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「サッカーも詳しすぎ」 東大卒の最強知識モンスター・伊沢拓司が愛するスパーズの魅力と課題を説く/インタビュー後編

高校生時代に『全国高等学校クイズ選手権』で開成高校を初優勝に導き、個人として史上初となる選手権2連覇を成し遂げた伊沢氏。TV番組『東大王』で一躍有名人となった同氏は現在、クイズプレーヤーとしてだけでなく、自身のメディア『QuizKnock』を立ち上げ、YouTuberとしても活動するなど、多くのファンを楽しませている。

インタビューの前編では伊沢氏とサッカーとの出会いや好きになった経緯を聞いた。後編では、愛するクラブであるトッテナムについて存分に語ってもらう。“知識モンスター”である伊沢氏が見るトッテナムの現状は――。

インタビュー=音堂泰博(Goal)

以下に続く

インタビュー前編:東大卒の最強知識王、伊沢拓司はなぜトッテナムを好きになったのか?

■知性を感じるのはアルデルヴァイレルト

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――ここからは、より詳しくトッテナムのことをうかがいます。まず、サッカーを見るうえで独自の観戦法はありますか?

基本的にスパーズ(トッテナム)の試合は90分フルで見ています。マウリシオ・ポチェッティーノ監督は相手に合わせて戦術を変えることが多いので、むしろ「対戦相手がどのような戦術でくるのか」という見方が多いですね。

個人的に好きなのは、アンカーやボランチの選手のボールのさばき方。プレッシングの練度が高いチームが多く、中盤で時間を与えられない中、ワンタッチでボールをさばいたり、マーカーをはずしながら持ち運べる選手は好きですね。移籍してしまいましたがスパーズにいたムサ・デンベレや、シティに加入したロドリの顔出しの仕方などは見ていてワクワクします。

――チーム戦術が前提としてある中で、個人の力でいかに局面を打開するかですね。

スパーズに関しては、前線の左右がポジションを変えたり、2トップにしたりと戦い方を柔軟に変えます。個々の判断力、という点ではポチェッティーノ監督の下で高いレベルにきていると思います。移籍しましたが、ファビアン・デルフもグアルディオラ監督の下で「偽サイドバック」的な動きや、左サイドバックでスタートしながらも中盤の底に入ってビルドアップに変化をもたらすことができるようになったり、監督の力の大きさを感じますね。昔はスパーズ戦では実況・解説がなかったりしましたが、今はほとんど解説の方が入っているので、戦術のことも非常に勉強させていただいています。

――スパーズの中で特に好きな選手、インテリジェンスを感じさせる選手は?

一番好きだったのはムサ・デンベレです。推進力があり、相手をいなしてボールを運べる。もちろんフィジカルを活かした守備も強烈でした。今季はプレースタイルが少し近いタンギ・エンドンベレを獲得しましたね。彼もプレースタイル的に好みの選手ですし、期待しています。

インテリジェンスを感じさせるのは、トビー・アルデルヴァイレルトです。前線へのフィード力が非常に高い選手です。キーラン・トリッピアーがいた昨季までのスパーズは、左サイドでソン・フンミンらの突破力を活かしつつ、右サイドではトリッピアーのクロスが武器になっていました。そのキーマンとして、高精度のフィードでビルドアップもできるアルデルヴァイレルトが機能してきました。視野が広くて、守備でも足を出すタイミングが絶妙。簡単にPKを与えないですし、センターバックの選手として判断能力が高いですよね。

ヴィルヒル・ファン・ダイクが注目されていますが、アルデルヴァイレルトも彼と同じく、センターバックとして必要なあらゆる能力を備えている現代的なDFですし、それを早い段階でプレミアリーグという舞台で発揮していた選手だと思います。

――昨シーズンのスパーズは、クラブ史上初のチャンピオンズリーグ(CL)決勝に到達しましたね。

まさか決勝まで行くとは思っていませんでした(笑)。たぶん、日本にいるスパーズファンのほとんどがそう思っていたのではないでしょうか。「我々は強いんだ!」という感想と、「こんなところまできてしまっていいのだろうか…」という感想、両方抱きました(笑)。

でも、対戦したビッグクラブを見ても、地力で「絶対無理」と感じさせるチームは1つもなかった。それぐらいチーム力をつけていると思います。正直、決勝のリヴァプール戦は「難しい」という戦前の予想は世間と同じでしたが、それ以上に「トッテナム」という名前が広く報道されることは嬉しかったです。

「ビッグ6」といっても、やはり知名度は他と比べて劣りますからね。他のビッグクラブと比べるとファン人口も雲泥の差…。ただ、CL決勝はサポクラの方たちとの観戦会に参加させていただきましたが、スパーズファンも200人くらいいて、みんなチャントを歌えるし、熱い同志たちがたくさんいて感動しました。「今、トッテナムも面白いぞ」と、もっと発信して人気を上げたいですね。

――スパーズは第4節を終えた時点でプレミアリーグでは1勝2分け1敗です。マン・C、アーセナルとのアウェー戦はいずれも2-2でした。序盤戦の印象は?

