10042018 Champions League QFPAUL ELLIS/AFP/Getty

ロベルト・フィルミーノは、プレミアリーグで50得点を決めた最初のブラジル人選手となった。記録達成には4年が掛かっていることは、決して突出した選手ではないことを示している。

ルイス・スアレスを失った1年前、チームは彼なしで何をすべきか全くわからずにいた。彼らはスアレスありきのチームでタイトル獲得まであと一歩まで迫り、彼が去ったことで道を見失った。時の監督ブレンダン・ロジャースが、タイトルへの挑戦後に「感謝すべきは私ではない、彼にしてくれ」と言っていたなら、もっとうまくやれていたかもしれない。

ウルグアイ人ストライカーは、クラブ史に名を刻む偉大な選手としてリヴァプールの伝説となっている。だがアヤックスから加入して以降、彼はクラブに何らのタイトルももたらしておらず、常にビッグクラブへの通過点にいるとの印象を身に纏っていた。

ユルゲン・クロップが4年の間にクラブで成し遂げたことは、その見方を転換させた。彼はスポーツディレクターのマイケル・エドワードとともに、既存の選手にいくつか新たな選手を加えてワールドクラスのスカッドを作り出し、リヴァプールを通過点でなく目的地となるクラブへと変えたのだ。

モハメド・サラーとサディオ・マネは、クロップが熱望した選手たちで、フィルジル・ファン・ダイクやアリソンも同様に彼のシステムに完璧にマッチする。

そんな中で、フィルミーノはリヴァプール加入後にクロップが恋い焦がれる選手へと成長した一人だ。リヴァプールはイングランドサッカー界で2番目に優れたチームとなり、欧州王者となった。フィルミーノは、その中央のピースとしてチームに完璧にはまった。

「高い運動量、テクニック、ゴール、それにオールラウンドなプレー。彼のような選手は見たことないよ」と語るのは、チームメイトのアンドリュー・ロバートソンだ。「周りはきっと、より優れたストライカーがいるって言うだろう。でも、僕にとって彼が成す事こそがチームにはとても大事なものなんだ。彼無しでは勝てっこない。ボビー(フィルミーノの愛称)はワールドクラスだよ」

前線の3枚では、サラーとマネはわかりやすいスーパースターだ。昨シーズン、両者がプレミアリーグで得点王に輝いたことからもわかるだろう。

一方でフィルミーノは、少し陰に隠れがちである。だが、彼もまた素晴らしい選手だ。10番の選手ではないが、ボールを扱う術に長けている。またMFではないにも関わらず、センターサークル付近でボールを運ぶことができる。生粋の点取り屋でもないが、多くのチャンスをモノにしてきた。それはプレミアリーグ通算50ゴールという結果が証明している。

「本当に何でもできるんだ。それこそがボビーの素晴らしいところさ」ロバートソンは絶賛する。「全てのことができるんだ。ボビーはチームにおける最初のディフェンダーでもある。ああいった動きができる選手はそう多くない。彼は相手DFにプレッシャーをかけて、時間を与えないようにする。さらに中盤まで下がってきてボールをチェイスしてくれるんだ」

「守備面でも重要な存在だよ。しかも前線ではゴールを決め、アシストもする。僕らにとって、彼は必要だというのがわかるだろう」

■「世界最高はボビー・フィルミーノ」

Roberto Firmino Liverpool 2019-20Getty Images

バーンリーは土曜日の試合(8月31日、第3節)で伝統的な4-4-2で試合を始めた。相手チームにとってフィルミーノのような選手は厄介だ。4-4-2の問題点は、ボールを持つMFが、ライン間に下がって自由に動く相手選手をチェックするためのスペースがないこと。フィルミーノはそこを突いて混乱を引き起こすことができる。

我々は典型的な9番の選手に慣れ親しんでいる。ゴールに近づくためだけにパスを出す。点取り屋で、チャンスを生み出すべく背後に走り込む。そしてしばしば独善的。それこそが9番のあるべき姿だと。

こういった9番の選手が「自分のためにプレーする」と言うのであれば、フィルミーノはまったく違う存在だと言える。彼はオールラウンドなフォワードとしては世界でも最高レベルにある。彼がその能力に自信を持っているからこそ、サラーはポジションである右サイドから離れて自由にプレーすることができる。彼は相手センターバックに、そのまま行くか、パスするかの決断を迫る。そして生まれた隙間を見つけ出して侵入する。それは一度聴いたら耳から離れない曲が、脳内に侵入していくかのごとく。

バーンリー戦で、フィルミーノは1ゴール1アシストを記録した。どちらも今シーズン2つ目となる。1つはマネへのアシストで、ベン・ミーのミスを突いてボールを奪い、パートナーに完璧なラストパスを送った。そしてフィルミーノ自身が決めたゴールもまた、中盤でボールを奪ってバーンリーを崩壊させたものだった。このときも、彼がサラーにつなげたパスからゴールを生み出した。

サラーは狙ってアシストを量産しているわけではない。多くの場合、ボールがドリブルから離れてしまうなど、彼自身で得点できない状況からなかば仕方なく生まれる。こうした利己的な側面は、彼が常にゴールを目指してプレーしていることを意味するが、それは同時に、マネを筆頭とする前線の味方の忍耐力を試すことにもなる。試合序盤、エリア隅でマネが絶好の得点チャンスだったにもかかわらず、サラーはパスを出さなかった。この後、マネはベンチで激しく動揺していた。

フィルミーノには、こうした問題は生じない。彼はシンプルに、パートナーのために走り、ボールを蹴る。彼は何をすべきかわかっており、その通り行動に移す。1秒の間に、サラーのためにプレーしようと試み、次の瞬間にはペナルティボックスに侵入し、ボールをゴールに蹴り込む。そしてホイッスルが鳴る、それだけだ。

50ゴールを決めた同じ年、彼はチャンピオンズリーグ優勝を果たした。そしてまた同じ年に、コパ・アメリカで大陸王者にも輝いた。これらを成し遂げるのは簡単なことではない。

粗っぽく言えば、彼はリヴァプールのフォワードとしてスアレス以上の存在であり、ブラジル代表ストライカーとしてネイマールより優れている。彼らのような選手が注目を浴びる傍らで、フィルミーノは多くを語らずに彼の仕事を遂行する。

チャントは「世界最高はボビー・フィルミーノ」と歌われる。大げさではなく、心から称えているのだ。

文=ピーター・スタウントン/Peter Staunton

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