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20歳の非凡。パリ五輪世代・U-21日本代表MF荒木遼太郎が進化し続ける理由

U-23ドバイカップに参加するU-21日本代表は23日、大会初戦・U-23クロアチア戦で1-0の勝利を収めた。小田裕太郎の決勝点をアシストしたのは荒木遼太郎。鹿島アントラーズで試合経験を重ねる20歳の若武者だった。(取材・文=川端暁彦)

■均衡を崩し、空気も変える

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 「パスが出て来てビックリしました。『イニエスタかな?』と思った」

 ドバイカップU-23、クロアチアとの初戦で殊勲の決勝点を流し込んだFW小田裕太郎(ヴィッセル神戸)はそう言って、アシストのパスに最大級の賛辞を贈った。

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 大男がズラリと並んでスペースを消すディフェンスを敷く相手に対し、パスの贈り主であるMF荒木遼太郎が選択したのは、浮き球のボール。相手DFを完全に出し抜いたこのアシストが、均衡してしまっていた試合を熱く動かした。

 荒木がピッチに立ったのは73分のこと。すでに後半も半ばを過ぎて、選手たちからは焦りの色も見え隠れしていた。ただ、荒木自身は至って冷静だった。

「外からずっと試合を観ることができていたので、自分のしたいプレー、やるべきことをしっかり整理した上で試合に入ることができた」

 個人で打開しようという意識を持つ選手がピッチに多くいる状況だったことも踏まえ、「『自分で』というよりは、裕太郎とか松村優太とか足の速い選手がいたので、そこを活かしながら、ボールを動かして、相手も動かしていくことをまず意識していた」とも振り返る。

 アシストの場面については、パスにメッセージを込めたと振り返る。

「裕太郎が走っているのは見えていたんですけど、そこに合わせたというよりも、『ここに走り込んでこい』という感覚で出した」

 このスペースを突けば点が取れる。その感覚を瞬時に共有した二人の連係も見事だが、そこにワンタッチで浮き球のパスを落とす荒木の技術と冷静さはスペシャルなもの。小田が「イニエスタかな?」と驚いたのも無理はない。

 単に決勝アシストをしたというだけではない。単調になっていた攻撃に変化を付け、焦る気持ちが生まれていたピッチの雰囲気をも変えてみせた。

 そこは「外から試合を観ていて、何かしらのリズムなりテンポなりを変えていく必要があるなと感じていた」という言葉どおり。その立ち居振る舞いは、J1リーグで、しかも鹿島という常にプレッシャーにさらされるクラブで結果を出してきただけに、精神的余裕も感じさせるものだった。

■「このままだと全然通用しない」

20220324-kashima-araki©J.LEAGUE/Getty Images

 その要因の一つは、より上のレベルを観てきたからというところもあるのだろう。今年1月には日本代表候補合宿にも参加。DF西尾隆矢が「自分もJ1で試合に出ているのでやれると思っていたんですけど、こんなに差があるのかと思い知らされた」と語ったように、パリ五輪世代から参加した選手たちに強烈なインプレッションを与える場となった。

 荒木はその経験について、「ボールを奪ったあとの前につける1本目のパスだったり、ゴール前の勝負が決まるところの1本のパスの正確さが違っていた。そのパスで勝負が決まるか決まらないか、際どいところの正確なパスにレベルの高さを感じた」と話しつつ、こうも語っている。

「何度か通用していると感じたこともあるんですけど、やっぱり世界で見たときに自分のプレーはどうなのか。もしも海外に行ったとき、『このままだと全然通用しないな』と。プレースピードの差も感じますし、まだまだ自分に足りないものがたくさんあるなって感じました」

 ただ、別に何か折れたとかではなく、いつもどおり冷静に感じたモノを吐露しつつ、しっかり前を見据えているだけでもある。

「A代表に行ってみて、強度の高さやプレーの質の高さは学ぶものが多かったですし、それを基準にチームでも練習してきた。そこの基準は常に目標にしないといけないと思っている」

 今大会に向けては、「ゴールやアシスト。数字に残る結果を出したい」と語っていた日本の若きファンタジスタは、久しぶりの国際試合を経て「もっともっとこういう経験をしていきたい」と、さらなる意欲も手にした様子だった。

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