昨年は違いましたが、序盤戦で躓くのはいつものことなので(笑)。すでに「ビッグ6」と2度、いずれもアウェーで対戦しました。昨季は「ビッグ6」相手のアウェー戦で1勝4敗でしたし、今季の2引き分けという成績、そして内容面も悲観するものではないと思っています。

――現在のトッテナムの課題はどのように見ていますか?

ビッグマッチに比べて、格下相手の試合でのインテンシティが低いことですね。開幕節のアストン・ヴィラ戦は3-1で勝利しましたが、後半までは全然崩すことができませんでした。昨季までは「左サイドで仕掛けつつ、そこから中央、右サイドとつないで、トリッピアーがクロス。エリクセンらがセカンドボールを拾って二次攻撃」という定番の形がありましたが、トリッピアーが移籍した今季はそれがない。カイル・ウォーカー=ピータースは守備で頑張っていますが、トリッピアーがいない分、攻撃のオプションは減っている。

その点で期待しているのはジオヴァニ・ロ・チェルソやムサ・シソコです。新戦力のロ・チェルソは攻撃に変化をつけることができますし、ムサ・シソコに関してはもともと推進力の高い選手ですが、今は守備への負担が大きい。彼がよりうまく攻撃に絡むことができるようにチームを構築できれば良いですね。

――右サイドバックのポジションは懸念ですね。

結局、補強しませんでしたからね。序盤戦はフアン・フォイス、ウォーカー=ピータースがケガをして、アーセナル戦ではダビンソン・サンチェスを右サイドバックとして起用しました。ポチェッティーノ監督は積極的にコンバートするタイプですが、それにしても…。冬の補強に期待したいです(笑)。

■伊沢氏が語るCLの魅力、展望

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――昨季にトッテナムが躍進したCLもいよいよ開幕しますね。伊沢さんから見て、この大会の魅力はどのようなところでしょうか。

あるリーグを追っているファンならば、普段見ないチーム、選手、そして異なるスタイルの相手を見ることができます。いろんなサッカーを見ることができるというのは良いですよね。もちろん、多くのメガクラブが出場しますし、経験値の高い選手ばかり。チームとしては、最低でも6試合できるので、とても意味があると思います。クラブとしては、放映権収入もとても魅力。いろんな国の選手たちが、誰もが欲しがるタイトルを獲得するために鎬を削る。見ている側としても最高です。

――スパーズはグループステージでバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、オリンピアコス(ギリシャ)、レッドスター・ベオグラード(セルビア)と同グループになりました。

ファン目線になりますが、いい組み合わせになりましたね(笑)。昨季はバルサ、インテル、PSVで、一昨年はレアル・マドリー、ドルトムントと同グループでしたから。もちろんCLに出るクラブなので侮れないですが、レッドスターとオリンピコスは比較的、与しやすい相手です。バイエルンも、調子を上げてくるシーズン終盤よりも序盤なら…。バイエルンにも1勝できれば良いですね。

ただ、レッドスターも実は昨季、PSG、リヴァプール、ナポリと同グループで1弱とみられていた中、良い戦いを見せて勝ち点4を獲得していましたから、侮れません。あとは、オリンピアコスが守備を固めてきたときにスパーズとしてはどう崩すか、そこがポイントになるのではないでしょうか。

――スパーズ以外で注目しているチーム、面白くなりそうなグループは?

イタリアのアタランタがとても楽しみです。昨季にセリエAで3位と大躍進し、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の下でチームとしての戦い方も構築されていますよね。マンチェスター・シティ、シャフタール、ディナモ・ザグレブと同居したグループステージでもチャンスはありそうですね。

予測が難しい混戦グループは、チェルシー、バレンシア、アヤックス、リールのグループHですね。ポット1のチェルシーがフランク・ランパード新監督の下で波に乗るのに時間がかかりそうな中、他のクラブも地力がある。アヤックスは昨季ベスト4のチームからマタイス・デ・リフトとフレンキー・デ・ヨングが移籍しましたが、ドニー・ファン・デ・ベークとダヴィド・ネレスという重要な選手が残留した。アヤックスvsバレンシアなんか面白そうですよね。どこが突破するか楽しみです。

――ズバリ、優勝候補筆頭はどこでしょう?

