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「アウォーズに出るなんて一生に一回だと思っていました」。王者・川崎Fの中で駆け抜けた山根視来の1年/インタビュー

湘南ベルマーレから今季移籍加入。右サイドバックで定位置をつかむと圧倒的な勢いでシーズンを制したチームの一員として、リーグ戦31試合に出場し4得点を挙げた。2年前には「自分には無縁の話」だと思っていた場所に立った山根。ストイックなまでに勝利にまい進するチームの中で、日々感じていたこと、そして見据える次なる目標を聞いた。(聞き手=林遼平)

■満足しないメンタルを身に着けた

――2020シーズンのベストイレブンを受賞しました。選ばれると思っていましたか?

「いやー狙ってはいましたけど、本当に入るとは思わなかったですね」

――今の率直な思いを教えてください。

「本当にみんなのおかげだと思います。自分の能力以上のものを引き出してもらったチームメイトに本当に感謝しています」

――ベストイレブンに対する思いはあったのでしょうか?

「2018年に湘南ベルマーレでルヴァンカップを優勝した時に、アウォーズに出ました。自分たちの前に優秀選手賞の選手が並んでいて、その後にベストイレブンが発表されたんですけど、自分には無縁の話だと思っていました。ただ、それから2年後、こうやって選ばれたことにかなりびっくりしています」

――そういうところに名前を連ねる嬉しさはありますか?

「もちろんあります。まずアウォーズに出ることが、一生に一回の思い出だと思っていたくらいでしたから。今年もこうやって参加できて、注目を浴びるところに来られた。受賞している歴代の方々はすごい人たちばかりなので、そこに自分が選ばれたということがすごく嬉しいです。それも今日(12月22日)誕生日なんで(笑)」

――誕生日おめでとうございます!

「ありがとうございます!」

――山根選手自身、決意を持って移籍した年だったと思います。どこを評価されての受賞だと思いますか?

「やはり数字です。フロンターレのサイドバックとしてアシストや得点にこだわってやることは、シーズン前に目標として掲げていました。そこの部分を評価していただけたのかなと思います」

――では、どんなところが成長したと感じていますか?

「一つひとつの細かいプレーもそうですし、人と関わるところ、相手を見てプレーするところは、まだまだですけど、来た当初よりはうまくなっている実感はあります」

――川崎Fに来たことでの成長という点では?

「満足しないメンタルですね。やはりどんなに良いプレーをしても試合に勝っても、もっともっとという思いを持つようになったと思います」

■勝ったのに急に反省会が始まる

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――1年を通じて印象に残るプレーや試合があったと思います。その中で山根選手の「三大出来事」を教えてください。

「時間もらっていいですか?(笑)……第3位は『勝った時に喜ばないフロンターレ』」

――その心は?

「本当に全然喜ばないんです。『え? 勝ったんだよ?』みたいな。勝ったのに急に反省会が始まったりして、そういうところは驚きでした」

――それはいつからですか?

「もう最初からです。序盤はもちろん、それこそ再開して最初の試合以降、勝っても(喜ぶというより)ホッとしている感じでした」

――それでは第2位は?

「大勝する試合がすごく多かったことですね。気持ちいいぐらいに多かった。相手にとって(大敗は)屈辱的なことですよね。そんな大勝が多くて、それでいてチームは満足しなかった」

――大勝につながる多くの得点を取れた要因はどこにあると感じていますか?

「いろいろな形でゴールを決められたからでしょうね。出た選手一人ひとりが『結果を残す』という強い気持ちを持っていました。先発はもちろん、途中交代で出てきた選手もそうです。その相乗効果はあったと思います。時間稼ぎといった概念もほぼありませんでした。欲を出して失点するのでは、と思った時もありましたが、そういう失点もまったくなくて。シーズン通してそこを貫き通したことが、いろんな記録を作れた要因だったと思います」

――山根選手としてもゴールとアシストで結果を残しています。

「シーズンに入った時に10点に絡むと言っていたんですけど、ちょうど4ゴール6アシストで10点に絡むことができました。そこをクリアできたのは良かったと思います。だけど、もっとアシストできたし、もっと得点を取れるシーンがあったと思っています」

――それでは最後に1位を教えてください。

「1位は自分のプレーで。『これ、自分でできるようになったんだ』とビックリしたプレーがあるんです。ホーム広島戦で(田中)碧がゴールを決めた場面です(※)。自分が3人目でボールを受けるために入って行って、最後はリターンを優しく落としてアシストという形でした。以前の自分だったら、碧から落とされた時にそのままドリブルしてシュートを打ちに行っていたと思います。ただ、その時は相手がいるのが見えたので、優しい落としを選択することができた。そのプレーがパッと出た時は、すごくうれしかったです」

――川崎Fで練習を積んできたからこそ出たプレーだと言えますね。

「人に当てて潜って入って行くプレーは、アップのボール回しからもやっています。このチームに来て初めて『そういうプレーがあるんだ』と知れたプレーでもあります。それがああいう場面でとっさに出た。自分的には感慨深いアシストでした」

※9月13日J1第16節・広島戦(5-1)14分(動画では2:02~)のシーン

■練習からみんなとの差を感じていた

――一方で、自分の中で葛藤や悩みみたいなものはあったのでしょうか?

「日々そうですよ。いいプレーをしようがいいゴール決めようが、普段の練習からみんなとの差を感じながらプレーしていました。毎日何か一つ必ず落ち込んで帰る、というか。その連続でしたし、今もそうです。『本当、オレうまくなったな』と勘違いすることは、今シーズン本当に一日もなかったです」

――これだけ圧倒的な強さを誇っていると、少し勘違いしてもおかしくない気がします。

「でも、味方の要求に応えられてない場面があったりするとすぐに思います。映像を見返すと、『そこに出せれば』『そのタイミングを逃さなければ』というシーンがやはり多い。僕は自分のプレーにすごく注目して見返しているので、客観的に見るとまだまだだなと毎日思っています」

――課題と感じている部分を教えてください。

「質のところに尽きると思います。川崎が他のチームと決定的に違うのは質のところ。それを自分も川崎の基準までしっかり持ってこないといけないとは思っています」

――逆に、自分の強みでさらに伸ばしていきたい部分はありますか?

「自分のベースはハードワークすることやボール奪いに行くこと、切り替えの速さです。そこはここにいても自分の強みにはなっていると思います。でも、それ以外のことすべて川崎にいても自分の強みと言えるぐらいにしたいです」

――最後になりますが、来季に向けての自分への期待を教えてください。

「今年、川崎に来てできるようになったこともありますが、逆にまだまだだなと思うことも多い。そういう課題を一つひとつクリアして、うまくて走れて戦える選手になりたいと思います」

――あと一つ、やはり日本代表は見据えていますか?

「そうですね。まずは選ばれたい。サッカー選手をやっている以上、やはり目指さなければいけない場所だと思うので、頑張りたいです」

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