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アルビレックス新潟MF伊藤涼太郎を形成したパスサッカーとの縁。カタールW杯から受けた刺激、海外への思い/インタビュー

 アルビレックス新潟のトップ下で輝きを放ち、パスサッカーをけん引する伊藤涼太郎。すでに明治安田生命J1リーグに驚きをもたらしているアタッカーは、明確な結果を貪欲に求め続けている。【取材日:4月26日/聞き手=上村迪助(GOAL編集部)/取材協力=アシックス】

■「得点しない選手は怖くない」

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――まずはチームの現在についてお聞きしたいと思います。ここまでチームとしてJ1での手応えは、どのように感じていらっしゃいますでしょうか?
 手応えも感じていますが、やはりレベルが高いなということもすごく感じます。まだ数字的には60%ぐらいしかできていないのかなと思います。

――昨シーズンまでのJ2もタフな環境ではあると思いますが、それと比較してJ1のどの部分のレベルが高いと感じていますか?
 まずやはり強度のところ。あとは仕留めてくる質、ボールをとる球際の強さ、そこが一番違うと思います。

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――とはいえ、新潟はJ2で貫いてきたパスサッカーをJ1の舞台でも披露しています。崩しを図る姿に多くのJリーグファンが驚いているかと思いますが、これだけやれるということは想定していましたか?
 はい。予想はしていました。でも、まだまだ足りないとも感じています。

――ある意味で、カテゴリが上がっても主導権を握りにいくという選択は、かなりの勇気がいることだったかと思います。松橋力蔵監督の特徴的な指導や、中心選手として伊藤選手が要求されていることがありましたらお教えください。
 やはりトップ下のポジションなので、ゴールに関わるというところはもちろんですが、ビルドアップに関わるところも多く求められます。ゴール前に顔を出すだけではなく、後ろからのビルドアップにもしっかりと参加しながらゴール前まで向かっていく、ということを求められています。

――一方、0-2で敗れた鹿島アントラーズとの第9節では、今までのように崩し切るのに苦労していた印象でした。相手の底力が見える困難な戦いとなりましたが、そういった試合に勝っていくために何が必要だと考えていますか?
 やはり回すことが目的になりがちなサッカーをしてしまいました。目的はゴールなので、自分たちがポゼッションしてボールを回すことはあくまでも手段です。やはりゴールに向かっていくというところと、もっともっと相手GKやディフェンスラインの選手にダメージを与えられるような攻撃をしていかないといけない、とここ数試合で感じています。

――個人の質問に移らせていただきまして。伊藤選手自身は高卒で浦和レッズに入られてから水戸ホーリーホック、大分トリニータへの期限付き移籍を経験しました。そこから新潟に完全移籍し、2022年にJ2優勝と昇格を果たしましたが、キャリアの中の決断は現在にどう影響していますか?
 浦和に所属しながら大分と水戸に期限付き移籍をしましたが、決してその時間は無駄ではなかったと思います。どっちかと言えば、新潟に来るまでの6年間は本当に悔しい思い出の方が多く、なかなか自分が思い描いていたプロサッカー人生を送れていませんでした。でも、それがあったからこそ今はこうやってJ1で結果を残せていると思いますし、その時間は無駄じゃなかった、と本当に言えます。それだけ充実していた日々を送れていたのかな、と思っています。

――2・3月度の明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVPに輝き、その活躍は今季5得点2アシスト(※第9節終了時点/取材時)という数字にも表れています。プレー面で変えたことはありますか?
 去年よりもさらにシュート練習の量を増やしました。シュートのバリエーションを増やすというより、同じシュートをずっと打っていますね。ミドルシュートをずっと練習しています。

――そういう練習量を増やすに当たって、お手本にしている人物などはいらっしゃいますか?
 お手本というより、僕はトップ下でやっていて、やはり得点しない選手は怖くないなというのは色々な選手を見ていて思います。海外やW杯などで活躍している選手は、得点するので。サッカーはゴールをとるスポーツですし、いくら上手いプレーをしてもゴールをとらないと結果には繋がらないので、より数字にこだわっていくようにはしています。

――得点以外の部分で、課題だと感じて取り組んでいることはありますでしょうか?
 毎試合活躍できるように、やはり個人としてはプレーの波をもっともっと無くしたいです。点はとれないにしろ、毎試合ビックチャンスを一回は作れるような選手になりたいです。こうやって今取り上げられていますが、これを続けるということが一番大事だと思います。1試合、2試合だけではなく、年間を通してもっともっと取り上げられるような活躍をしたいなと思っています。

――現時点(※第9節終了時点/取材時)で、今季J1でのチャンスクリエイト数が平均3.7回と、リーグ1位の数字です。それでもご自身では足りないと感じますか?
 まだまだ足りないですし、やはりプレー1つにしても『今の絶対決められたな』とか、『このパスを通していればアシストが付いたのにな』というシーンがいくつかあります。そういうところをもっと無くしていきたいと思っています。

■憧れの選手はロナウジーニョ

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――過去を振り返るような話題に移らせていただきます。まず、サッカーを始められたきっかけを覚えていたらお教えください?
 保育所に通っていた時に色々と遊び道具がある中で、ずっとボールを蹴っていたと親から言われました。それでサッカーを始めました。

――ご家族やご友人がサッカーをやられていたということもなかったのでしょうか?
 まったくないですね。本当にボールを蹴るのが好きだったと言われていました。

――例えば好きなチームなどができるなど、そこから明確にサッカーにのめり込んでいった思い出はありますでしょうか?
 まずチームというよりも、その時にロナウジーニョ選手(現在は引退)がすごく好きでした。参考にしていたというか、1日に1回は絶対に見ていた選手でした。プレー集を数え切れないぐらい見ましたよ。本当にすごく好きな選手なので、意識しています。

