20220523_U19Japan1(C)Akihiko Kawabata

異色選出のU-19日本代表。多重国籍のバルセロナDF高橋センダゴルタ仁胡ら招集に見るJFAの戦略

 フランスで開催される第48回モーリスレベロトーナメントに臨むU-19日本代表メンバーが23日に発表された。海外育ちの選手も含まれるなど馴染みのない選考には、日本サッカー協会(JFA)としての戦略が示されている。

■海外組が3名選出

 5月末からフランスで開催されるモーリスレベロトーナメント。トゥーロン国際大会の旧称のほうで知られる大会だが、現在は「トゥーロン」で開催されなくなっており、今回から日本語の大会呼称を変更することになった(現在も英語圏では「Toulon Tournament」の通称は一般的ではある)。

 その大会に、2003年以降に生まれた選手たちで構成されるU-19日本代表が参加する。来年のU-20ワールドカップを目指すチームであり、日本風に言えば「高卒1年目」の選手たちが軸となる。ただ、今回のチームについて、冨樫剛一監督はかねてより「皆さんが驚くようなメンバー構成になると思う」と話していた。

以下に続く

 23日に発表されたメンバーリストには、Jリーグや日本のユースチームでプレーする選手に加え、3人の「欧州組」の選手が名を連ねた。ブラックバーンのDF前田ハドー慈英、バルセロナの高橋センダゴルタ仁胡、そしてヴァッカー・インスブルックでプレーするFW二田理央である。

 3名のうち、二田は日本で生まれ育った選手で、サガン鳥栖U-18に在籍している最中、欧州の舞台へチャレンジすることを選んだ、ちょっと特殊なキャリアの持ち主だ。年代別日本代表にも名を連ねた経験を持ち、高校3年生でトップデビューを果たしてプロ契約を結ぶと同時に期限付き移籍の形で渡欧している。冨樫監督が「向こうで数字を残している」と語ったように、結果を出したことで改めての招集となった。

■異なるルーツの選手はまだいる

20220523_TogashiScreen Shot

 一方、英国とスペインでプレーする二人については少し事情が異なり、海外育ちの多重国籍選手となる。かねてより反町康治技術委員長は、「海外でプレーする日本国籍を有する選手の発掘」を一つのプロジェクトとして推進しており、その過程で「男女合わせて50人ほど」がリストアップされていると語ってきた。今回はそうした中から改めて映像で冨樫監督が確認し、また本人の「日本代表入り」の意思を個々に確認しながら招集の判断を下した形となった。

「(多重国籍選手の発掘は)戦略的に行っていますし、日本だけでなく海外のほとんどの代表チームがそういうことを行っていると思っています。今回選んだ2名だけでなく、もっとたくさんのルーツを持つ選手、他のカテゴリにも実はたくさんいます」(冨樫監督)

 実際、反町委員長が以前に招集の可能性を示唆していた選手の中には今回の招集を見送られた選手もいる。そもそも通常の代表選考において、日本代表は専ら「選ぶ側」になるが、多重国籍の場合は選手側にも「複数の代表から選ぶ権利」が発生するのだから簡単ではない。欧州ではそうした選手の取り合いも日常茶飯事なのだが、日本も欧州に拠点を設けて国際部門を稼働させており、そうした選手を発掘していく、また交渉することは将来戦略の一つとしてポイントになっていきそうだ。

 冨樫監督は「指導者の側も問われる部分が大きくなる」と語っているとおり、これから欧州育ちの選手が増えるようなら、それをまとめる監督、コーチにも対応力が求められる。これは余談だが、レアル・ソシエダで1年間の指導経験を持つ指揮官は、今回の招集に向けて「スペイン語の勉強をやり直している」と密かに意気込んでいた。しかし高橋とオンラインで話してみると「関西弁でしゃべってきた」と肩透かしを食らったそうである。

■出場時間重視で高校生も抜擢

20220523_Kumata(C)Hiroto Taniyama

 また欧州組を含めて「出場機会」が重視された選考でもあった。先日国内で行われた候補合宿では、Jクラブで出場機会のない選手たちの少なくない割合が低パフォーマンスを見せてしまっており、その多くが選考漏れとなった。逆にJ3ながら主力としてフル稼働するFW横山歩夢が高パフォーマンスを見せて今回の代表では「10番」も託されることに。この選考はあくまで過程ではあるものの、指揮官からの「出場機会を掴んでから代表に来い」というメッセージも感じられるラインナップとなっている。

 またそうした点からコンスタントに試合出場の機会がある高校生の抜擢もある。先日ルヴァンカップでトップデビューを果たし、高円宮杯プレミアリーグEASTで得点ランクトップに立つFC東京U-18のFW熊田直紀、同リーグで首位を走る川崎フロンターレU-18で守備の要として活躍する193cmの超大型DF高井幸大が大会メンバーに名を連ねた。

 日本国内で育ってきた選手たちと欧州で揉まれてきた選手たちを融合させて挑む、モーリスレベロトーナメント。欧州、アフリカ、南米と多彩な強豪が集まる大会であることに加え、この年代としては約2年ぶりの海外遠征ということもあり、「自分たちにとってはすべてがチャレンジ出来る大会」となるだろう。

取材・文=川端暁彦

広告