マウリツィオ・サッリ監督が就任したユヴェントスは、CLにかける思いも強いはずですし、楽しみにしています。2チーム分つくれるほどの戦力がありますからね。もちろん、シティとリヴァプールも優勝候補。パリ・サンジェルマンも、アンデル・エレーラ、パブロ・サラビア、イドリサ・ゲイェ、ケイラー・ナバスらを獲って、最後の最後にマウロ・イカルディも引き入れて強化に成功していて、怖い存在ですね。こちらもCLへの思いは強いでしょうし。スパーズは…。頑張ってほしいですけどね(笑)。

――今季のCLで期待していることを教えてください。

CLの面白いところの一つに、「アップセット」があります。「このクラブがベスト16?」というのが出てくれば楽しいですよね。昨年もアヤックスが大躍進して話題を提供した。でも、やっぱり勝ち上がってくるチームには、「いままでメジャーではなかったけど良い選手」がたくさんいるものです。そういうニュースター的な選手が出てくるのも楽しみです。

また、個人的にはリーグ間の争いにも注目しています。スパーズが所属するプレミアリーグ勢は昨季に復権を印象付けましたが、それを継続してほしいですね。シティとリヴァプールは言わずもがなトップクラスで、その中でチェルシーも勝ち上がってほしいです。

――CLは日本時間の早朝開催ですが、学生の方はテストや受験勉強で応援するチームの試合をなかなかライブで視聴できないこともありますよね。伊沢さんから何かアドバイスがあれば教えてください。

今は見逃し配信とかもあるので便利ですよね。どうしてもライブ中継にこだわる人は、逆にCLを利用して、早起きのキッカケにするのもいいと思います。その分だけ試合前はしっかりと睡眠をとりましょう。4時、5時のキックオフであれば、試合終了時間は6時、7時なので、そう考えると悪くないですよ。

僕も今、試合を見た後にそのまま仕事に行ったりすることがよくあります。昨季、CL準々決勝でシティに勝った後、「誰かスパーズのファンがいないかな?」と思って、W杯の日本代表戦後に盛り上がる渋谷の交差点に行ったら、誰もいなくてそのまま仕事行きましたけど…(笑)。

――今後の本業での目標、やりたいことは?

本業の方では今、複数のメディアを運営しています。『QuizKnock』ではYouTubeチャンネルも開設しました。あとはアプリを開発したり、もちろん自社のハンドリングもしっかりとやらなければなりません。

『QuizKnock』のテーマは「楽しいから始まる学び」。何もないところから「楽しい!」という感情は生まれず、最初は必ず、「知る」ところから入ります。「トッテナムというチームがあるんだ、へぇー」というところから「活躍してるね。ちょっと面白そう」となって、「あっ、見ていて楽しい」という流れです。「知る」が入り口にならなければいけないので、僕たちが楽しんでいる様子や面白いクイズを提供させていただくことで、「知る」と「楽しい」の距離を近づけたいですね。

――今後、サッカーとはどのように関わっていきたいですか?

サッカーは僕にとって趣味であり、生活。それをちゃんと楽しみたいですね。僕は自分のTwitterでもスパーズ戦の実況をしていますが、それはやはりスパーズを色々な人に知ってほしいと思っているからなんです。

その思いが仕事にもつながれば最高ですよね。ただ、発信者でもある自分が履き違えないように意識する必要があります。日本におけるトッテナムというクラブはまだ、ニュースバリューを高めなければならない段階だと思っています。例えば今、『QuizKnock』でトッテナム特集をやったところで、多くの人を満足させることはできません。だから僕自身もより知識を蓄えて、トッテナムについて色んなことを話せるようになりたいし、ひいてはプレミアリーグそのものからニュースバリューを高める助けができるようになりたいですね。

――最後に自身とサッカーファンの方へのメッセージをお願いします。

僕はトッテナムのいちファンで、知識もまだまだ足りません。でも、トッテナムについて、より多くの人に知ってほしいという思いがあります。ダニエル・レヴィという超敏腕経営者の下で、地域開発とグローバル化を同時に進めて、経営戦略も面白い。そしてポチェッティーノという非常に脂の乗った、戦術と若手育成に長けた監督がいて、ハリー・ケインら世界最高クラスのセンターフォワードもいる。「実はロシアW杯のイングランド代表にも一番選手を輩出していて…」、みたいな引っかかりポイントがたくさんあるはずなんですけどね(笑)。

やはりサッカーの魅力って、多くの人が一緒にワイワイできたり、議論が止まらないところだったり、人とのコミュニケーションが生まれるところだと思います。応援するクラブが違ったとしてもスポーツバーなどで一緒に盛り上がれるものです。SNS上でも大丈夫です。僕もTwitterで積極的に発信していたりするので、一緒に楽しんでもっとサッカーを盛り上げていきしょう!

▶インタビュー前編:東大卒の最強知識王、伊沢拓司はなぜトッテナムを好きになったのか?

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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