――では、エラシコなどロナウジーニョ氏のテクニックを真似することもありましたか?
 そうですね。真似をしたり、ブラジル人の選手の足さばきには結構注目したりして見ています。

――続けて、経歴を見させていただきますと、U-15年代をセレッソ大阪の下部組織で過ごし、そこから作陽高校に進学しました。高校サッカーに進んだ経緯と、育成年代で特に印象を受けた指導者の方がいらっしゃいましたらお教えください。
 中学生の時にセレッソ大阪の下部組織にいて、そこでユースに上がれないとはっきりと言われました。その時に、本当にプロになるには(地元の)大阪の高校に行くよりも、やはり親元を離れてまったく知らないところに飛び込んだ方が、人としても成長できると思ったので、親元を離れて岡山県の高校を選びました。指導者の方はセレッソ大阪の時、僕が中学2年生の時に教えてもらった金晃正コーチ(現C大阪U-15監督)に、フットボールの本質だったり、フットボールの楽しさ、パスサッカーだったりを教えてもらいました。僕の今のプレースタイルはあの人のおかげかな、と思っています。

――そういった経歴が、パスサッカーを展開する今の新潟での活躍に繋がっている印象を強く受けました。
 そうですね。かなり繋がっています。パスサッカーのポジショニング1つもそうですし、そういったことを本当に細かく教えてくれたコーチです。

――そのサッカー少年時代、結構スパイク選びも一大イベントだったかと思いますが、当時はどのようなスパイクを選んでいましたか?
 とりあえず高いスパイクを履いていました。何が良いのか全然分からなかったので、『高いスパイク履いておけばかっこいい! 』みたいな、そういう子どもでした。

――それはご両親にねだっていたのでしょうか?
 そうですね。親はかなり困っていましたね。

――では、当時はフィット感や履き心地、スパイクの特徴などはあまり気にしていませんでしたか?
 その時はあまり意識したことはありませんでした。

――現在はアシックスの『DS LIGHT X-FLY 5』を着用していますが、どういった理由で選んだのでしょうか?
 ただ単純に履きやすいです。今まではやりませんでしたが、アシックスのスパイクは新品で、ぶっつけ本番で履くこともあります。ですけど、それでも大丈夫なぐらいフィット感がすごいです。

――ご自身にとって良い表現かは分かりませんが、伊藤選手は“天才”と評されることもあります。感覚も重要なプレースタイルだと思いますが、『DS LIGHT X-FLY 5』はそういった部分にも秀でているのでしょうか?
 本当に素足でボールを触っているような感覚というか、それぐらい足にフィットしています。本当にボールタッチがしやすいというのが、今履いているスパイクの特長だと思います。

――デザインはいかがでしょうか?
 スタイリッシュで、本当にシンプルな感じがすごく好きです。でもやっぱり一番(気に入っているところ)は履きやすさですね。

――やはり、履きやすさが一番のこだわりポイントということですね。
 そうですね。『DS LIGHT X-FLY 5』を履いていますが、以前は『DS LIGHT X-FLY 4』を何回か試していました。それ(『DS LIGHT X-FLY 4』)よりもさらに踵のフィット感がすごくて、本当に素足に近いぐらいのフィット感です。もう最高の相棒です。

■目標は二桁得点&アシスト

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――再び話題を移しまして、今後の話についてお聞きしたいと思います。例えば海外移籍を考えているのかなど、今後の長期的なキャリアプランについて思うことをお教えください。
 今もそうですけど、小さい時から海外への意識はすごく高いです。

――実際の移籍は別として、特に好みのリーグはありますか?
 スペインリーグが好みです。

――それはやはりパスサッカーが魅力ということでしょうか?
 はい。

――マンチェスター・シティなども最高峰のパスサッカーを展開していますが、それでもやはりラ・リーガの方が魅力を感じるのでしょうか?
(マンチェスター・Cは)パスサッカーのチームですが、(強さの一端を担うのが)ちょっと身体能力というか。スペインの方がパスサッカーだったり、戦術だったり、僕としては見ていてより楽しいサッカーなので憧れています。

――昨年もカタール・ワールドカップ(W杯)で大きな盛り上がりを見せましたが、日本代表へはどのような思いを抱いていますでしょうか?
 日本代表には当然入りたいですし、本当に去年のW杯は僕と同年代の選手が点を取ったり、活躍したり、本当に刺激になった大会でした。本当に色々な意味で刺激になったので、僕も『次の大会は』という思いは強いです。でも、やっぱりまずは今いるチームで活躍することを大前提に置いて、そこで結果を出せれば自ずと日本代表は後からついてくるものだと思っています。

――今シーズンのチーム、個人としての目標をお教えください。
 個人としては二桁ゴール、二桁アシストを目標にしています。チームとしてはタイトルを獲るというところを目標にしています。

――では、最後にファン・サポーターの方々へのメッセージをお願いします。
 いつも熱い声援をありがとうございます。これからもっともっと個人としてもチームとしても上に行くには、皆さんの応援が必要です。ぜひもっともっと熱い応援をよろしくお願いします!

――ありがとうございました。
 ありがとうございました。

Profile

■MF 13 伊藤 涼太郎(いとう・りょうたろう)
1998年2月6日生まれ、25歳。175cm/69kg。大阪府出身。右利き。AVANTI KANSAI FC-C大阪U15-作陽高-浦和-水戸(期限付き)-大分(期限付き)-浦和-水戸(期限付き)を経て2022年に新潟へ完全移籍。2022シーズン、加入初年度の新潟でJ2制覇&J1昇格の原動力に。2023シーズンも2・3月度のJ1月間MVPに輝いている。J1通算23試合出場6得点、J2通算102試合出場22得点。(5月9日時点)

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